I want BRAVERY
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36話
36話
気付けばもう12月半ばだ。
タルタロスに関しては14階で止まってしばらく経って以降、一切行っていない。
真田先輩と鍛えていたせいか、レベルと関係なく強くなった気がする。
案外レベルというものは、俺にとっては意味を成さない。
何故なら、綺麗に決まればどんな敵でも一撃、これは多分間違いないからだ。
まぁ、あくまで当たれば、っていうのはあるかもしれないが。
実際ナイフ裁きは大分上手くなったと思う。
ナイフっていうのは刃渡りの長さも関係あるが、俺の場合は超近距離戦だ。
拳で戦う真田先輩のアドバイスは結構ためになっていると思う。
気付けばペルソナを召還しないまま、ズルズルとこんな訓練までしてしまっている。
相変わらず先輩はヤンデレが悪化してきていて、最近は真田先輩にまで嫉妬している感がいなめない。
というよりペルソナ召還がまだ出来ていないのはどうなのだろうか。
結構ヤバいんじゃないか、って思う。
てか出来れば今からでも原作と関わりをなくしたい。
気付けば自分の寮は桐条先輩達と同じ寮に変わっていて、気付けば専用のナイフまで用意してあったのは正直怖い。
———PiPiPiPiPi
いつもの如く、自分の今の状況を整理していた時だった。
突然携帯がなる。
なんとなく嫌な予感がする。
こう、なんというかゾワッとする感じだ。
嫌な予感が拭えないまま、鳴り続ける携帯を取る。
「はい」
『もしもし?彩君?』
———Pi
出たと思ったらすぐに切れた。
こんな時期にイタズラ電話かよ、なんてため息をつきながら思う。
今日はクリスマスイブだ。
学校で桐条先輩に、寮でパーティーをするから、なんて言われたせいで誰も誘ってくれない。
———PiPiPiPiPi
「ん?もしもし?」
何故か、携帯にまた電話が掛かってきた。
『なんで切るの!?』
———Pi
またイタズラか。
正直、こんなに気分が沈んでいる時にイタズラ電話なんてしてきて欲しくない。
長谷川さんは友達とカラオケでパーティーをすると言っていた。
結子はミヤの家で毎年やっているらしく、今年もミヤの親に呼ばれているのだとか。
長谷川さん繋がりで知り合った山岸さんは長谷川さんのパーティーに参加するらしい。
岳羽さんは普通にお友達の家。
伊織と友近は、桐条先輩にそう言われた俺を恨めしげに見ながら、『俺達は女の子と約束があるんだよ!』とか言ってた。
他にも所謂モブキャラとよばれる友達が俺にはいるが、皆一様に俺が桐条先輩に誘われたことを知ってか誰も誘ってくれない。
———PiPiPiPiPi
「なんなんですか?いい加減にしてください」
『それはこっちのセリフ!今部屋の前にいるから』
(・・・ぇ)
ふと扉を振り返る。
そして、もう一度携帯に意識を戻すと、携帯は切れていた。
———コンコン
扉をノックする音が聞こえ・・・ない。
俺には何も聞こえない。
———コンコン
「すいませ〜ん。留守です〜」
———ガチャ
「ちょ、おい」
「彩く〜ん。会いたかったよ〜」
俺に抱きついてくる先輩。
もちろんそこは華麗に避けさせてもらう。
「ぶへっ」
ベットに顔面からツッコム先輩。
「・・・あ、彩君の匂いだぁ。クンクン」
「うぉい!」
先輩の襟を掴んで顔を上げさせる。
「彩君。彩君」
「・・・はぁ、なんなんです?」
「あのね・・・」
その日、俺は人生で最も戦慄を感じた。
まるで両親の死を聞いた、あの時の電話のようだった。
世界の音が消え、まるで世界に自分ひとりだけが取り残された、そんな気分だった。
何故、俺は扉を開けてしまったのか。
(※開けてません)
何故、俺はそれを聞いてしまったのか。
この時ほど後悔した時はない。
今からでも戻れるのなら、俺は・・・
「好き。愛してる」
「好き。愛してる」
いつか、言われるとは思ってた。
というより今まで言ってなかった方が驚きだろう。
「彩君・・・だから、私と」
この先輩とはできればそんなに関わりたくないと思ってた。
何故か?
原作メンバーと関われなくなるから?
他の女の子と接しにくくなるから?
違う。
何かもっと根本的なところで彼女が嫌だった。
多分それは俺でなくてもそう思ったことだろう。
何か感じるのだ。
彼女からは、そう明確な
「結婚して」
「・・・ぇ?結婚?」
「うん。本当はもっとロマンチックなシーンで、彩君から言って欲しかったんだけどね」
「待て待て」
「私・・・待ってるだけの女じゃないんだよ、って彩君にわかって欲しくて!」
「いやいや。意味わかんね」
「元々、私達は夫婦なんでけどね、やっぱりちゃんと籍入れて、形にしておきたくて」
「お帰りはアチラの扉からどうぞ」
なんかおかしいよね?色々と。
付き合う→結婚。
これが正式ルートだろう?
「ガチで言ってるわけ?」
「うん」
「ぇ?普通に嫌なんだけど」
「・・・ぇ?」
「え?」
「え?」
「ナニソレコワイ」
「な、なんで!?」
「それこっちのセリフなんだけど」
「私、こんなにも彩君のこと愛してるのよ!」
「俺は全然愛してないよ?」
「私は愛してるの!」
「でも俺は愛してない」
「どうして!どうして分かってくれないの!?皆、皆!私を遠ざける!」
「だって重いんだもの」
「私が何したっていうの!?どうして私から離れていくの!?」
「だから重いんだって」
「彩君は・・・彩君だけは違うって信じてた」
「俺も流石にこれはないだろうと信じてた」
「信じてたのに!!」
「俺も信じてたよ」
「私が彩君を幸せにするから!」
「いやいや、絶対俺不幸になるって」
「だから私と結婚しよう?ね?私がずっと養ってあげるから」
「全然将来有望なんですけど、俺」
「働かなくたっていいんだよ?私一緒にいればそれでいいんだよ?」
「そんなん男として絶対に嫌だし」
「だから私と結婚しようよ!」
「そもそも話が飛躍しすぎな件」
俺は叫ぶ先輩を尻目に携帯を取り出してイジる。
———カチカチ
1:通りすがりの被害者:20XX/12/24(X) 19:47:43.92 ID:abababeee
ヤンデレに告白されたどうすればいい?
2:名無しさん(神奈川県):20XX/12/24(X) 19:48:34.84 ID:pp22098ss
リア充爆発しろ
「聞いてるの!?」
「結論から言うと、無理」
「どうして!?私と結婚すれば幸せになれるんだよ!?」
「いや、なれないよ」
3:名無しさん(福岡県):20XX/12/24(X) 19:50:34.84 ID:kirrrokirro
拒否って後ろから刺されてシネ
(ありそうで怖えーよ)
俺に迫ってくる先輩をシカトして俺は思考に耽る。
てか誰か助けて。
内心で、初めての戦闘時と同じくらい泣きそうになりながら俺はそう思った。
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