I want BRAVERY
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二十六話 宿題
「彩頼む!!」
「頼む!!」
今現在俺の目の前には二人の男子生徒が土下座をしている。
ここは俺の部屋、つまり寮の一室。
そして、時刻は夜の10時。
「またか?」
「仕方ないだろぅ!だってよぉ!」
「鳥海先生がさぁ!!」
↓以下、二人の回想。
「あ、伊織と友近は授業終わったら私のとこ来るように」
若干イライラしたような雰囲気をかもし出しながら、鳥海先生は教室から出て行った。
「ぇ?俺らなんかした?」
「さあ?」
そう言って二人は互いに首をかしげながら、授業が終わった後、鳥海先生の所へ行った。
「先生、来ましたけど」
伊織が先んじて職員室に入り、鳥海先生を見つけ、そこへ友近と共に向かう。
「はぁ・・・」
「え・・・何故に開口一番にため息」
「あんたらねぇ・・・コレ」
そう言って先生が二人にみせたのは二人の成績表だった。
「はぁ・・・」
段々と二人は状況をつかめてきたようだ。
「他の先生からも注意されてんのよ、私がね、そう私が!」
そう言って先生はデスクにその紙をたたき付ける。
なんで私が、という気持ちがヒシヒシと伝わってくる。
「あのねぇ、もうウンザリなの」
はぁ、とさらにため息をつく。
「は、はぁ。すんません」
いまだ詳細はわからないが、とりあえず謝る二人。
とりあえず人生謝っておけばなんとかな
「すいません?謝るくらいだったら駅前のあの美味しいケーキ屋さんの一番高いケーキ買ってきなさい!」
る、というわけではなさそうだ。
しかし先生の理不尽な言葉にも、何故そうなるとは言えない二人。
「とにかく!もし今度のテスト悪かったら、毎日呼び出しだからね!」
その言葉に絶句し、白くなる二人を余所に先生はもう話は終わったと、シッシッとでも言うように二人を追い出した。
「と、言うわけなんですよ」
平伏したままの体勢で伊織が言う。
「成績が悪い伊織はわかるけど、友近はそんなにじゃないのか?」
ふと疑問に思ったことを口にしてみる。
友近は何に関してもモブだったはずだ。
「そう思うだろ!俺もそう思ったよ!そしたらさ・・・」
↓以下 友近の回想
「ちょ、先生納得いかないんですけど」
呼び出された次の日、友近はさっそく先生に抗議しにいった。
何故、成績が悪いとはいえまだ下に何人もいる俺もなのか、と。
「そんなん知らないわよ。回りの先生達が、あんたが寝てるのが気に食わないって言うんですもの」
(えぇぇぇぇ)
「っていうわけでして」
「まぁ、モブ顔なのに寝るってのは言語道断だから、それはわからんではない」
「いやいや!わかんないから!意味不明だから!」
この事態の理不尽さに半泣きの友近。
(人生ってのは理不尽なもんなんんだよ。俺の転生とかな・・・)
「で、何点取ればいいんだ?」
「きょ、協力してくれるのかぁ!」
「さ、彩ぃぃぃ!!」
「ま、他に頼る奴いなさそうだしな」
(まぁ、多分だが、授業中寝てる俺が成績がいいのが気に食わないとか、イヤミ田らへんが鳥海先生に言ったんだろうよ。それで成績が上がらなかったら、俺とつるんでるからだ、とかにもっていきたいんだろうな)
(※その通りです)
あの先生無駄に回りくどいしな、と思いながらも、自分のせいだとは言えないので、
「それに、俺達親友だろ?」
なんて言ってみる。
「彩ぃぃ!!」
「一生付いていくぅぅ!!」
なんて薄っぺらい親友だ。
(感激してるのに、その原因が俺とは、申し訳ない)
心の中では謝っておいた。
勉強会が始まって大体1時間が経っただろうか、早くも二人がダレ始めた。
「もー無理ぃ〜」
「ギブぅ〜」
俺の部屋のテーブルに突っ伏している。
「おいおい、しっかりしてくれよ。せっかく教えてるのに」
「うぅ〜スマン」
「なんでこんなことにぃ〜」
(俺のせいでこの状況になった、なんて言えないな・・・)
内心で罪悪感を感じながらも、実際に言うことはない。
ひどい奴である。
「とにかく、今日はこっから、ここまでのページが目標な」
「うげっ!?多くない?」
「それだけサボって来たんだろ」
「ぐっ・・・そう言われると返す言葉もない」
「ま、とにかくガンガン問題解いていこ。分からなくなったら言って。多分俺の方が教師より教えるのうまいから」
「おぅ!任せたぜ親友!」
「頼りにしてるぜ!」
二人は再び勉強をし始める。
それにしても、学力5というのはかなり便利だ。
大体4になった時くらいからだろうか、2,3回見たものは忘れなくなった。
もはや擬似瞬間記憶能力である。
それからだろうか、前世では苦労した英語や古文の単語や、世界史などの暗記系で苦労することがなくなった。
前世ではバリバリの理系(といっても文系科目があまりにも悪すぎてそうなっただけなのだが)だったため、他の数学や理科系では全く問題がない。
つまるところ、これで苦手科目がなくなったわけだ。
それに、前世では自分ができなかったため、所謂『出来ない人』の気持ちがわかるわけだ。
これでもクラスでは、教えるのがうまいと評判なのだ。
やはり、
(学力5はチートぉぉぉ!)
内心、何度目になるかわからない叫び声を上げる。
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