東方変形葉
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変化と不変の入り乱れ
東方変形葉23話「月満つれば則ち虧く」
前書き
裕海「久しぶり、幽々子。」
幽々子「あら~、ひさしぶりね~。あら、今日は人形は一緒じゃないの?」
裕海「あれ?なんで知ってんの?まだ教えてなかったけど。」
幽々子「紫から聞いたのよ。」
裕海「あの子たちは今留守番してくれいているよ。」
幽々子「あらそうなの~。ところで、月は楽しかった?」
裕海「まあ、それなりに。そういえば月から何を持って帰ったの?」
幽々子「お・さ・け!千年物の古酒なのよ!もう紫たちと飲んじゃったけど。」
裕海「そ、そう・・・。」
妖夢「あ、裕海さん。お久しぶりです、ご無事に戻ってこれたんですね?」
裕海「ああ、妖夢は剣の稽古?大変だね。」
妖「ですが、まだまだ未熟なのでもっと強くならなければなりません。というわけで、これをどうぞ。」
裕海「・・・短刀?」
妖夢「勝負!せいやぁぁっ!」
裕海「うわっ!?あぶなっ!?おっと。」
妖夢「ぬ、さすがですね。まさかこれを防がれるなんて。」
幽々子「あなたの攻撃は少し単純なのよ~。そんな動きじゃ、読みの名手である裕海には勝てないわよ~。」
裕海「名手かどうかは知らんが、まあそういうことだ。複雑に動くか、速く動くかだね。」
妖夢「むむむ、精進します。今から素振りをするので見ていてください。せいやぁぁぁっ!」
紫「ハロー、ひさしぶりねきゃあ!?いったぁぁぁぁ・・・。ゆかりん、痛くて涙が出ちゃう。」
裕海「・・・・・・」
妖夢「・・・・・・」
幽々子「・・・・・・」
紫「・・・何か言いなさいよ!」
「ここには、外の世界の雑貨がそろっているぞ。そう、俺が持ち込んだ雑貨がね。」
・・・もしかして、この人は・・・。
「もしかして、外来人か?」
彼に質問した。
「そうさ。」
彼は答えた。この瞬間、早苗のように外来人という共通点を共感しあえる友を見つけた気がした。
「俺も外来人だ。」
彼は目を丸くした。しかしすぐに真顔に戻り、かけている眼鏡を整える。
「・・・ふん、こんなこともあるものなのだな。何かの縁だ、お茶でも飲んでいかないか?俺は善知鳥響希だ。」
善知鳥なんて珍しい名字だな。
「俺は葉川裕海だ。お言葉に甘えて上がらせてもらうよ。・・・ところでひとつ聞きたいんだけど。」
どうしても気になったことがあったので質問した。
「ん?なんだ?」
「どうやって結界を超えて幻想郷と外の世界を行き来してるの?」
そう、ここにある外の世界の物は、ほとんどが新品だった。しかも量も多い。どうもやってきたときに持ってきたのしては量も質もおかしい。
「ああ、俺の能力さ。」
やはり能力か。
「俺は2つほど能力を持っている。まず一つ目。『障害を越える程度の能力』そしてもう一つが、『五感と六感で分析できる程度の能力』だ。」
なに?二つだって?それはすごい。
「へえ~。とすると結界を超えることができてるのは前者の能力か。」
実は幻想郷に2種類の結界が張られているということはつい2日前に知った。博麗大結界の存在はわかっていたが、深い意味までは知らなかった。なんか紫が、「交渉しましょう。私は幻想郷の全てを教えるから、あなたはその人形の仕組みを教えて頂戴。」と言ってきた。別に人形の仕組みは秘密にするつもりはなかったので、筒に隠さず教えた。そして紫も幻想郷について一から教えてくれた。
なぜ人形の仕組みを教えてほしいのか聞いてみると、「幻想郷の管理人として、幻想郷の全てを知らなければならない。だから、その人形の仕組みを知る必要があったのよ。」ということ。しかし、紫の言い方には何か引っ掛かる。いったいなんだろうか。
「そういうことだ。まあ上がれ、お前の話も聞きたいからな。」
空気を察して人形たちは会話に入りこまなかった。さすが、できる子だ。
「―――まあ、こんな感じかな。」
一応俺の話も終わった。
「ふうん、なるほど。そこの人形たちは君の能力と結界を組み合わせ、それが複雑になっているのか。」
人形たちはびくっとして、俺の後ろに隠れた。
「大丈夫だよ、この人はこわくないから。」
「・・・ほんとう?」
「ほんと~?」
「そう、本当。・・・まあ、そういうことなんだよ。」
ふん、と息を漏らした。
「・・・ところで、ここって人来るの?」
「ん?ああ。まあ、毎日2,3人ぐらい。」
「・・・じゃあきっとこういうのに目がない妖怪と、人間にここを紹介するよ。」
妖怪とは、河童のこと。にとりに言えば全速力でやってくるだろう。で、人間とはだれか。そう、早苗だ。
「妖怪?まあ、襲わないのなら別に構わないが。」
「大丈夫、河童は人間を盟友だとおもっているらしいから。」
「ふうん?ところで時間は大丈夫か?」
あ、寄るところがあるんだった。
「じゃあ、俺はこの辺で。また来るよ。」
「ああ。・・・月満つれば則ち虧く、か。しかし、あいつの未来には衰えがみえない。いや、感じられない。どの感覚でも。あいつは本当に人間なのか?・・・まあ、人間にしろ、妖怪にしろ、知ったことじゃないがな。」
紅魔館。いつもはいきなり館内からスキマで行くのだが、今日は門から入ることにした。ちなみに、人形たちには先に帰った。結構眠そうだったから。人形たちにも人間通りの感情、意識、思考を与えたので当然眠くなる。
「く~か~」
・・・ここの門番はいつみても寝ている。ちょっと起こしてやろうかな?
「『恐怖の眼』」
スキマを開き、そこからビームが出てくる。相手が寝ているので、本来隙間から見えるであろう恐ろしい眼は見えないだろうけど。
「か~、すっ」
えっ!?よけた!?寝てるのに!?ひょいっとスキルカードの攻撃をかわした!?
「もう、また寝てるのね。あら、裕海じゃない。どうしたのかしら?ああ、この門番はただでは倒せないわよ?」
また、突然スッと現れた。マジック?
「こうしないと、ね?」
いつの間にか門番の頭にナイフが刺さっている。え?残像どころか音も聞こえなかったぞ?
「いったいなにしたの?」
聞いてみると、なにやら笑みをこぼしてこういった。
「力ずくで理解してみなさい!私の能力に気が付いたらあなたの勝ちよ!」
幻幽 「ジャック・ザ・ルドビレ」
ああ、久しぶりだなこの流れ。大き目の赤い弾幕が放たれた・・・と思ったら、目の前に大量のナイフがあった。
一瞬で配置したのだろう。しかし、どんな能力だ?おっと、スペカ使わないと危ないな。
異変「異次元空間の大量発生」
大量のスキマを展開し、高速弾を撃ちまくり、ナイフをはじく。が、どんなにはじいても一瞬でナイフを配置される。どうなってんの?・・・候補が2つあるが、どっちだろうか。
「ふふふ、まだ気が付いていないようね。さあ、いくわよ!」
幻世 「ザ・ワールド」
小さめの赤い弾幕が放たれ、・・・一瞬でナイフを配置される。
・・・咲夜の位置も変わっている。候補として2つほど上がっていた。だが、一つには少し無理がある。だとしたらあれしかない! あれの能力の返し技を、ナイフをかわしながらこっそり作る。・・・よし、できた。
結界「時間の変化 ~spellcard version~」
時間を止め、弾幕を配置する。そして時間は動き出し、あっちこっちに飛び散る。
「さあ、もうわかったぞ!咲夜の能力は『時間を操る程度の能力』だな!?」
そういうと、咲夜はふふっと微笑んだ。
「ご名答。あなたの勝ちよ。」
そういうと同時に、弾幕の嵐となっていた紅魔館の前にはもう弾幕は消され、無くなった。
「ふふっ、さすがね。お嬢様が一目置くわけだわ。」
そのとき俺は、忘れかけていた本来の目的を思い出した。
「ああ!そうそう、レミリアに少し用事があるんだった。そろそろ中に入っていいか?」
「ええ。どうぞこちらへ。」
そういって俺たちはゆっくりと歩き始めた。
いつみても、ここの屋敷はどこもかしこも紅い。目が痛くなりそうだな。
「お嬢様のお部屋はこの先です。では、わたしは紅茶を入れてきますね。」
「ああ、ありがと」
10歩ほど歩くと、少し大きめの扉があった。
「レミリア、いる~?」
「・・・・・・」
ノックしても反応がない。ぐっと力を込めて押してもびくともしない。だったら・・・。
「『威力の変化~鬼~』」
軽く小突くと、ばんっと扉が勢いよく開いた。すると、
「・・・あ。」
寝ていた。布団の上で。・・・薄着で。可愛らしい何かが目に飛び込んできた。そう、何かが。
「・・・っさて、トイレでも行ってくるかな?あ~やれやれ。」
「まちなさい、葉川裕海。」
可愛らしい少し震えた声が響いた。後ろを振り返ってみると、布団でくるまったレミリアがいた。
「み、みみみみみみみみ」
「み?」
「みっ見たわね~!このぉ~っ!」
そういって赤面になりながらレミリアは弾幕を投げつけた。
「ご、ごめんっていてっいてっ」
さすがに至近距離だったため、よけきれずにたくさん当たってしまった。
「く、喰らいなさい!」
神槍「スピア・ザ・グングニル」
「ご、ごめん待ってぐわああああっ!?」
一瞬でスペカを唱えられて反応に遅れたため、見事に喰らってしまい、意識を手放した。
「ふ、ふう。・・・あれ?裕海?お~い・・・」
「いててて・・・。」
あれから1時間後、意識を取り戻し、今ソファーに座っている。喰らったところがまだ痛い。あの紅い槍、痛すぎる。
そしてなぜかレミリアが膝の上に座っていた。
「ねえ、レミリア。なんで俺の膝の上に座ってるの?」
そう質問すると、ほっぺを膨らましながら言った。
「レディのあんな姿を見たお仕置きよ!。」
・・・お仕置き?まあいいか。
「お嬢様、裕海、お茶が入りましたよ。」
咲夜が紅茶を持ってきてくれた。そこでようやくここへ来た本来の目的を思い出した。
「ああ、そういえば聞きたいことがあるのだけど。」
「なにかしら。」
レミリアが俺の体に背中と翼をつけた。
「レミリアって、過去にどんな異変を起こしたの?」
そういうと、自信満々な声が飛んできた。
「ふふふ、よく聞いてくれた。心して聞くがよい。えっとね、まずは紅い霧を―――」
このあと、話は30分続いたため省略する。
「へ~、なるほど。そうなんだ。」
メモに書いていると、レミリアが不思議そうに聞いてきた。
「でもどうして、私が起こした異変なんて聞いたのかしら?」
「ああ、それはね。実はこの前紫に幻想郷のことを教えてもらったんだよ。だけど過去の異変の内容はめんどくさがって、『異変を起こした人たちに聞いてきなさい。紅霧異変はレミリア、春雪異変は幽々子、「三日置きの百鬼夜行」異変は萃香、少し前の永夜異変は八意永琳が主犯よ。』とだけ教えてくれたから、その主犯に聞いて回ろうと思ってね。」
「ふ~ん?幻想郷のことを教えるなんて、あいつは何を企んでるのかしら。短い寿命の人間に幻想郷の管理人が務まるわけないのに。」
・・・そうか、そういうことか。紫は管理人としての知識を教えてくれたのか。だとすると、俺が管理人の候補として挙げられたに違いない。レミリアは知らないだろうが、俺には寿命がないらしい。そりゃ死ぬことはあるが、寿命では死なない“不老”の存在なのだ。そのことを確か紫に話した覚えがある。
そのことを今レミリアに話すべき、か?・・・いや、もう少し先でもいいか。
「裕海、そろそろ日が落ちるわよ?」
咲夜が教えてくれた。
「ああ、じゃあそろそろ帰るかな。というわけで、レミリア。膝から降りて。」
「・・・・・・いや。」
なぜ拒否。スキマで脱出してもいいが、それだとおもしろくないからこうしよう。
「降りないと~・・・えいっ」
「ひゃうっ!?」
横腹をつっついた。吸血鬼でも効くようだ。
「そいっえいっちょいっ」
「ひゃっやぁっわ、わかったわよひゃうっ!」
あ、やっと降りてくれた。あと、そこのメイド長。鼻血出てるから。
「じゃあね、また一週間後。」
スキマの中に入り、自宅へと戻った。
家に帰ると、思ったとおり人形たちが布団の上で寝ていた。と、その時俺の背後に気配を感じた。
「ハロー、差し入れよ~。」
紫だった。
「差し入れ?もう臭いのはいやだぞ?」
おかげでドリアンに埋もれて死ぬ夢を見たわ。
「ふふふ、今日はなんとこれよ!」
紫が取り出したのは、少し大きな箱だった。
「みかんよ!」
・・・みかん。まあ、今の季節ならおかしくはないか。
「外の世界のみかんは美味しいのよ。特にこれが良かったわ。」
この箱に書いてある産地ならそのはずだ。
「じゃ、またね。」
「ああ、またな。」
すぐにスキマの中へ入っていった。それにしても、来週のイベントは紫とも戦うことになるのかな?そんなことを考えながら俺は、人形たちの髪を撫でていた。
続く
後書き
23話です。善知鳥は、うとう と読みます。ふりがなのつけかたがわからないのでこうして書いています。一応言っておきますが、善知鳥響希(うとう ひびき)は森近霖之助のことではありません。
さて、この少年はこの幻想郷でどのような成長を遂げるのでしょうか。
次回より、ついにあのイベントが始まります。お楽しみに!
前回のタイトルの意味は、”未来に何が起こるかは予測しづらいものだ”ということです。つまり、ほとんどの読者の読みが外れたであろう、前回の最後の響希との出会いが関係しています。
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