美しき異形達
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第十二話 光の符号その十三
「どうした攻撃が一番効果があるかって」
「それでか」
「そう、普通に飛び蹴りをしてもね」
「あまり強くはないと思ってか」
「力を使ってね」
そしてだというのだ。
「そのうえで折角覚醒した身体能力も使ってと思って」
「それでか」
「今のキックははじめて出したわ」
そうだったというのだ。
「咄嗟にね」
「それで今のものか」
「上手くいったみたいね、しかも威力もあったし」
「見事だ、それは認めよう」
「有り難うね。けれど」
「けれど。何だ」
「あんたも知らないと思うけれど一応聞くわね」
向日葵はここで思わせぶりな、それでいて問う感じの笑みになった。そのうえで首を右に傾げさせつつ死にゆく怪人に尋ねた。
「あんたも私達のことは知らないわよね」
「何故力を出せるか、か」
「あとこの身体能力とか頑丈さもね」
そのことについても尋ねるのだった。
「やっぱり知らないわよね」
「生憎だがな」
これが怪人の返事だった。
「俺は何も知らない」
「そう、やっぱりね」
「俺達がどうして生まれたのか、誰が生み出したのかもな」
「知らないのね」
「何もな」
そうだというのだ。
「生憎だがな」
「そうなのね。じゃあいいわ」
「ではだな」
イソギンチャクの怪人の身体もだ、指の先から。
砂の様に崩れていっていた、それは指の先から徐々に身体全体に及び。
その崩れゆく中でだ、彼は言った。
「これでお別れだ」
「名残惜しいって言うべきかしら」
「そうでもないだろう、所詮敵同士だ」
「お互いのことも知らないからっていうのね」
「そうなる、ではな」
「さよならは言っておくわ」
「ではだ。俺からも言おう」
怪人もだ、その崩れゆく中で言う言葉は。
「さらばだ」
「それじゃあね」
向日葵が別れの言葉を告げたと同時にだった、怪人の身体は完全に崩れ去り消えてしまった。後には何も残らなかった。
闘いが終わってからだ、薊は微笑んで傍らにいた向日葵に顔を向けて言った。
「いい動きしてるじゃねえか」
「今のキックね」
「ああ、本当に運動音痴かよ」
「これまではそうだったのよ」
向日葵は明るい微笑みで答えた。
「実際にね」
「それがかよ」
「急によくなったのよ」
力が覚醒してからだ、そうなったというのだ。
「今みたいにね」
「弓道っていうか新体操だったな」
薊はそのバク転めいた動きからこう言った。
「さっきのは」
「ううん、言われてみればそうね」
「実は向日葵ちゃんそっちの方の才能もあるのかもな」
「だといいけれどね」
「ああ、とにかくさっきの蹴りはさ」
「よかったのね」
「怪人も倒せたしな」
その止めになった、それでだというのだ。
「いいと思うぜ」
「そう、有り難うね」
「それじゃあこれからもな」
薊は微笑み向日葵にこうも言った。
「宜しくな」
「あらためてね」
向日葵も薊のその言葉を微笑んで受けた、そうしてだった。
あらたな仲間が加わった、智和は向日葵が加わったのを受けて裕香に笑みを浮かべて言った。
「さて、これでね」
「これで?」
「また一人加わったね」
「そうですね、向日葵ちゃんが」
「あと三人、どうやらね」
笑顔に思慮、深いものも入れて言った。
「まずは八人揃うことからみたいだね」
「北斗七星のですね」
「そう、双子星も入れてね」
そのうえでの八人だというのだ。
「まずはそうしないと駄目みたいだね」
「八人ですか」
「そう、あと三人だよ」
「そうですか、それでなんですけれど」
裕香は自分から智和に言った。
「怪人の灰は」
「あのことだね」
「何かわかりましたか?」
「いや、それがね」
どうだったかとだ、智和はこのことは残念そうな苦笑いになってそのうえで裕香に答えた。
「まだ何もわかっていないんだ」
「解明はですか」
「出来ていないよ」
「そうですか」
「人と怪人の合いの子となるとね」
そうした存在だ、だからだというのだ。
「相当特別なものだと思うけれどね」
「DNAがですか」
「そう、相当妙なものだろうね」
何もわかっていないがだ、このことは間違いないというのだ。
「それはね」
「そうですね、私もそれは何となくわかります」
「そう思うよ、まあ今はね」
「はい、向日葵ちゃんが入ったことをですね」
「喜ぼう」
智和は知的な笑顔になって裕香に応えた。その二人の前では五人の少女達が集まっていた。そのうえで楽しく談笑をはじめていた。
第十二話 完
2014・3・31
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