ポルターガイストは使いよう
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第四章
「まして十二時までに寝ないと五月蝿くて」
「ポルターガイストが暴れる音がするからね」
ポルターガイストはただものを乱れ飛ばせるだけには限らない、その時に音も立てる。それでその音で寝られないからだ。
「その前に熟睡しないといけないから」
「そのことからも早寝になってね」
「それでだね」
「そう、寝ないといけないから」
「仕事にも影響して」
「寝る時間と起きる時間が決まったから」
この前提が出来たからだというのだ。
「お仕事もそれに合わせて決まった時間にしないといけなくなったから」
「夜ふかしをせずに」
「そう、めりはりが出来てね」
「能率があがったんだね」
「書く仕事もあれなのよ」
オードリーはこう夫に話す。
「めりはりなのよ」
「そうそう、僕の仕事もそうだし」
「そうでしょ、かえって能率があがってね」
「よくなるわよね」
「その通りね」
こう話してだ、そしてだった。
妻も日常生活はしっかりとなった。そして仕事もよくなりいいこと尽くしだった。しかもこのポルターガイストの話を聞いて。
そのうえでだ、興味を持った人達がだった。
家に来てポルターガイストを見たいと言い出した、ブラウンはその声を聞いてだった。
彼等を家に案内して取材もしてもらった、その金も入りしかもボストンのちょっとした観光スポットにもなって。
そちらからの収入も出来た、ブラウンはこのことにも喜んでだった。
家を紹介してくれた業者の人に会ってもだ、満面の笑顔でこう言った。
「いや、あの家を買ってよかったよ」
「本当ですか?」
「うん、十二時に絶対に起こるからね」
「それが困るっていうんですけれど」
「いやいや、それに合わせて寝起きするから」
「だからですか」
「まず家族全員早寝早起きになって散らかした後も掃除してね」
このことも話すブラウンだった。
「お部屋を掃除するから」
「ついでに家全体をですか」
「毎日綺麗にする、生活にメリハリが出来て仕事にも影響して」
「いいのですか」
「しかも取材に来たりして話題になってね」
「えっ、取材もですか」
業者の人は目を丸くさせてブラウンに問い返した。
「それも来て」
「今やあの家はちょっとした観光スポットになってるんだ」
「ボストンのですか」
「そうなんだ、いいこと尽くめだよ」
「そうですか、何ていいますか」
ここまで聞いてだ、業者の人は首を捻り唸る顔で言った。
「ポルターガイストも使いようですね」
「そうそう、ものが急に動くだけじゃない」
「それはそうですけれど」
「それなら別に怖くないじゃないのかな」
こう言うのだった。
「特に」
「ううん、強いですね」
「強いかな」
「というかタフですね」
「というかこれまで住んでいた人がね」
ブラウンにしてみればだった、このことは。
「弱いんじゃないかな」
「弱いですか」
「だってね、アメリカだともっと凄いことが一杯あるからね」
アメリカはそうした国だ、とにかく個性的な人間や動物、自然に満ち溢れている。そうした国であるからだというのだ。
「ポルターガイスト位じゃ」
「驚かないですか」
「別に殺されたりしないじゃないか」
「まあいきなり銃でズドン、はないですね」
「アメリカではそっちも多いからね」
「殺されないならですか」
「決まった時間にだけ暴れるのなら怖くないよ」
全く、というのだ。
「僕にとってはね」
「考えてみればそうですね」
業者の人もだ、言われてみればだった。
「騒がしいだけですね」
「それも決まった時間に決まった場所でだけね」
「騒ぐだけなのね」
「何ともないよ。むしろ上手に使えばね」
ポルターガイストもだというのだ。
「あんないいものはないよ」
「そうなりますか」
「隣にサイコ殺人鬼がいるよりずっとましだよ」
笑って言うブラウンだった。
「いや、お金にもなっているからいいよ」
「何かこれまで怖がって出て行った人がおかしく思えますね」
「アメリカにいたらあれ位何でもないから」
「特にですか」
「そう、気にしないどころか役に立たさせてもらってるよ」
笑顔で答えるブラウンだった、そして彼と家族はポルターガイストと共に暮らして規則正しく健康な生活を送り観光スポットとしての収入も手に入れて幸せに過ごすのだった。
ポルターガイストは使いよう 完
2014・3・21
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