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I want BRAVERY

作者:清海深々
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外伝 真田



真田Side

 今日は影時間の中でトレーニングをすると決めている日だ。

 だいたい3回に一回はシャドウを倒しに単独で出ている。

 最近は敵のシャドウが弱すぎるためか、あまり強くなっているという実感は得ることができない。

 影時間の中では通常の時よりも、より体力を使う。
 そのためトレーニングには持って来いだ。

 ここらへんに徘徊している弱いシャドウを倒すことが、俺が強くなることに直接関係がないと感じ始めてから、俺のトレーニングメニューは変わった。

 影時間中の走りこみは、弱いシャドウを倒すことよりは有意義だと思う。

 多分もっと遠くや、それこそタルタロスに入ればより強いシャドウに会えるだろう。
 しかし、美鶴にそれは止められている。

 遠くに行くとなると、それだけで体力を消耗するため、敵と戦うときに危険だと言われた。
 しかしそれでこそトレーニングになるのでは、と俺は毎回思うのだが、どうにも美鶴には頭が上がらない。

 タルタロスに至っては論外。
 まずはバックアップに美鶴が必要になる。

 その時点でタルタロス内部に入れるのは俺のみ。
 昔はシンジがいたのだが、今はいない。

 シンジが一緒なら美鶴も少しくらは許してくれただろう。
 しかし、いない人間を頼っても仕方がない。

 いつの日か、タルタロスでトレーニングをしたい、といつもの様に考えながら俺は寮の扉を押す。

「明彦か」

 ふと後ろから声がする。

「美鶴か、驚かせるなよ」

 振り返ってみるとそこには美鶴がいた。

「またトレーニングが?」

 どこか呆れたような声を出す美鶴。

「あぁ、今日こそは骨のある敵を見つけてみせるさ」

 何処かにふと強いシャドウが現れないか、という希望は常に心にある。

「いつものことだが・・・まぁ、無理はするなよ」

「あぁ、わかってるさ」

 パシンと自分の両手をぶつけ合わせ、俺は覚悟の意を示す。

「いってこい」

「あぁ」

 美鶴そう言ってから、俺は寮の外へとでた。








 『いつも通り』俺は、寮の周りをランニングする。

 時たま見つけるシャドウを2,3発殴って倒す。

 そして、また走る。

 そんなことを繰り返していた。

 ふと目に入ったのは3匹のシャドウ。

「獲物が固まってくれているとは・・・」

 ニヤリと笑い、そちらへと駆けていく。

 シャドウがこちらに気付く。

 一番手前にいた奴が手を振り上げる前に、走って来た勢いのまま相手の懐に入り込む。
 そして、そのまま左で軽く打ち込んで、その後に右ストレートを放つ。
 それで一体目が消える。

 止まることなく2体目に向かう。

 一歩踏み出してから右で軽くジャブを放った後、左から来たもう一体を避けるためにバックステップを踏む。

 そして、自分に対する攻撃が空振りに終わった、隙だらけの三匹目に2発パンチを打ち込む。

 そいつが消えた後、敵が手を振り上げてるのを見ながら真正面から突っ込む。

 振り下ろされる手が自分に当たる前に、右で殴り飛ばす。

「ふぅ」

 一体づつだとあまりにも手ごたえがないため、2体以上の時はすこしテンションがあがる。
 しかし、それでもこちらはノーダメージ。

 正直おもしろくない。

「まぁ、こんなものか」

 とりあえず合計5体ほど倒したことだし、もう少し走ってから帰るか。

 などと考えつつ、俺は走り始める。

 偶然だったのだろう。

 ふと目に付いた寮があった。
 目に付いたというよりは、道路に出た時にたまたま正面にあった、ただそれだけのことなのだが。

 ここらへんには、影時間の中では始めてきたなと思う。
 普段は駅の方を重点的に見ている。

 初めての場所だったためか、少し辺りを見渡す。

 その時、視界の端で揺れる物を見た。

 バッとそちらに顔を向ける。

(シャドウか?でも、寮の中だろ・・・)

 寮の中まで攻め入るのは、後処理が面倒だなと思いながら、その揺れたカーテンのある部屋の場所を外から確認する。

 そんな時だった。

 窓の隅から除く人がいた。

(人!?)

 驚愕に目を見開く。
 俺と目線が合う。

 相手の口が少し動くが、何を言っているのかはわからない。

 しかしそんなことはどうでもいい。
 この時間にいて、生きているということは適正のある人物ということだ。

 今までどうやって逃げてきたかは知らないが、適正のある人間がいる。

 つまり仲間が増える。

 結果、タルタロスにいける。

 最近、タルタロスのことばかり考えていたせいか、『タルタロスに行ける』ということしか俺は考えられなかった。
 相手がその誘いを断ることも、美鶴が反対するなんてことすら考えなかった。

「これは美鶴に報告だな!」

 俺はしばし呆然とした後、その寮と部屋を外から再度確認して、寮まで走って帰った。

(これで俺はもっと強くなれる!)

 そんなことしか俺の頭にはなかった。

 
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