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道を外した陰陽師

作者:biwanosin
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第十九話

「ふぅん・・・『鬼神ノ会』、ね。そのまんま過ぎて笑えねえな・・・いや、むしろそのまんまだったから、検査を抜けれたのか」
「お、お前・・・何を、」
「うるさい」

 俺はそう言って、偶然見つけた例の団体の構成員の一人の腕を踏みつぶす。
 余計にうるさい悲鳴が上がったが、こいつらに話しかけられるよりはいくらかマシだ。
 はぁ・・・こいつらを見つけるまでに、他にも入団の勧誘をしていたやつらのところを一個一個回って、いくつか屑だったからやむなく潰して、そんな繰り返しでストレスがたまってるんだよ・・・!
 そんな時にこの団体のやつから話しかけられたら、さすがに耐えるのは無理だ。

「く・・・!」
「あ、忘れてた。・・・よっと」

 自殺しようとしているやつを見つけて、スタンガンで動けなくなるまで電流を流し、ついでにお札で呪詛などを払う。

「言っとくが、まだ死なせねえぞ。知ってることを全部、洗いざらい吐いてもらう」
「・・・私たちは、私たちの神のために何だって捨てる」
「命でも、か。まあ、それならそれで問題ないな」
「ええ、特に問題はありませんね」

 そう言いながら現れたのは、光也とその部下何人か。
 一応、こいつらを連れて行ってもらうために電話で呼び出しておいた。なんせ・・・

「んじゃ、こいつらの拷問(・・)は任せたぞ。お前らの十八番だろ?」
「その言い方、あまり好きじゃないんですけどね・・・まあ、確かにそうですけど」

 言うまでもないだろうが、拷問は禁止されている。
 とはいえ、こちら側のお偉いさんは、誰もかれもが拷問のための部下や設備をもち、非合法的に行っている。

「んじゃ、また何か情報が入ったらメールで送ってくれ。俺は『鬼神ノ会』って名前から追ってみる」
「はい、分かりました・・・ああ、その前にここを全体的に調べてください。何があるか分からない以上、出来る限りランクが上の人に任せたほうがいいでしょうから」
「ん、了解」
「・・・はっ」

 と、そこで光也の部下が連れて行こうとしているうちの一人が、急にしゃべりだした。

「調べたければ調べればいい。どうせ、信仰もない貴様らにはあの文字も読めないんだ」
「・・・・・・・」

 とりあえず、俺は無言で、ゆっくりとそいつに歩み寄る。

「あの書物は、私たちの中でも最上のお方々にしか理解できない。その方々でさえ、すべては理解できないものを、お前たち程度で理解できるものか」

 そして、ある程度近くまで来てから武器を全部収めて、話しているやつを捕まえていた光也の部下に目配せし、ひかせる。

「我らが神への信仰もない者どもに、あの文字が読めるはずもない!そして、我らの神々が降臨なされば、貴様ら信仰無き者は一人残らず、」

 そろそろ耐えられなくなって、本気で殴り飛ばした。

「わーわーわーわー、うるさいんだよ。言っとくけどな、あいつらはそんな偉いもんじゃねえよ。もし仮に復活したとしても、何もしないにきまってる」
「お、お前に我らの神について何が、」
「日本で一番、俺が詳しい。・・・ああ、それとな」

 殴り飛ばしたやつに近づいて、胸ぐらをつかんで本気の殺気をぶつける。

「その書物、俺は一文字残らず読めるぞ・・・信仰なんて、欠片もないけどな」

 そこでそいつが気絶したので、光也の部下に投げ渡す。
 そのままそいつらが出て行ったのを見て、俺は何かないか探し始めた。

 とりあえず、部屋を荒らしたい放題荒して・・・途中で来たさっきのやつらの仲間もボコってから探していたものを発見する。
 一件目でも見た祭壇とひたすら名前の書かれた書物。そして、それとは別の書物を発見した。
 その内容を全部読んで・・・握りつぶさずに、一件目とは別の空間にしまう。祭壇とかは、一件目と同じ所に蹴り込んだ。

 その辺りでパトカーのサイレンが聞こえてきて建物の前で止まったので、見つからないように飛んで立ち去る。
そして、そのまま水の上で携帯を取り出し、現状を声に出しながら文章にしてまとめることにした。
 まず、さっき回収したのに書いてあったのは本来一冊では意味のないもの。確か・・・全部で四十冊あって、それとは別で一番重要なものが一冊ある、合計四十一冊で完成するものだ。
 一番重要な一冊はあいつらが持っているはずがないので、回収しなければならないのはあと三十九冊。
 最悪の場合・・・というかほぼ間違いなく、こいつらは日本全国に散らばっているだろう。さすがに、それを全部一人で回収するのは無理ではなくても時間がかかるな。出来るなら、あいつらが対応してこれないくらい迅速に対応したいし・・・ま、仕方ない。
 出来ることなら誰も巻き込まずに一人で回収したかったんだけど、それは諦めるしかないな。
 もう既に、後十分もあれば日付が変わる時間だ。こんなペースでは時間切れになるのは避けられない話だ。
 んで、あいつらは日本全国に広がって活動できるし、フットワークも軽いから・・・うん、これしかないな。
 作戦が決まったので、俺はメモ機能を閉じてから電話帳を開き、光也に作戦を話した。



  ========



「・・・なあ、これはどういう状況なんだ?」
「日本の陰陽師トップ十人が集合した状況」
「ただの一般の家に?」

 まあ、雪姫の疑問はもっともなんだけど・・・おかしいな。
 ここは例の土地に新しく建てた家で、俺は席組みの第三席。つまりは、あいつらと同じ席組みの家なんだけど・・・まあ、仕方ないか。

「それで?メールにあったことは事実なのか?」
「ああ、事実だ。・・・二人は、もう休んでくれ。ここからは、聞かないほうがい」

 雪姫と穂積はかなり不満そうにしていたけど、それでもちゃんと出て行ってくれた。

「とりあえず、今回の件で報酬が必要なら光也に請求してくれ」
「それについては、後から決めることになった」

 どうやら、ここからは白夜が代表して話すようだ。

「それより・・・お前は俺たちに何をしてほしいんだ?」
「九人にしてほしいのは、これの回収だ」

 そう言って、今日回収した書物二冊を見せる。

「他には?」
「特にないな。細かいことはあるけど・・・大本は、俺が一人でたたきつぶす」
「捜索範囲は?」
「前回の情報から考えて、日本全体。・・・とりあえず、『鬼神ノ会』って名前とこの祭壇が目印だな」

 そして、こちらもまた回収した祭壇を見せた。

「そこに必ず、その書物はあるのか?」
「名前が書き連ねられてるこっちのやつはある。もう一冊のほうは、あるかどうか分からないな」
「祭壇の回収をする必要は?」
「ない。ただ、原型が分からないくらいにはぶっ壊してほしい」

 この祭壇を警察が見たら、勘のいいやつは気づくかもしれない。
 だが、今回は出来る限り人に知られないうちに全部片付けてしまいたい。だから、こうして頼んでいるのだ。

「そうだな・・・やることは理解した。それに、その程度(・・・・)のことなら、九人で一日くらいだろうだが、問題はそのあとだ」

 そして、白夜はその先とやらを言った。

「今日の分はお前一人でやった上に光也による隠ぺいが可能な範囲であったから、おそらく大本にも全てはばれてはいない。が、この九人で潰しにかかるというのは、話が別だ」

 ・・・まあ、そうだろうな

「ここにいる九人はお前と違い、全ての情報が公開されている身だ。そんな奴らが全員で潰しにかかってみろ。向こうは焦るでは済まなくなるぞ?」
「そんなことになれば、また大規模な呪術テロを起こすかもしれない、だろ?分かってるよ、そんなことは」

 この宗教団体、何十年も前にうちの一族で潰した時は鬼道の一族が本家、分家全員総動員で動いたせいで本気で焦り、不安定な状態で呪術テロを引き起こし、日本全国を恐怖に陥れた。
 そんな被害が再び起これば、今度こそ抑えきれない可能性が高い、が・・・

「大丈夫だ。各地域のやつらは独断で動くかもしれないけど、統率を取るトップは動けない。そんな状況を作ってある」
「それは絶対だな?」
「ああ、絶対だ。やつらの端末からトップへの連絡先を入手してな。ちょっと面白いものを送ってみた」

 そう、お互いに一切視線を逸らさずに言い合って・・・白夜が先に、軽く笑いながら視線を逸らした。

「いいだろう。そこまで言うのなら、第一席、『降神師』夜刀神白夜は依頼を引き受けよう。八人も、それでいいな?」

 白夜の問いかけに対し、八人は、

「第二席、『犬神使い』犬神慈吾朗、依頼を受諾しよう」
「第四席、『化け狐』稲葉前、依頼を受諾して差し上げましょう」
「第五席、『白澤図』粂神豊、依頼を受けてやろう」
「第六席、『化け猫交じり』匂宮美羽・・・依頼、受けます」
「第七席、『刀使い』九頭原匁、依頼を受諾しよう」
「第八席、『式神使い』星御門鈴女、依頼承った」
「第九席、『金剛力』土御門殺女。もちろんオッケーだよ!」
「第十席、『雷撃』雷剛拳。微力ながら、協力しよう!」

 全員が、各々のやり方で承諾を示した。
 
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