DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第7章:過去から未来への歴史
第5話:ディストラクション
(エビルマウンテン)
リューノSIDE
エビルマウンテンに入山してから2日……
お父さんへの対抗心と、そのお父さんの影ながらのサポートによって、開けた台地に辿り着いた私達。
そこには想像を絶する光景が広がっていた。
「よくぞここまで来たな勇者一行……それと裏切り者デスピサロよ」
遙か遠くに一際大きなモンスターが居り、奴がお腹の底に響く様な声で話しかけてくる。
まだ遠くてよく見えないが、多分あれがエビだろう。
「な、何を言うか……裏切ったのは……き、キサマの……ほ、方だろう……」
振り絞る様にデスピーが反論をしたが、この強烈な邪気に圧迫されている。
いや……邪気の所為だけではないだろう。
「くっ……こんなに敵が多いなんて……」
現状を見てシンが無念そうに呟く。
そうなのだ……私達とエビの間には、無数の……何百というモンスターが群れを成して配置されており、侵入者である私達を睨み付けているのだ。
「ふっふっふっふっふっ……折角生き長らえたのに、わざわざ死にに来るとは愚かな男よデスピサロ! キサマの時代はとうに終わったのだ……完全版の進化の秘法を私が手に入れた時に!」
誰もが声も出せず俯いている。あの時お父さんに圧力をかけて、黄金の腕輪を渡させてしまったから……
「ほら……腕輪を渡しちゃったから、エビちゃんが調子こいちゃってるよ(笑) 僕に圧力をかけたシンが責任とれよ。ロザリーの責任はデスピーがとれ!」
案の定というか、シンとデスピーに責任を押し付けて、お父さんは一人笑っている。
「人間よ何が可笑しい……気でも触れたか!?」
この状況下で笑っている事が気に入らないのか、エビが苛ついた声で話しかけてくる。
「お前の面が可笑しいんだ。気など触れてない……お前ほどな(大笑)」
だけど気にしないのが私のお父さんだ。
「リュ、リュカさん……奴を挑発するのは止めて下さいよ! 戦うのは俺達なんですよ……責任とって戦うんですから、これ以上怒らせないで下さいよ!」
「大丈夫だよ、アイツ凄ー弱いから! ね、デスピー」
「お前からしたら弱いだろうが、進化の秘法でパワーアップしたエビルプリーストは強敵だ! それに……奴と戦う前に、この大量な手下共を倒さなければならないからな」
お父さんの挑発行為に心底脅えるシンと、眼前の困難に怯むデスピー……でも、お父さんに頼らず戦おうとする姿勢は評価できるわ。
「え……この群がってる連中に辟易してんの? どうなってんだこの時代の猛者共は!? この場に僕の息子が居たら『僕が大量ザコを相手しますから、お父さんは親分ザコを倒して下さい。年寄りにボス戦は辛いと言うのなら、僕がそちらを担当しても良いですよ(笑)』って言ってるぞ!」
「ティミーさんがそんな事言うわけねーだろ! 言うんなら『大量ザコは僕が倒します。そっちの方が楽そうだし、早く終わらせてアルルとイチャ付きたいですからね(笑)』だ!」
「あぁ、そっか(笑) ウルフの言う事の方が合ってるかもね」
お父さんとは違いウルフの笑い方は絞り出す様にだが、それでもこの状況で笑えるのは流石だと思う。
きっと……本当にティミーだったら、朗らかに笑い合いながらお父さんと共に敵を倒してゆくのだろう。私が知らないだけで、アイツも強くて格好いいみたいだし。
「ねぇリュカ……どうかしら、シン君達の為に私達未来人が露払いをしてあげるのは? 親玉はこの時代の者が責任持って倒すとしても、折角呼ばれちゃったんだから私達も活躍しましょうよ」
ビアンカさんがお父さんを説得してる。
困ったな……間違いなくお父さんは、ザコを倒しておくつもりでいたのだろう。
でも、私達まで駆り出されるとは……
私は戦えないのに……
「……ウルフの意見は?」
「リュカさんが陣頭指揮を執るのなら、俺に反対する理由はありません。ただ……リューノとリューラは足手纏いだから外して下さい!」
「な!? 私が足手纏いとは、どういう意味だウルフ!」
私の戦闘への参加免除にホッとしつつも、リューラの怒りに困惑する。
まぁこの娘にとって“強さ”はアイデンティティーだから仕方ないけど……
「うん。ウルフの意見は尤もだ……前衛は僕とウルフが。後衛で魔法攻撃をするのはビアンカとマリーだ。二人とも遠慮は要らないから全力でやりなさい! リューノとリューラは、万が一敵を討ち洩らして後衛に攻撃を仕掛けたときの為に、ビアンカ達の側で待機!」
不満げなリューラを無視してお父さんがズバッと指示を出す。
こうなれば従わざるを得ないのが我が家の方針。
つーかお父さんの言う事に不満を言う娘は居ないのですよ!
顔から“不満”を捨て去り、キラキラ輝く瞳でお父さんを見詰め頷くリューラ……と、その近くで小さくなる私。
私達の動きを目で追った後、大量の敵に向き直りド派手な魔法を放出するビアンカさんとマリー……ガチでビビる程凄い。
二人の魔法により、全体の1割を消失した敵……
そして二人の男が、その敵陣へ突入する!
ビアンカさんとマリーの魔法攻撃を凌駕する勢いで敵を葬り去りながら。
リューノSIDE END
(エビルマウンテン)
ロザリーSIDE
この目で今巻き起こっている事を見ても信じがたい光景だわ……
数百体は居るであろう屈強なモンスター達を、リュカさん達一家はいとも容易く駆逐してゆく。
強さもさることながら、その連携された動きがとても美しい。
その圧倒的な魔法力で、多数の敵を吹き飛ばすビアンカさんとマリーさん。
素人目にもマリーさんの方が魔法力は大きいみたいだが、その力を効率的に使い切ってない……その為、マリーさんは味方が居ない場所(敵は居る)に狙いを定めて魔法を放ってる。
しかしビアンカさんは、前衛のリュカさんやウルフさんが居る場所でも、器用にお二人を避けて魔法攻撃を行っている。
その為、マリーさん側の討ち洩らした敵も反撃をしてくるのだが、それによって傷付いた身体をリューノさんの持つ『賢者の石』で回復させ、同じく待機中のリューラさんが一瞬で敵を倒しきる。
前衛に目を向ければ、凄まじい勢いでウルフさんが敵を切り倒している。
背後から襲いかかっても、振り向きざまに魔法攻撃を行い、回復魔法や補助魔法までも組み合わせ隙が全く生じてない。
しかし素人の私に判るのはここまでだ。
もうリュカさんは何を行っているのか私には判らない……と言うか見えない。
一瞬一瞬姿が見えるのだが、見えた瞬間消えて別の場所へ現れる。
そして消えた瞬間から次に現れる瞬間の直線上に居た敵達が、大勢一瞬で吹き飛ばされるのだ!
「つ、強い……リュカは兎も角、ウルフの奴もこんなに強かったのか!? それにビアンカ……こんなに強いのに、何で今まで大人しくしてたんだ? これ程の実力があるのなら、俺の下から何時でも逃げ出せただろうに……」
私の隣ではピサロ様が唖然と呟いている。
だが他の皆さんは声も出せない状態だ。
当然だろう……リュカさんが人知を越えてると聞いてたが、他の皆さんもこれ程強いのだから。
20分ほどが経過し、エビちゃんさんを除く全ての敵を倒し終わったリュカさん達……
一滴も返り血を浴びてないリュカさんが、流石に疲れ切ったウルフさんを従え戻ってきた。ちなみにウルフさんは大量の返り血を浴びてる。
「ウルフ……この程度で疲れ切るとは、まだまだ修行が足りないぞ。ティミーだったら、お父さんと一緒に笑顔で帰ってくるだろう」
「ふ、ふざけんな……俺だって頑張ったんだから……そ、それは評価しろよ」
リューラさんに駄目出しをされ、その場に尻餅をついて反論するウルフさん。
時折話題に上るティミーさんは、本当に凄い人みたいだ。
このリュカさんと対等に渡り合えるなんて……
「あらあらリューラさん……後方待機を命じられご機嫌斜めかしら? 嫌いなお兄ちゃんを引き合いに出してまでマイダーリンを侮辱するなんて……」
「ふん……ティミーは嫌いだ。お父さんに楯突くクセに、凄く強い……しかもお父さんはティミーを凄く信頼してる。大嫌いだ!」
「こ、こんな馬鹿な事が……わ、私の軍勢が……私が築き上げた魔界の軍勢が!?」
大きな一仕事を終えたリュカ一家が、ほんわかと会話を楽しんでいると、遙か彼方でエビちゃんさんが唸りを上げている。
「おいエビ! 俺は兎も角、リュカさんはまだ本気出してねーぞ……ごめんなさいするなら今のうちだぞ!」
エビちゃんさんに背を向け座ってたウルフさんが、そのまま寝転がり見上げる様に視線を彼の方に向け言い放つ。
「大丈夫。お前の相手は僕じゃないから! 天空の勇者一行と、元魔界の王が相手だから!」
リュカさんはエビちゃんさんを見る事なく言い、寝転がるウルフさんの右足を掴んで彼を引きずりながら、私達より後方に下がってしまった。
その際「パパ~ン……もっと優しく運んでよぉ~」とウルフさんは大声で呟いてるが、「もうメラも唱えられないクセに、口だけは達者だな……」と、リュカさんに言われヘラヘラ笑っています。
どうやら我々の勝利は間違いなさそうですね(笑)
ロザリーSIDE END
後書き
リュカさん等の戦闘シーンのBGMはSPYAIRの「現状ディストラクション」でお願いします。
劇場で銀魂を観た時から、このシーンを書こうと決めてました。
ページ上へ戻る