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久遠の神話

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第百六話 決戦の前にその一

                   久遠の神話
               第百六話  決戦の前に
 加藤にだ、声が話していた。彼は今は彼の家の中にいる。
 家はごく普通のアパートだ、六畳一間でテレビがありちゃぶ台があり布団がある。風呂とトイレもあり扉のところには洗濯機がある。
 その簡素な部屋を見てだ、声は彼に問うた。
「お金はありますね」
「ある、しかしだ」
「生活はですか」
「質素でいい」
 こうだ、加藤は簡潔に声に答えた。
「俺は戦えて綺麗に出来ればな」
「それで、ですか」
「満足だ」
 だからいいというのだ。
「この部屋も毎日掃除しているしな」
「お風呂もですね」
「トイレもだ」
 そちらもだというのだ。
「毎日掃除はしている」
「それがお好きだからですね」
「綺麗にすることは好きだ」
 加藤はちゃぶ台の前に座布団を敷いて座っている。そこでやや空虚にテレビを観つつ声と話しているのだ。
「しかしだ」
「いい家等にはですか」
「一人暮らしだしな」
 このこともあって、というのだ。
「この部屋で十分だ」
「ならいいですが」
「そうだな、それであんたが今ここに来た理由は」
「お知らせしたいことがあります」
「戦いのことか」
「はい、そうです」
 まさにそのことでだ、来たというのだ。
「そのことでお話したいことがありました」
「そうだったのだな」
「そうです、水の剣士はです」
 彼のことだった。
「テューポーンとの戦いを終えました」
「勝ったか」
「はい、ですから」
「俺とか」
「最後の戦いの時になりました」
「剣士の戦いも終わりか」
 今も無表情な声で言った加藤だった。
「ではストリートファイトに専念するか」
「それならそれで、ですか」
「楽しい戦いだった」
 加藤は淡々と述べていく。
「負ければな」
「それで、ですか」
「俺は他の戦いに移る」
「それだけですね」
「しかしだ」
「勝てば、ですか」
「永遠の戦いを望む」 
 それが加藤の願いだ、それは変わらなかった。
「そしてだ」
「貴方だけになっても」
「怪物は出て来るな」
「はい、彼等は」
「ならその連中と戦うだけだ」 
 こう簡潔に言うのだった。
「それだけだ」
「そうですか」
「俺は戦う相手は選ばない」
 加藤の特色だ、彼は戦う相手は選ばない。何時でも誰でも戦える相手ならばそれでいいという考えなのだ。
「どの様な相手でもだ」
「倒されるだけですね」
「それだけだ」
 だからだというのだ。
「剣士がいないのならだ」
「怪物達と」
「戦う、そうさせてもらう」
「そこまで戦うことがお好きですか」
「無性にな」
 まさにという口調であった。
「それを願ってだ」
「最後の戦いにもですね」
「向かう」
 そうするというのだった。 
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