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戦国異伝

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第百六十六話 利休の茶室にてその十

「二百四十万石」
「それで六万です」
「北条の二百四十万石も気になるがな」
「この両雄ですな」
「まずはな」
 そのだ、武田と上杉がだというのだ。
「気になるわ」
「それで徳川殿ですが」
「五十万石じゃな」
「二百四十万石の武田には」
 しかもだ、その武田は恐るべき二十四将と真田幸村もいる。尚且つ武田の兵は。
「あの天下の精兵達が相手では」
「竹千代とてな」
「適いませぬな」
「竹千代も確かに強い」
 金ヶ崎でも姉川でも見せたものだ、そして先の戦でも。
「その兵達も強い」
「徳川十六将ですな」
「四天王と中心としたな」
「しかしですな」
「五十万石じゃ」
 その石高と兵ではというのだ。
「とてもな」
「適うものではありませぬな」
「今武田が来ればな」
 織田家も疲弊している、兵を休めなければならない。
「竹千代だけで相手をせねばならぬが」
「それはですな」
「死ぬわ」
 武田が相手ではというのだ。
「如何にあ奴といえばな」
「では」
「うむ、籠城を勧める」
 その時はというのだ。
「武田と戦ってはならぬ」
「絶対にですな」
「そうじゃ」
 その通りだというのだ。
「そうするべきじゃ」
「では徳川殿に」
「伝えておこう」
 何があってもだ、武田と戦うなというのだ。
「こちらが整えるまでな」
「籠城されてですな」
「そう伝えておく。しかし」
「しかし、ですな」
 利休もわかっていた、家康の気質だ。それは彼を幼い頃から知っている信長なら尚更だ。それで信長はこうも言うのだった。
「あ奴はこうした時には意地を張る」
「そしてですな」
「戦を選ぶ男じゃ」
 そういう男だというのだ、家康は。
「だからな」
「武田家が来たならば」
「あ奴は選ぶ」
 そのだ、戦をだというのだ。
「間違いなくな」
「そうなりますか」
「だからじゃ」
 それでだというのだ。
「あ奴は下手をすれば死ぬ」
「そして命を賭けられてでも」
「武門の意地を見せるであろう」
「ですか」
「武田が相手じゃ」
 だからだとだ、信長は苦い顔で述べる。
「竹千代でも勝てぬわ」
「我等は」
「織田の兵は確かに弱い」
 このことは信長が最もよくわかっている、織田の兵の弱さは天下随一と言ってもいい程までのものである。  
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