クー=シー
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第一章
クー=シー
スコットランドエジンベア近郊のある町に住むオーウェル一家は息子のアーサーの情操教育も兼ねて犬を飼うことにした、だが問題はどの種類の犬にするかだった。
「何かと最近物騒だしな」
「そうね、泥棒とかね」
夫のヘンリーの言葉にだ、妻のメアリーも応える。
「いるものね」
「だから出来るだけな」
「大きな犬ね」
「ああ、大型犬にしよう」
飼うのなら、というのだ。
「そうしよう」
「じゃあどの種類の犬かよね」
「そうだな、大型で」
番犬としての役割からである。
「しかもアーサーと親しめるな」
「そうした犬にするべきね」
「そうだ、だから大きいといってもな」
例えだ、大型犬がいいと言ってもだと言うヘンリーだった。
「あまり怖い犬はな」
「じゃあドーベルマンとかはね」
「ああ、あれは怖過ぎる」
あまりにも、というのだ。
「幾ら何でもな」
「そうね、大きくてよく吠えてしかもアーサーに優しい」
「そうした犬がいいな」
「じゃあゴールデンレッドリバーかしら」
メアリーが出した犬の種類はこれだった。
「あれならどうかしら」
「ああ、レッドリバーか」
「大型でよく吠えてね」
「番犬にもなってな」
「しかも大人しいし人懐っこいから」
だからだというのだ。
「アーサーとも仲良くなれるわ」
「そうだな、レッドリバーは頭もいいしな」
犬の中でもだ。
「丁度いいな」
「それじゃあね」
「よし、レッドリバーにしよう」
アーサーもここで決めた。
「その中からいい子を探そう」
「ネットで探すなりペットショップに行ってね」
「そうしよう」
こう話してだった、二人はレッドリバーの中でよさそうな子を探した。そうしてエジンベア市街のあるペットショップでだった。
見事な毛並みで目をきらきらとさせている利発そうなレッドリバーを見た、その子を見てだった。
連れて来ていたアーサーがだ、両親にすぐに言ってきた。
「お父さん、お母さん、僕はね」
「この子か」
「この子がいいのね」
「うん、この子にしよう」
今は檻の中にいるその金色の毛のレッドリバーにというのだ。
「絶対に」
「そうか、アーサーがそこまで言うのならな」
「そうするわね」
「この子絶対にいい娘だよ」
アーサーは犬の目を見て言う、見れば犬の方もアーサーを見て尻尾をぱたぱたと振っている。
「何となくだけれどわかるよ」
「確かにいい目をしているな」
「そうね」
ヘンリーとメアリーも犬のその目を見て言う。
「黒くて綺麗でな」
「澄んでいるわね」
「目でわかるっていうしな」
「それだとね」
「うん、この子ならね」
アーサーはもう犬から離れずに両親に語る。
「きっといい友達になるよ」
「よし、じゃあな」
「この子にしましょう」
こうしてだった、アーサー達はこのレッドリバーを飼うことにした。引き取る時ペットショップの店長、やけに茶色い肌と白い髪の毛の痩せた老人はにこやかにこう言った。
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