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ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜

作者:むぎちゃ
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第九話 喪失

ニセ太后を倒し、ラインハットを救った私達はデール王に是非泊まっていってくれと言われ、一晩だけ泊まる事にした。私は人生初のお城にお泊まりで少しビビってる。
ヘンリーはデールと話を。アベルは部屋で休んでいる。さて、何をしてようかと思いながら、廊下を歩いていたら、声をかけられた。
「あなた方のおかげで、ラインハットは救われました!」
「あなた方はラインハットの英雄です!」
はぁ。またか。ニセ太后を倒してから、兵士さんや、学者さん、メイドさんなどに何度もお礼を言われるのだ。正直言って初めは嬉しくて照れ臭かったが今ではストレスの元になりそうだ。
「すみません。魔物との戦いで疲れているので休ませてもらっていいですか?」
「いいですとも!」
あぁ。黒い甲冑に身を包んだ兄さんが頭に浮かんだよ。まぁ、休ませてもらうのはありがたい。私は適当な部屋に入った。そこは寝室だった。
「あっ!ミレイちゃん!プルプル」
「スラリんちゃん、何でこの部屋にいるの?」
「あのね。ぼく疲れてたから、ピエールさんに頼んでドア開けてもらって中に入ったんだよ。プルプル。ミレイちゃんは?」
「私も同じかな」
私はスラリんちゃんを抱きしめベッドに寝転んだ。
「ミレイちゃん苦しいよ。プルプル」
スラリんちゃんが何か言ったが、この触り心地、気持ちよさ全てにおいて完璧だった。そこらのクッションよりも良い。スラリんちゃんとベッドの気持ちよさに身を任せている内についウトウトしてしまい、寝てしまった。

起きたのは、夜だった。寝ても疲れがとれていない。スラリんちゃんはいなかった。
私ははあくびをしながら立ち上がり、部屋をでた。
廊下を歩いていると、一人の兵士を見かけたので私は挨拶した。
「今晩は」
「今晩は」
会話はそれだけで終わるはずだった。しかし兵士は続けてこんな事を言った。
「お久しぶりですね。小宮山さん」
小宮山は私の転生前の姓だ。この世界でそれを知っている人は、一人もいないはずだ。それを知っていると言う事は。そしてお久しぶりと言う事は!
「小池……さんですか」
「ええ、そうです。『小池』です」
「何でこの世界にいるんですか?」
「小宮山さんが影響に気づいたからです」
「私が影響に気がついたから?」
「ええ。ラインハットをのっとっていたニセ太后の強化」
「それだけではないはずです」
影響が単なる魔物の強化とは思えない。きっと本質は別のところにあるのだろう。
「はい。それだけではありませんが今のところ、どういう影響なのか消す為にはどうすればいいのかとかはまだ不明です」
人を神様転生させといて、役目まで背負わせて影響がわからないとかふざけるなとキレそうになったが、簡単に影響が消せたら、私はそもそも神様転生などしていない、影響についてもわからないのは当然だと自分に言い聞かせた。
「わかりました。話はそれだけですか?」
「それだけですが……あなたの元いた世界の様子を見る事ができるんですがどうしますか?」
「見ます」
小池さんは頷くと私が初めてあった、スーツ姿になった。
「辛くなるかもしれませんが?」
「大丈夫です」
小池さんはどこからともなくiPadを出すと、画面をタップした。そして、私のいた世界の様子がiPadに映し出された。

『ミレイ……ミレイ……。ううっ』
母親はテーブルに突っ伏し泣いていた。
『しっかりしろ。俺だって辛いしここでふさぎこんでたらあの子はどうするんだ』
父親が言った。(因みにあの子と言うのは私ではなく、妹の小宮山カナだ。)
『何であなたはそんな平気そうなの!?ミレイが死んだのよ!それも飲酒運転したトラックに跳ねられてよ‼』
『俺だって平気じゃない!けど仕方ないんだ!これからの為にも塞ぎこんでちゃいけない。ミレイはもうどこにもいないんだ!』
「私は此処にいるよ!どこにもいないんじゃない!私は此処にいる!」
意味のないことだと知っていながら私は言った。
『だから早く日常に戻る事が大切……なんだ……』
父親の顔が歪み、母親を抱きしめ2人は泣いた。
もう私には見ていられなくなった。
「もういいです」
小池はiPadをしまった。
「小宮山さん……」
「私なら大丈夫です。小池さんもする事があると思います。では、お休みなさい」
そう言って、私は小池さんと別れ寝室ではなくテラスに出た。
そこで、私は泣いた。大丈夫なはずがなかった。
しばらくはそこで泣き続けていた。
「ミレイ?」
アベルの声がした。
「何で泣いてるの……」
「辛いこと思い出しちゃった」
「辛いこと?」
「うん。もう家族に私は戻れないことを」
「ミレイ……」
「私ね、どっかの誰かの所為で今まで住んでいたところも友達も家族もみんな失った。もう私はあそこに帰れない」
話す内に私は気がついた。何故自分がこの世界を選んだのかを。きっと私はアベルと自分を重ねていた。同じ、誰かの所為で今まであったものがなくなってしまったから。私は同じ悲しみを理解し、慰めてくれる人を求めていたんだ。
「ぼくも同じだ。光の教団に父を殺され、10年もの歳月を奴隷として過ごしていた」
「アベル……」
「ミレイ、君が今までそんな事を言わなかったって事は我慢してたんだね。もう我慢する必要はないよ」
私は気がついたらアベルを抱きしめて泣いていた。
アベルは優しく私を抱きしめてくれた。
 
 

 
後書き
小池さん再登場。そしてミレイが何故ドラクエ5の世界を選んだのが明らかになる話でした。
今回の話は書いてて悲しくなりましたが、ミレイの成長の為にもがんばって書きました。
因み家族はもう出す予定はないです。
あと、感想ください。 
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