いかさまは知っていても
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第一章
いかさまは知っていても
どの国でもこうした場所はある、警察が取り締まっても中々根絶されない。
それは台湾でも同じだ、闇の賭け場は今日も満員だ。
元締めの黒社会の男がだ、奥で笑ってこんなことを言っていた。
「今日も賑やかだな」
「全くですね」
側近達が彼の言葉に応えて笑う。
「博打は何処でも人気ですよ」
「これだけ楽に儲けられる仕事はないからな」
「そうですよね」
「ヤクとかコロシはな」
そうした黒社会の他の仕事はというのだ。
「リスクもあるからな」
「ですよね、臓器売買とかも」
「警察も五月蝿いですし」
「最近うちの警察も真面目になったからな」
台湾の警察もだ。
「政治家さん達も黒くなくなってきたしな」
「清潔にはなってきてますね」
「昔よりは」
「だからそうした仕事はな」
麻薬に殺人、臓器売買等は。
「結構厳しくなったからな」
「ですね、けれど博打は」
「これ位は」
「ああ、ちょっと金を掴ませれば見逃してくれるからな」
煙草を吸いつつ賭場の賑わいを見守りながらの言葉だ。
「イカサマがあるにしてもな」
「ですね、あとウリも」
「そっちも」
売春のことだ、こちらもどうしても黒社会が関わる。
「相当でないと見逃してもらえますから」
「楽ですよね」
「まあウリもな」
その売春も、というのだ。
「最近うちも女の身元がな」
「ええ、やばい筋から来た女ですと」
「警察が五月蝿いですからね」
その場合も、というのだ。
「闇ルートで集めた女は」
「どうしても」
「ああ、あくまで納得して来た女を使えよ」
娼婦も、というのだ。
「高利貸にしてもな」
「最近は無茶出来ないですね」
「何かと」
「そう思うとやっぱり博打はいいものだよ」
黒社会の儲けの場所としてだ。
「こんないい仕事はないぜ」
「全くですね」
「警察も許してくれますから」
「真面目に楽してがっぽり儲けるんだ」
こうした社会も真面目にしなくては収益があがらないし下手をすれば警察が来るかである。この辺りが難しい。
「これからもな」
「はい、わかってます」
「それじゃあ」
手下達も応える、そして。
賭場の中にいるディーラーを見た、そのうえで元締めにこうも言った。
「やっぱりやってくれますね」
「花蓮は」
「ディーラーとして最高です」
「あれだけのディーラーはいませんね」
「ああ、ただな」
元締めはそのだ、ディーラーをしているタキシードの美女を見た。長い波がかった黒髪をしていて艶やかな長い睫毛の切れ長の二重の瞳を持っている。鼻は高く唇は紅で小さめだ。顔は細長くスタイルも抜群だ。
その王花蓮を見てだ、元締めは残念そうにこうも言った。
「あいつはもうすぐな」
「はい、借金を払い終えて」
「それで、ですね」
「この店を辞めるからな」
そうなるとだ、元締めは残念そうに言った。
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