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クー=シー

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第三章

「その子が来てからか」
「そうなったのね」
「そうなんだ、グリーンが来てからね」
 それから、というのだ。
「この子は幸運をもたらしてくれているんだ」
「それは偶然じゃないかい?」
 近所のおじさんはアーサーの笑顔での言葉を聞いてこう言った。
「幸運が続くのは」
「ううん、この子が来てからだから」
 幸運が次々と舞い込んで来る様になったのは、というのだ。
「それまで何もなかったのに」
「そうなんだね」
「だからね」
 それで、というのだ。
「僕達にとってこの子は幸運の犬でもあるんだ」
「だからそういう意味でも」
「うん、僕グリーンが大好きだよ」
 満面の笑顔での言葉だ。
「この子とずっと一緒にいたいよ」
 散歩の時に近所の人達にこう言うのだった、実際にだ。
 オーウェル一家には次々と幸運が舞い込んだ、それでだった。
 家には笑顔が尽きなくなった、しかもだ。
 アーサーは母のメアリーのお腹を見てだ、こんなことも言った。
「僕の弟か妹が」
「ええ、少ししたらね」
 メアリーもそのお腹を自分の手で摩りながら笑顔で言う。
「産まれるわよ」
「僕お兄さんになるんだね」
「そうよ」
「いや、まさかね」 
 ヘンリーも妻を見て笑顔で言う。
「また産まれるなんてね」
「アーサーを産んだ時にね」
 メアリーはそのヘンリーに顔を向けて二人だけの事情を話した。この話はアーサーはまだわからないことだ。
「もう子供は出来ないって言われてたのに」
「それがね」
「また産めるのね」
「僕達に幸運が訪れたね」
「ええ、そうよね」
 こう二人で話すのだった。
「そうなったわね」
「本当にグリーンが来てから」
 家のリビングのソファーの傍で横になっているグリーンを見ての言葉だ。その目は今も実に澄んでいて綺麗だ。
「幸運が続くね」
「不思議な位ね」
「この子が来てから」
 しみじみとして言うヘンリーだった。
「本当に運がいいよ」
「ええ、お陰でまた子供が出来て」
「この子が産まれたらね」
「また幸運ね」
「うん、そうだね」
 こう話すのだった。
「今回もね」
「この子と一緒にいるといいことがあるって言われたけれど」 
 ここでだ、こうも言ったヘンリーだった。
「本当だね」
「そうよね」
 メアリーも夫の言葉に笑顔で応えた。
「何かとね」
「まるで幸運の妖精が着てくれたみたいな」
「そうした感じよね」
「じゃあグリーンはな」
 まさにというのだ。
「我が家にとっての幸運の妖精だな」
「本当にね」
「ただな」
 ここでだ、ヘンリーはこのことをも言った。
「最近またな」
「泥棒ね」
「この辺りをうろついてるらしいからな」
「用心しないといけないわね」
「何でもな」
 その泥棒のことをだ、ヘンリーは話した。 
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