道を外した陰陽師
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第四話
色々あった夏休みも終わり、二学期が始まってからもう二週間がたった。
俺は鬼道だったころに通っていた学校にはもう通えないので、二学期から別の中学に入学した。そこそこに賑やかで、楽しいクラスだったことは幸運だったといえるだろう。
「お。おはよう、一輝」
「おはよう、翔。何やってるんだ?」
「ああ、これか?」
朝、教室に入ったらクラスの男子が何人か集まって一人の机を囲んでいたのでそうたずねた。
「ちょうど良かった。なあ一輝。オマエは誰が一番だと思う?」
「誰って・・・何がだ?アイドルとかは興味ないぞ」
「そっちじゃねえって。席組みの女性の中で、誰が一番好みか、って聞いてんだよ」
話しながら近づいた机には一枚の紙が置いてあり、そこには席組みの女性五人の名前と、正の字でのカウントがしてあった。
見事に全員同数だな・・・
「匁さんだよな?あのクールな感じがいいよな!?」
「いやいや、美羽さんだろ。あのおどおどした感じが・・・」
「ここは鈴女さん一択だって!お姉ちゃんになってほしい!」
「いやいや、殺女さんのあの明るさだろ!」
「前様に踏まれたい!」
「最後のヤツ、発言がアウトだぞ・・・」
はぁ・・・女子は女子で男の方で人気投票やってるし・・・白夜が一番人気か・・・
「で、どうなんだ?一輝は誰に入れるんだ?」
「あー・・・誰にも入れない、ってのはダメなのか?」
「どうして、また?」
「いや、な・・・」
同じ席組みになって直接話したりする関係で投票しにくい、とはいえない。
一応、俺が席組みだってことは国家機密レベルで管理してるみたいだし・・・かなりゆるめだけど。
「まあ、何かと事情があるんだよ。中立票としといてくれ」
「はぁ・・・仕方ない。大竹先生巻き込むか」
大竹先生とは、このクラスの担任の男性教師だ。
生徒からの人気は結構あったりする。ついでに言うと少しMの気質があるから、投票は前にすることになるだろうな。
「でも、なんでこんなことしてるんだ?」
「なんでって・・・忘れたのか?」
忘れた・・・今日、席組み関係で何かあったか・・・?
「さっぱり思い出せん。何かあったか?」
「オマエ、それでも本当に陰陽師の卵なのかよ・・・」
「失礼だな。これでも陰陽師の卵だよ」
「はぁ・・・今日は、新しい席組みの発表がある日だろ!」
「・・・・・・あ!」
すっかり忘れてた。
そうだ・・・今日、テレビで特番が組まれて、新しい席組みが誰になったのか、日本中に知らせる、って言ってたな。すっかり忘れてた。
「ったく・・・俺たち陰陽師を目指す人たちの憧れ。そして、全国民のヒーローである日本のトップ十人の新しい一人が発表されるってのに、何でそれを覚えてないのか・・・」
「ヒーローは言いすぎだろ・・・確か、その特番を見る関係で一限はつぶれたんだっけ?」
「そうだよ!で、新しい人が入る前のランキングと新しい人が入った後のランキングを作るために、こうして作ってたんだよ!!」
何でこんなに遅くなったのかというと、まだ未熟な卵を席組みに入れる関係で反対意見を出してきた人たちを光也が説得するのに時間がかかったからだ。
「おーい。もうそろそろ始まるから、席につけー」
と、そこで担任の大竹先生が入ってきた。
「あ、大竹先生!先生もこのランキング付けに協力してください!」
「稲葉前さんに一票!」
力強く言い放った。いっそ清々しいな。
「じゃあ、これで男子の方で作ってもらったランキングは完成だな。女子の方は出来てるか?」
「はい、出来てます!」
「じゃあ、二つとも黒板に張っておいて」
なるほど、ランキング付けはこの人の提案か。
「じゃあ、全員席に着いたな。もう後数分で始まるから、しっかりと視るように」
そして、特番は始まった。
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「えー、それでは、只今より新しい席組み、その序列から発表したいと思います!」
そう言う司会者の後ろには、カーテンによって仕切られた空間がある。
今までどおりなら、あの先に席組みの人たちが序列どおりに並んでいるはずだ。
「今回は一人新しい人になったとのことで、どんな人が入ったのか。そして、どのお家の方なのか。今からわくわくしますね。ちなみにですが、まだ私も知らされておりません。生放送ですので、知るのは皆さんと同じタイミングに・・・と、あまり長引かせるのも良くないですよね。では、開けちゃってください!」
司会者の声と同時にカーテンが開かれていき・・・そこには、左から三つ目の席だけ空けて、九人が座っていた。
「おや?今までどおりの方々は既にいるようですが・・・新しい人はどうしました?遅刻とかでしょうか?」
「いや、あいつは来ない」
司会者の言葉を、白夜・・・席組み第一席、登録コード『降神師』の夜刀神白夜が遮った。
「こない・・・というのはどういうことでしょうか?」
「そのままの意味じゃよ。これから説明するが、第三席が誰なのか、公表することは出来ん」
そして、白夜の言葉を慈吾朗・・・席組み第二席、登録コード『犬神使い』の犬神慈吾朗が続けた。
「では、説明に入りますわ。今回の第三席はまだ卵の立場であり、陰陽師として一人前とはいえない状態。そんな状態で公表してはいけないという結論になりました」
「卵って・・・それは本当ですか、席組みの皆さん!?」
驚く司会者を気に留める様子もなく、説明を終えて座る前・・・席組み第四席、登録コード『化け狐』の稲葉前。
その横に座っていた豊・・・席組み第五席、登録コード『白澤図』の粂神豊が司会者の説明を求める視線を無視したため、その横にいた少女に助けが求められた。
「えっと・・・その・・・すいません・・・」
「謝らなくていいよ、みゃんみゃん。よく頑張った」
が、いかんせん緊張しているため、何も答えられずに終わる美羽・・・席組み第六席、登録コード『化け猫交じり』の匂宮美羽と、それを慰める殺女・・・席組み第九席、登録コード『金剛力』の土御門殺女。
「そう言うわけだから、今回は一部の情報を公開するだけで勘弁願いたい」
「もちろん、それ以上は絶対にダメ、というラインのギリギリまでは公開する」
「スマンな、みなのもの!」
そして、説得するような口調で話す鈴女・・・席組み第八席、登録コード『式神使い』の星御門鈴女。
きわめて冷静な口調で話す匁・・・席組み第七席、登録コード『刀使い』の九頭原匁。
ガッハッハ!と大声で笑っている拳・・・席組み第十席、登録コード『雷撃』の雷剛拳。
俺以外の席組み全員から拒否されて、司会者は困ったような表情になる。
「いや、ですね・・・私達も今回、新しい席組みがわかる、という体で番組を作っているんですよ・・・何とかなりませんかね?」
「ならん。諦めろ」
「そんな・・・」
が、そんな司会者の懇願を始めて喋った豊がばっさりと斬り捨てる。
「まあまあ、いくつか情報は公開するから」
「そうですか・・・まずは、それからお願いします」
殺女が声をかけると、カメラが殺女を中心にとって、殺女はポケットから取り出した紙を見て、話す。
「まず、性別は男。まだ卵なので名前は公開できません。席は第三席に入ります」
「えっと・・・年齢、などは?」
「機密事項ですね」
そして、殺女は最後にもう一つだけ公開した。
「最後に、登録コードを発表します」
「どんなものでしょう?」
登録コードがその陰陽師の家を特定する材料になるかもしれないと考えたのか、司会者の表情が真剣なものになる。
周りを見てみると俺以外のクラスの連中も真剣な表情だった。
中にはタブレットやらスマホやらを準備し、すぐに検索できるようにしている。
「登録コードは『型破り』。卵でありながら席組みに入ること、席組みでありながらその情報を公開できないことなどから、この登録コードに決まりました」
「えっと・・・つまり、その家をあらわしているものでは・・・」
「ないですよ。奥義を会得していないのに家の名前を使うわけにもいきませんから」
司会者が本格的に困った表情をしているのが面白い。
「で、では・・・最後に一つ」
これ以上引っ張るのは危険だと判断したのか、司会者はしめにかかる。
「その第三席『型破り』さんを一言で表すなら、なんでしょうか?」
そして、九人はその質問に対し・・・
「「「「「「「「「問題児」」」」」」」」」
口をそろえて、そう言いはなった。
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