万華鏡
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第七十八話 バレンタインデーその四
「別にな」
「凄く都合がいいわね」
「けれどそうなんだよ」
あくまで力説する弟だった。
「そういうジャンルなんだよ」
「何股もかけてる純愛ね」
「ゲームだからいいんだよ」
「現実だと無理ね」
「そうだろうな、絶対にな」
「そんなことしてるとね」
ここでまたこう言う琴乃だった。
「刺されるかね」
「鉈で、だよな」
「そうなるからね」
だからだというのだ。
「そうならない為にもね」
「実際はか」
「一人にするのよ」
「二股とかはか」
「死ぬ素よ」
「大袈裟じゃないよな」
「本当にそうした話があるから」
恋愛関係のもつれ、特に三角関係のもつれはというのだ。
「そのスクール何とかみたいなことはね」
「そうか、じゃあ気をつけるさ」
「あんたも死にたくないでしょ」
「百歳までゲームしたいよ」
弟は心からこう答えた。
「それこそな」
「そうでしょ、じゃあいいわね」
「ああ、わかったよ」
「リアルの恋愛の対象は一人だけよ」
「そういうことだな」
「そうよ、じゃあいいわね」
こう弟に言ってだ、そしてだった。
琴乃は溶かしたチョコレートを用意してあった型に入れた。そうしてバレンタインのチョコレートを作るのだった。
それが全部済んでからだ、こうも言った。
「これでいいわね」
「もう出来たのかよ」
「後はトッピングよ」
「俺そういうのはいいから」
「トッピングいらないの」
「そのままでいいよ」
チョコレートそのままで、というのだ。
「飾りとかいいから」
「そうなの」
「その方が姉ちゃんだって楽だろ」
「まあそれはね」
「それならいいよ」
「別にこれ位気にしなくてもいいわよ」
気を使ってくれなくとも、というのだ。
「すぐに済むから」
「いいよ、俺チョコレートのありのままの味が好きだから」
「だからなのね」
「ありのままのチョコレートでさ」
それで、というのだ。
「一緒にコーヒーか紅茶飲んでさ」
「お茶菓子にするのね」
「ああ、だからさ」
それでだというのだ。
「別にいいよ」
「そうなのね」
「そういうことでさ」
それでだというのだ。
「俺のチョコはトッピングはいいから」
「わかったわ、一個そういうの作っておくわね」
「それで頼むな」
弟は琴乃にあらためて言った。
「俺のは」
「わかったわ、じゃあ後は冷やして」
そのチョコをというのだ。
「それからね」
「何か手間かかってるんだな」
「それなりにね」
「バレンタインも大変なんだな」
「女の子はね、ただね」
「ただ?何だよ」
「大変な分ね」
それだけに、というのだ。
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