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マカロニウエスタン

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第六章

「最後にお祖父ちゃんの名前も出るからな」
「えっ、お祖父ちゃんもなんだ」
「この映画を作っていたんだ」
「そうさ、画面には出ないけれどな」
 スタッフとして名前は出るというのだ。
「よく観ておいてくれよ」
「うん、じゃあね」
「お祖父ちゃんの名前も観るね」
「絶対にね」
「最後に出るからな」  
 スタッフロールの時にというのだ。
「よく観てくれよ」
「そうなんだね。けれど」
 ここでだ、孫の一人が彼に言ってきた。祖父の家のリビングにおいて。
「まだこうした西部劇作ってるの?」
「イタリア人がスペインまで来てか」
「うん、まだ作ってるの」
「ははは、もう昔の話さ」
 チンベッサはその孫に笑って応えた、だがその笑顔は。
 何処か寂しげだった、それでこう言うのだった。
「お祖父ちゃんもタクシーの運転手にかかりきりになったよ」
「イタリアから人が来なくなって」
「それでなんだ」
「そうさ、もう今では殆ど作ってないよ」
 西部劇はというのだ。
「昔の話さ」
「本当にお祖父ちゃんが若い頃のことなんだ」
「まだお父さん達が子供だった頃の」
「祖母さんもその頃はとても美人だったぞ」
 チンベッサは今も共に住んでいる女房のことをここで言った。
「この世で一番な」
「お祖母ちゃんも?」
「綺麗だったんだ」
「今じゃビヤ樽みたいだがな」
 そこまで太ったというのだ、若き頃と違って。
「とても綺麗だったんだぞ」
「ううん、信じられないね」
「お祖母ちゃんが痩せていたんだ」
「すらっとしててな」
 両手を空で上から下にやっての言葉だ、ストンとした感じで。
「本当に美人だったんだぞ」
「それでお祖父ちゃんもなんだ」
「皺がなかったんだ」
「それでこの映画をイタリア人達と一緒に作っていたんだ」
 あらためてこの映画の話をするのだった。
「そうだったんだぞ」
「じゃあそのお祖父ちゃんが若い時に作っていた映画をだね」
「イタリアの人達と一緒に作ったそれを」
「観てくれよ、お祖父ちゃんがやった仕事の一つをな」
 孫達に笑顔で話しつつ観るのだった、彼は自分のした仕事を孫達に観せながら笑顔でいた。懐かしい時代のことを思い出し楽しみながら。


マカロニウエスタン   完


                           2014・2・20 
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