戦国異伝
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第百六十七話 信玄動くその八
「どういった戦をするか見てやろう」
「武辺者とのことですな」
内藤が家康についてこう言った。
「それもかなりの」
「桶狭間でも先陣であったな」
まだ今川にいた時だ、義元も彼の武を見込んで任じた。
「そして金ヶ崎でも姉川でもな」
「一向一揆との戦でも」
「あの者は確かに強い」
信玄も認めた、家康の武は。
「三河の者も強い」
「ですな、間違いなく」
「しかしじゃ。わしとわしの家臣、軍勢に勝てるか」
信玄はここで己も出した。
「それが問題じゃ」
「我等にですか」
「それを見るとしよう」
そのだ、家康との戦でだというのだ。
「存分にな」
「では今は」
「遠江にこのまま入りじゃ」
そしてというのだ。
「東海道を進むぞ」
「そこから外れませぬな」
「うむ、浜松まではな」
ここでこう言ったのだった。
「それからはな」
「どうされますか」
「それはな」
ここでだ、信玄は二十四将に山本の策を述べた、すると誰もが驚きそして笑顔になりだ。そのうえで信玄に対して言うのだった。
「それは面白いですな」
「いや、そのやり方があったとは」
「まさに神機軍師」
「そうでありますな」
こう言うのだった。
「この戦面白いものになりますな」
「実に」
「攻め方は一つではないのう」
震源もだ、楽しげな笑顔で山本の顔を見て言う。
「それは」
「はい、確かに」
「そうですな」
「ではな、勘助よ」
「はい」
信玄は山本にも応える、そして山本も主の言葉に頷く。
「今回は我等が啄木鳥の虫になるがな」
「虫は虫でもですな」
「面白い戦を見せることになるな」
「その通りですな」
「徳川も織田も破り上洛じゃ」
都まで至るというのだ。
「そして織田信長、あの者を捕らえれば」
「その時はどうされますか」
「あの者はわしの臣とする」
殺すことは考えていなかった、全く。
「織田家の家臣達もな」
「そして殿の天下を治める柱にしますか」
「あの者、殺すには惜しい」
その才を見ての言葉だ、しかもだった。
信玄は信長についてだ、こうも言うのだった。
「実はじゃ」
「以前よりですな」
「うむ、桶狭間の前から噂は聞いておったが」
信長が今川の大軍を破った戦だ、信長をうつけと呼ぶ者はこの時から天下にはいなくなった。だが震源はそれよりも前からだったのだ。
「出来るとは思っておった」
「しかしその出来は」
「わしが思った以上だった」
「それが織田信長ですな」
「尾張の蛟龍、しかし只の蛟ではない」
「龍になりましたか」
「越後の龍と同じくな」
上杉謙信、彼の終生の宿敵であるあの男の様にというのだ。
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