久遠の神話
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第百五話 テューポーンその五
「魔の剣士は既に恐ろしいまでの力を備えたから」
「怪物を出すことは」
「私もしなくなったわ」
「セレネー女神もですか」
「だからね」
それ故に、というのだ。
「怪物もこれで最後よ」
「そうなんですね」
「ではいいわね」
「はい、最後の怪物とですね」
「闘い、そして」
そのうえでだとだ。スフィンクスは上城に告げた。
「勝ってもらうわ」
「わかりました」
「はじめるわよ」
スフィンクスは上城にこの言葉も言った。
「いいわね」
「今から」
「そう、何時でもいいって言ったわね」
「確かに」
「それならね。勝ってもらうわ」
「そうさせてもらいます」
確かな言葉で答えてだった、上城は。
スフィンクスが彼の前から歩いて去ったのを受けてテューポーンを見上げた。その大きさは確かに神話のそれ程大きくはない。
しかし百メートルはある、その巨大なしかも異形の姿を見てだ。
そうしてだ、樹里はそっと隣にいる聡美に尋ねた。
「あの」
「テューポーンはですね」
「相当な強さなのが」
「村山さんにもですか」
「はい、わかります」
怪訝な顔での言葉だった。
「これまで上城君が戦った怪物とは」
「全く違いますね」
「レベルが」
その強さが、というのだ。
「全く違いますね」
「そうです、本当に」
聡美もそうだと答えた。
「私ですら逃げた程ですから」
「銀月さんもですか」
「テューポーンが出た時戦われたのはゼウス父様だけです」
このことをだ、聡美も言うのだった。
「私も他の神々もです」
「どの神もですか」
「逃げました」
無論だ、聡美自身もだというのだ。
「そうしました」
「それだけの強さだからですね」
「上城君もです」
今対峙している彼もだというのだ。
「恐ろしい筈です」
「あの巨大さ、凄い姿に」
「発している気も」
「何かが違いますね」
これまでの怪物とは、というのだ。
「全く」
「そうです、ですから」
「逃げたいですよね」
上城も、というのだ。
「闘わない私もどうにも」
「私もです」
神話の時と同じくというのだ、樹里もまた。
「この恐ろしい強さの、何もかも破壊しようとする気は」
「それがですね」
「あの時と同じです」
テューポーンとはじめて会ったその時とだというのだ。
「全く」
「ではあのテューポーンは」
「違うのは大きさだけで」
「その強さはですね」
「全く同じです」
まさにというのだ。
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