戦姫絶唱シンフォギア/K
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EPISODE4 覚悟
夜の港にあふれかえるノイズ。群がる悪夢の中、赤く輝く複眼に真っ赤な身体、そして腰に表れたベルトを纏う戦士が一人。五代雄樹が変身した赤いクウガがそれらと睨みあいをする背中で、翼にとっては驚愕の一言につきるものがある。
形こそ細部に至るところは違いがあるが、全体的なフォルムは間違うはずがない。1年前失われた友の、あの時散っていったはずのギア。
―――――ガングニール。そのギアが今、目の前で発動し、新たな主の元その力を振るっている。ふたつの驚愕が翼の冷静な思考を乱し視線を釘付けにしてやまない。
『…行くよ、響ちゃん』
「うん!」
二人同時に動き出す。それまでにあった日常はすっかり失われ今あるのは目の前の恐怖を打ち破るための力と心。決意を胸に赤くたぎらせる戦士と歌を響かせ、踊る少女。突然に戸惑いながら、驚きながらも少女は拳を振るっていく。その後ろで、迷いながらも自身で出した答えに恥じぬよう臨まぬ力を行使する心優しき戦士が荒ぶる。繰り出される拳は闇を打ち砕くため、放たれる蹴りは絶望を蹴散らすがごとく災悪を灰と薙ぎ払う。まだ未熟ながらも、精一杯に動きながら。
だが、それでも数は多い。少なからずとも経験のある雄樹とは違い響はまったくの素人。雄樹のフォローをうけつつも、その動きはやはりまだ振り回されるばかり。いくらガングニールの補正があるとはいえこれでは埒が明かない。そこでようやく思考が戻った翼がヘリから跳んで歌を口ずさむ。
戦いの歌を。
「この歌・・・・?」
『翼ちゃん!』
「なにをもたもたしてるんですか。あそこまで言い切ったならもっとしっかりしてください!」
雄樹を叱咤し翼が剣を携え、舞う。まさしく踊るがごとく駆け抜けノイズを灰へと変えるその姿は防人の名を口にするだけあって動きに無駄が一切ない。次々とノイズを倒していく。
「すごい・・・・」
それに感嘆の声をもらす響。戦う翼の姿に驚くわけではなく、その姿に、ただ見入っていた。
「・・・・よし、私も!」
口にする歌により一層力強さが増す。二人の歌を背にしながら、雄樹は体勢を低く構える。右足が急激に熱くなるのを感じながら、その足を思いっきり・・・・突き出す。
迫っていたノイズがその蹴りをうけて吹っ飛び、周囲の同族を巻き込んで連鎖的に灰になっていき、そして・・・・
「ハアァァァァァァァァ!!!!」
「うおオオオオオオオオ!!!!」
二人の攻撃が決まり、事態は終息を迎えた。
♪
五代雄樹は馬鹿だ。それが今回翼が雄樹に対していだいたもの。あれほど戦うなと言ったにも関わらずこれだ。しかも理由が「みんなの笑顔をまもりたい」なんて単純明快なもの。その覚悟は未だ測りかねる部分もあるが、こうも向こう見ずな男だとは思わなかったと翼は思う。
『えっと・・・・』
困ったように頭をかきながら言う。マスクの下ではいつものような苦笑いを浮かべているのだろうか。
「・・・・あなたの想いはわかりました。ですが、完全聖遺物は一度発動すれば何が起こるかわからない未知な部分も多い。いくら貴重な戦力とはいえ、まだ解明しきれていないものを使うのはどうかと」
『うん、俺もそうおもうんだけどさ。やらないで後悔するのは嫌だなって思って・・・・危険かもしれないけど、俺はもう誰かの涙は見たくないんだ。もちろん・・・・翼ちゃんの涙も。奏ちゃんが居なくなっていっぱい悲しいことや辛いことを我慢して頑張ってるの知ってるから余計に、ね』
見透かされたような気がして翼は奥歯を噛む。この男、どこまで見えているのか。
『だから、俺も一緒にがんばるよ。翼ちゃんの抱えてるものを俺も背負うことは無理かもしれないし、翼ちゃんは絶対それはしない子だって知ってる。それでも一緒に悩んだり悲しんだりは出来るから』
サムズアップ。またこれか・・・・そうため息をつく。いくら言ったところでこの男に言葉では勝てそうにない。が、かといってじゃあ力づくでとはやりたくない。諦めて踵を返し、ギアを解除してエージェントたちと一緒に車に乗り込んだ。
『・・・・そういえば、赤になったのはいいけどコレ戻り方一緒なのかな・・・?』
後書き
というわけでマイティフォームお披露目とまだ完全じゃないキックお披露目。
この世界でのクウガは完全聖遺物扱い。歌わなくても意志一つで力を行使できるって時点で若干チートな気がするのは何故だろうか。
ともあれ、ビッキーの活躍が薄い分次回は彼女の出番多くしよう
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