道を外した陰陽師
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第二十六話
「あー・・・ま、こんなもんでいいか」
校庭を全体的にならして、危険物がないかのチェック・・・といった作業を式神にやらせながら教室でボーっとしていたが、終わったようなので回収する。
余談だが、教室の人間はやけに歓迎ムードだった。どうにも、俺が先ほどやったあれは反感を買っていないらしい。さすがは零厘だな。
「じゃあ次、土御門さん」
そして、今教室では簡単に自己紹介をすることになっている。
次は殺女の番か。
「えー、初めまして・・・でもないかな?土御門殺女です!課程は陰陽師課、どうぞよろしくお願いします!」
質問はありますか、と聞いた瞬間にこれでもか!という位手が挙がった。
まあ、そうなるよな・・・席組みに直接質問できる機会なんてそうそうないし、殺女はあの性格だ。
おそらく、始業式前の数分間でこのクラスの人間にも溶け込めているのだろう。
内容は・・・席組みの仕事についてとかの機密事項ばかりの内容や、普通に趣味なども。最後に好みのタイプを聞かれた瞬間に真っ赤になって座り込み、終了となった。
あー・・・殺女がああなったら、当分は戻らないな。ちょっと頼みたいことがあったのに・・・
「じゃあ次、寺西」
で、次は俺の番になった。
さて、この空気の中でどう話すか・・・この後のやつで俺の性格は分かるだろうから、最低限のことだけ話せばいいか。
「さっきのあれで知ってるとは思うけど、寺西一輝。名字は後から付けたものだから、名前で呼んでほしい。課程は、卵だけど陰陽師課でやっていく予定だ。・・・質問は?」
まあないだろうな、と思っていたのだが・・・一人、手が挙がった。
「・・・どうぞ?」
「土御門さんのパートナーになったのはどういった経緯からですか?」
うっわー・・・そんな事実はないから話しづらい。どうするか・・・
「・・・・・・俺、後見人が闇口光也なんだよ。その関係で、紹介されたというか、お目付役に任命されたというか・・・」
「ちょ、カズ君お目付役って!」
あ、殺女が復活した。
「間違っちゃいないだろ?」
「それは・・・まあ、うん・・・」
事実、殺女は俺のお目付役としてすぐそばにいることになっている。
その関係を、逆にしただけだ。ま、クラスの中で殺女のキャラは一気に崩れただろうけど。
「他には?」
「なんで覚醒課じゃなくて陰陽師課?」
「・・・さすがに、第十五位なのに覚醒課で習う内容はな」
これについてはかなりの本心だし、真っ当な理由だと言えるだろう。
陰陽師課ですら、俺や殺女からしてみれば習うような内容はないんだけど。
「他には、ある?」
「・・・じゃあ」
聞いてみたら、一人手を挙げている女子がいた。
強気そうなツリ目に栗色の髪をツインテールにしている。はて、どこかで会ったような気が・・・
「・・・・・・あ、」
「アンタ、まさか鬼」
次の瞬間、俺はそいつに向けて札を投げて口をふさいでいた。
うん、今思い出した。それにしても、何でここに・・・あそこからここに通うやつはいないと踏んでたんだけどな。
「・・・失った名前を使うのはタブーだ。あとでちゃんと話す。OK?」
「・・・(コクリ)」
真っ赤な顔でうなずいたのを見て、俺は札を回収した。
あー・・・マジでか。何でこうなるのかねぇ。懐かしいやつに会ったもんだよ、まったく。
「えっと・・・もういいですか?」
「ああ、どうぞ」
着席すると、次は雪姫の番になる。
「雪姫だ。名字は一輝と同じように後付けだから名前の方で呼んでほしい。くれぐれも、殺女のようには呼ばないように」
そして、雪姫に対しても質問の手は挙がった。
「どうして寺・・・一輝君と同じ名字を?」
「後見人が同じでな。手続きが楽なんだそうだ」
ちなみに、俺は光也が遊んでいるだけという案に一票だ。そこまで大きな影響はないにしても、多少は面白いことになってくれないかなー、とかそんな感じに。
「ということは、二人とも後見人は光也室長・・・二人って何者?」
「・・・私は、大した立場じゃないよ。一輝が特殊なだけだ」
「オイコラ、俺を理由にして終わらせるな俺が面倒だろうが」
が、まあそれも事実なので仕方ない。
特殊というか、もはや国家機密だもんなー・・・最近、この考えに至ることがやけに多い気がする。
どうにも、俺自身に対して機密事項が多すぎるよな・・・一つあるだけでも珍しすぎるのに、二つとか・・・と、そのタイミングで仕事用の携帯が振動したので、机の中で開く。
光也からか・・・サブタイトルは、『例の件について』。
『どうも、寺西さん。例の件・・・あなたの能力について、何にも分かりませんでした。
いやはや、まったく。あなたに関わる事はどうしてこうも面白いことが多いのか。
まあ、あの力が呪力も妖力も、それこそ外国関連で考えて気とか魔力とかチャクラとかを使ってない時点で確定していたようなものなんですけど。
それにしても、ここまで何が由来の力なのか分からない力もないです。
元としている力を確認することすらできない。ここまで見事な異常は楽しい限りです。
いやね、そもそも珍しいものなんですけど。保持者が日本に二人しかいませんし。
とまあ、前置きはこれくらいにしておきましょう。
なにはともあれ、あなたのあの力は異常と認められ、晴れて異常能力者です。
いやもうほんと、素晴らしいですよ。
日本で初じゃないですかねぇ、存在自体が国家機密の人間。それも三つもなんて。
鬼道の一族が隠すわけですよ。
そう言えば、妹さんの力も一族が隠していたんでしたっけ?
湖札さんもなのかもしれませんねぇ、異常能力者。
驚かされる兄妹ですよ、お二人とも。
鬼道の生き残りなんて、大変なばかりでもありますけど。それでもまあ、楽しませていただいていますし、寺西さんには助けていただいた面もあります。
その対価としては、安いくらいなのかもしれませんね。
では、今回の件についていくつか決定事項を。
まず最初に、あなたの力については登録もしないでおきます。
変にあなたを探られるようにするのは、好ましくありませんから。
そういうわけですので、本当に必要な時以外は使わないでください。
・・・最後に、一つだけ。
非公式の登録では『形無き者』とさせていただきましたので。
『アンガなきもの』とかけさせていただきました。少しは、ミスリードになってくれるでしょう。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なっげー・・・・・・
いやいや、ここまで長くする必要もないだろ。
要するに、まとめるとこうなるんだろ?
俺の能力が異常能力だと確定した。
俺も晴れて異常能力者に。
とはいえ、これまでになく正体がつかめない。
だからこれまでのものと同様に国家機密に。
名前は、俺が呼んでいたものではないものを非公式に付けました。
これでいいだろ。五行だぞ、五行。
陰陽師的にも縁起がいいじゃないか。
・・・さて、訂正しないといけないな。
二つあるなんて極めて珍しいのに、三つとか。これ、初の事例じゃないだろうな?
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