美しき異形達
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第十二話 光の符号その二
「それで私もお寺のこと勉強してるのよ」
「尼さんになるの?将来」
菊は向日葵のその話を聞いて目を瞬かせて問い返した。
「そうなの?」
「あっ、そういうのじゃなくて」
「あれっ、けれどお寺のことを勉強してるって」
「違うの、お寺の女の子って将来お坊さんの奥さんになることが多いの」
「同業者同士だから?」
「そう、私も将来そうなるかも知れないから」
だからだというのだ。
「私も勉強してるの」
「ああ、そういう事情ね」
「お寺も神社もね」
そうした宗教関係は、というのだ。
「どうしても奥さんが必要なのよ」
「そうなのね」
「むしろ奥さんでもってるっていうか」
「お寺もなの」
「奥さんが土台なのよ」
この場合はただ寺や神社のことだけではない、信仰もそれに入る。
「まさにね」
「そんなに奥さんが大事なのね」
「うちのお母さんもそうで」
「お母さんを見て勉強してるのね」
「直接教えてもらうこともあるわ」
「そうして勉強してなの」
「そう、将来に備えてるの」
こう五人に話す向日葵だった、やはりかなり明るい顔で。
「今からね」
「将来なあ」
薊は向日葵の話を聞き終えてだ、腕を組んでこう言った。
「正直どうなるかわからねえな」
「私は探偵よ」
「私は家を継ぎます」
菊と桜はこう言った、二人の場合は既にだった。
「それと道場で人を教えてね」
「どなたかいい人を見つけて」
「私は大学で図書館の書士の資格を取るつもりよ」
菖蒲はクールに自分の将来設計を述べた。
「学校の先生、それと博物館の学芸員も」
「菖蒲ちゃんはそっちか」
「ええ・。八条学園に勤務出来たらね」
「このままこっちでか」
「暮らしたいわ」
こう語るのだった。
「出来ればだけれど」
「菖蒲ちゃんも考えてるんだな」
「僕は医学の道に進むつもりだよ」
智和も微笑んで己の将来への考えを話した。
「このままね」
「というか先輩はもうそれだろ」
薊はこう智和に返した。
「お医者さんしかないだろ、頭もいいから」
「よくそう言われるよ」
「他にも科学者とかよさそうだよな」
「理系だね」
「もうどう見ても先輩はそっちだからな」
典型的な理系であるというのだ、実際に彼は学園の中でも有名な理系の天才である。今から将来を期待されている程の。
「理系で研究者だろ」
「そうなりたいね」
智和自身も望んでいる道だった、理系への道は。
「文系も嫌いではないけれど」
「やっぱり先輩はな」
「うん、理系だね」
それ故にというのだ。
「そちらに進みたいね」
「そうしたらいいさ、けれどな」
薊は智和と話してからだった、あらためて言うことはというと。
「あたしなんてな、全然考えてないからな」
「私も。実家に戻るつもりはないけれど」
裕香も困った顔で言う、薊に顔を向けて。
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