戦国異伝
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第百六十六話 利休の茶室にてその八
「それでよい」
「ですか」
「御主はそのことについてどう思うか」
ここでだ。顕如は雑賀に顔を向けて彼に問うた。
「拙僧のこの考えについて」
「よいかと」
雑賀は顕如の問いにこう答えた。
「法主様のお考えで」
「民が主の考えでか」
「はい、やはり本願寺は民が第一です」
「そうじゃな。民なくして本願寺はない」
「だからこそです、それがしも民が安泰なら」
「それでよいな」
「戦なぞないに越したことはありません」
これもまた雑賀の考えだ、彼も戦は望むところではないのだ。
だからだ、織田家が天下を長きに渡って治めることが出来るのならというのだ、それも泰平でかつ栄えているのなら。
「そしてそのことは」
「本願寺の他の者もじゃな」
「どの方も同じかと」
「一向宗であるが故にじゃな」
「そうです、本願寺は民を救うものですから」
「しかしここはな」
高僧達のところに戻ったその時にだというのだ。
「あの者達の言葉も聞こう」
「それでは」
雑賀は顕如の言葉に頷きながら彼と共に本願寺の場に戻った、そして彼と直接対した信長はどうしたかというと。
茶室に残っていた、そのうえで利休に問うたのだった。
「どう思うか」
「顕如殿ですか」
「御主はどう思うか」
「流石に本願寺の法主だけはありますな」
利休は信長の問いに静かに答えた、そのうえで信長に対して再び茶を淹れてそれを差し出すのだった。
信長もその茶を受け取り口にする、そうして飲みつつ言うのだった。
「そうじゃな、資質だけでなくな」
「お心もまた」
「よいものじゃ」
「天下のこと、民のことは真に憂いておられます」
「そしてそれ故に戦うか」
「そうした方ですな」
「左様じゃな」
信長も顕如のその言葉に頷いて答える。
「あの者はな」
「しかし武家ではありませぬ故」
「わしの天下に疑念があるな」
「ですから。妙な戦のはじまりでしたが」
「どちらにしろじゃな」
「織田家と本願寺は争っておったかと」
「そうじゃな。そうなっておったな」
ここでまた頷く信長だった。
「織田家の天下の為にはな」
「本願寺とぶつかり、そして」
「あの者ともこうしてな」
「話され、そのうえで」
「わしの天下をもう一度考える必要があった」
そうだったというのだ。
「しかしじゃ。既にじゃ」
「その天下のことはですな」
「考えておる、ではじゃ」
「安土城が出来た時に」
その時にだというのだ。
「御主にも、そしてどの者達にも関わらせ作っておいたものをな」
「出しますな」
「そうする、安土においてな」
こう言うのだった。
「五郎左が上手くやっておるがな」
「安土の築城は」
「うむ、出来ればじゃ」
「その安土で」
「天下の政を示してじゃ」
そのうえでだというのだ。
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