平和主義
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第一章
第一章
平和主義
「軍隊がないって!?」
「そんな国があるのか!?」
皆その話を聞いてまずは大いに驚いた。
「そんな、それでやっていけるのかね」
「無理じゃないのか?」
「なあ」
そして誰もがこう言いだした。
「軍隊がなくて誰が国を守るんだ?」
「非武装中立か?」
「いや、それはナンセンスだろ」
幸いにしてここにいる誰もが非武装中立だのそうしたことで何かができるとは思っていなかった。そんなことをすればどうなるかだ。
「そうなってみろ。隣にソ連みたいな国があればな」
「平和勢力の国があればか」
「ああ、そういう国があればだよ」
これは皮肉であった。ある国の知識人達はソ連を共産主義だから『平和勢力』と呼んでいたのだ。果たしてそれが真実かどうかは歴史にある通りだ。
「一発で攻められるよな」
「まあ攻められたいんなら非武装中立もいいけれどな」
「後が怖いけれどな」
だからこそどの国も軍を持っているのだ。軍は何の為にあるのか、言うまでもなくその国を守る為である。まさにそれが存在理由だ。
「けれどその国は軍隊がないって?」
「どの国だよ、それ」
「何でもコスモポリタンというらしいな」
それがその国の名前だ。
「東の位置にホワイトイーグル合衆国、西に青龍人民共和国があるんだよ」
「おい、あの二国かよ」
「また物騒だな」
言わずと知れた世界の二大国である。昔からあちこちの国に武力介入したり侵略をしてきたりしている。そうした国なのだ。
「北にはピロシキ共和国、南には太陽皇国だけれどな」
「南の太陽皇国だけがまともだよな」
「北もえげつないな」
「それでそのコスモポリタン共和国だ」
その国のことも話される。
「四国に囲まれる位置にあってな」
「軍隊がなくても国をやっていってるのか」
「どうやってだよ」
「そんなことができるのかよ」
「けれど攻められることなくな」
その四国から侵略されていないのだという。
「平和にやっていってるらしい」
「嘘だろ」
「出鱈目だろ」
何人かはその話を聞いてすぐにこう言い出した。
「そんなことできるか」
「無理だ」
「不可能だ」
そしてこうも言うのだった。
「絶対何処かに攻められる」
「太陽は攻めないだろうが後の三国はな」
「間違いなく攻めるだろ」
「けれど実際にやっていってるからな」
またこのことが言われた。
「その国な」
「外交が上手なのか?」
「それともあれか?四国の命綱握ってるのか?」
「金融か何かで」
続いてこんなことが予想された。
「それでも軍隊ないと無理だしな」
「スイスだって国民皆兵だしな」
「なあ」
実はスイスはそういう国だ。何かあればすぐに総動員がかけられる。そうしたかなり凄まじい国防政策で国を守っているのだ。
「軍隊なくてやっていけるか」
「絶対に無理だろ」
「本当に嘘じゃないのか?」
「いや、それがな」
しかしまたこう言われるのだった。
「軍隊は本当にないらしいんだよ」
「じゃあ一回確かめてみるか」
「ああ、そうするか」
「この目でな」
こうしてであった。彼等は実際にそのコスモポリタンに向かった。そこは半島であり本当に四国から影響を受ける場所にある。四国から比べれば実に小さい国である。
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