美しき異形達
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第十三話 向日葵の紹介その十三
「これって」
「まさか、本当に」
「ああ、菫ちゃんもな」
「力の持ち主なの?」
「かもな」
こう裕香に言う薊だった。
「これは」
「若しこれが力なら」
何かとだ、裕香は戸惑いながら言った。
「一体どんな力なの?」
「蜃気楼みたいだけれどな」
薊はぼやける中で出たり消えたりする菫を見つつ裕香に答えた。
「どうやら」
「蜃気楼って」
「幻か?」
今度はこう言った薊だった。
「これってよ」
「幻なの」
「ああ、そうかもな」
「そこの女もだ」
馬の怪人がここで少女達に言ってきた。
「我等の標的だ」
「へえ、やっぱりな」
「そうだ、だからだ」
「菫ちゃんも殺すっていうんだな」
「そのつもりで来た」
馬の怪人は薊にはっきりと答えた。
「我等はな」
「相手のうち一人は貴様か」
ムカデの怪人は自分の前に立っている向日葵を見て述べた。
「そうだな」
「私でいいわよね」
「我等の使命は貴様等を消すことだ」
「じゃあまずはっていうのね」
「貴様を消す」
ムカデの怪人はその向日葵にはっきりと答えた。
「そうさせてもらう」
「わかったわ、じゃあまずは私が闘って」
「何かわからないけれど」
それでもだとだ、菫は曇った顔で言ったのだった。
「この状況って」
「実はここに来たのはこうしたことを話したかったんだよ」
「この化けもの達のこと?」
「そう、それに今の菫ちゃんもな」
「何かしら、本当に」
自分のことがわからないといった声だった、菫の今の声は。
「急に私の周りが」
「幻ね」
ここで菖蒲が菫に言った。
「貴女の力は」
「力!?」
「話すのは後よ」
とりあえずは、というのだ。
「まずはね」
「ええと、向日葵ちゃんだけだと危ないから」
それならとだ、菫は自分の食事を置いてだった。
そのうえでだ、立ち上がりこう言った。
「向日葵ちゃん、私もね」
「闘ってくれるの?」
「怖いけれど」
怪人達を見てだ、顔を強張らせながらの言葉ではあった。しかし菫は勇気を振り絞ってこう言ったのである。
「向日葵ちゃんが危ないから」
「有り難うね、じゃあ」
「ええ、私はね」
馬の怪人を見ての言葉だった。
「この馬の化けもの相手にするわ」
「怪人っていうのよ、この連中」
向日葵が菫に話す。
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