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神器持ちの魔法使い

作者:リリック
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フェニックス
  第14話 ゲーム開始

もうすぐ日付が変わろうとする時間帯に学校の生徒会室を訪れていた。
ライザー・フェニックスとリアス・グレモリーのレーティングゲームの観戦のためだ。

生徒会室には自分の他に生徒会長ことソーナ・シトリーとその女王である森羅副会長がいる。

『まもなく試合開始十分前となります』

グレイフィアさんのアナウンスが流れた。

「来ヶ谷君。あなたはどちらが勝つと思いますか? 参考までに聞きたいのですが」

ふと、生徒会長がそんなことを言ってきた。

「試合の方ですか? それとも勝負の方で?」

「……どういうことですか」

眉をひそめる会長。
まあ、言ってもいいか。

「先日ロイドさん……フェニックス卿に問い詰めたんです。そしたら今回のゲームは数年前からグレモリー家水面下で進められてた計画なんだとか」

「……まさか」

「ええ。結婚を、なんて話はグレモリーさんをゲームに出させる嘘です。本来の目的はリアス・グレモリーとその眷属の実力アップのようです。……いささか身内びいきが行き過ぎてる感が否めないですけどね」

知らぬは本人だけ。
まあ、ライザーには本当の婚約者がいるし。
というか、よく引き受けたよ、今回の件を。

「要は出来レース。グレモリーさんは試合に勝って勝負に負けるといったところでしょうか」

十日あるとはいえ、そう簡単には実力が上がるなんて考えられない。
新しい眷属を集めるわけでも、コーチを呼んで鍛えるわけでもなく自身らで主に一誠やアーシアさんの能力アップに重点を置いての鍛錬をやっていたそうな。

「考えるところはあるでしょうが、一先ず観戦しましょう。得るものはあるでしょうから」

もうすぐ始まるだろうと思ったら突如扉をノックする音が聞こえた。

「失礼いたしますわ」

そして生徒会室に入ってきたのは公用のドレスを纏ったレイヴェルだった。

「彼女は確か……」

「レイヴェル・フェニックス。ライザーの妹です。レイヴェル、こちらソーナ・シトリ―さん。その隣が女王の森羅椿姫さん」

それぞれの挨拶をする三人。
挨拶が終わるなりレイヴェルは開いている隣の席に着いた。
別室で観戦しているであろうお偉いさんへのあいさつ回りが終わったのでやってきたようだ。

『それでは時間となりました。これより、リアス・グレモリー様とライザー・フェニックス様のレーティングゲームを開始いたします』

タイミングを計ったようにゲーム開始のアナウンスが流れた。


◇―――――――――◇


今回のステージは駒王学園を模ったところのようで、旧校舎側にグレモリー陣営、新校舎側にフェニックス陣営となっているようだ。
ゲーム開始からしばらく大きな動きが見れた。
罠を張り終えたグレモリー陣営が行動を開始した。

「小猫と一誠が体育館に、か」

「体育館には兵士三人と戦車一人が待ち構えてますね」

生徒会長の言うとおり、兵士のミラとイルとネル。
そして戦車の雪蘭がいる。
どうやら小猫が雪蘭を、一誠が三人を相手にするようだ。

「小猫はたぶん勝てるとは思うけど……一誠はどうかな?」

「そこまでなのですか?」

「まあ、見てたらわかると思いますよ」

映像には棍と二本のチェーンソーを避け続ける一誠の姿。
修行の成果なのか身のこなしが上達している。
余裕の笑みを浮かべる一誠、甘い、甘すぎる。

『んなっ!?』

「余裕かましてるから気付かない」

映像越しに叫ぶ一誠にぼやく。

「今の一体……」

「限りなく不可視に近い刃を魔力で造って斬った。要は棍が薙刀に変わった感じです。ミラはライザー眷属の中で最も魔力の扱いに長けているみたいです。ライザーの談です」

「才能だけで戦う悪魔が多い中、自身の弱さを自覚してひたすらに努力する子ですから。ミラは」

とはいえ、公式戦で上位ランカーには一度不意打ちできればいい方なんだけどな。

「小猫から聞いたり、ライザーの過去の試合とかで知っているはずだが……忘れてたな、あいつ」

「自身が実感できるくらいに成長しているのですから慢心が生まれたのでしょう。匙もそうでしたし」

そうこう言っているうちに戦況が動いた。
一誠が捨身上等で三人に接近し、ミラを跳び箱の要領で飛び越え、イルとネルに一撃を与えた。

『これで準備は整ったァ! いくぜ、俺の新必殺技! 洋服崩壊ドレス・ブレイクッ!』

「……はい?」

一誠がパチンと鳴らした瞬間だった。
突如三人の武器や衣服が弾け飛び、生まれたばかりの姿に……
そして映像からは三人から悲鳴が上がった。

「あ、秋人さまはダメです!」

「リアス、あなたの眷属は……」

「さすがにこれは……」

レイヴェルから思いっきり抱き寄せられ視界を塞がれた。
チラリと見えた会長と副会長は眉間に皺を寄せ、引き気味な様子だ。
女性からしてみれば悪夢だろう。
なにせ、人前でマッパにされるのだから。
確かに武装を剥がすのは有効な手段だろうか……これはひどい。
とりあえずは、

「一誠……後でシメる」

「来ヶ谷君、魔力が漏れてますよ」

おっとっと、それは失礼。
映像からは双子が俺の名前を叫ぶ声が聞こえたと思うと、

『ライザー・フェニックス様の「兵士」三名、リタイアを宣言』

流石に戦闘で衣服が何か所か散っていくことはあってもマッパにされることがなかったために羞恥に耐え切れずフィールドから退場した。
うん、普通はそうだろう。
裸の三人がいなくなったためレイヴェルから解放された俺。
羞恥のダメージは三人だけではなくレイヴェルも同様で、無意識にとった行動にあわあわ言いながら顔を赤くしている。

「……このゲーム終了後すぐにでも小猫を呼び戻そう。うん、そうしよう」

生徒会長は苦笑を漏らし、副生徒会長は首をかしげている。

「森羅さんは知りませんでしたっけ。小猫は契約のもと、一時的にグレモリーさんの眷属になっているに過ぎないんです。十分に仕事もこなして稼いで貢献したようですから」

「来ヶ谷君は人の身で悪魔の駒を持っているのですか?」

言い方を間違ったか?

「違います。小猫は元々リーゼルさん―――フェニックス卿の奥方の戦車なんですよ。小猫のことはフェニックス家から一任されてます。……一誠はもちろんなんですが、先日グレモリーさんは裸で一誠の自宅へと侵入したそうです。理由はどうであれ痴女呼ばわれされてもおかしくない。……変態のそばに置きたくないです」

一誠も一誠だがグレモリーさんも大概だろう。
個人的に引くレベルだ。

「他にもあります。ここら一帯をグレモリー領と言い張っているにもかかわらず、堕天使の侵入を許したこと。耳に入っているでしょ? 少し前に起こったこの件」

「ええまあ。アーシア・アルジェントさんの神器を抜き出そうとした堕天使レイレーナを初めとする堕天使四名とエクゾシスト二十弱が侵入した。不備があったとはいえリアスたちによって解決したでしょう?」

「そうなんですけどね。問題なのは発覚した際に自身だけで解決しようとしたこと。そっちに詳細を知らせたのも事後でしょ? ホウ・レン・ソウぐらいできてもいいんですけどね。協力を仰ぐぐらいしていたら殺されなくてよかった一般人がいたかもしれないのに」

フリード・セルゼンなどはぐれエクゾシストに殺された一般人は少なからずいて、報道もされた。
いまでは何らかの働きかけがなされたのか沈静化している。

「どちらにせよゲーム次第ですね。小猫の王に相応しいと感じたら小猫自身の意志で抜けるというまでこの件は保留ですね」

幼馴染の批判に近い言葉を聞いた生徒会長は何も言わず、難しい顔をしていた。 
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