魔法少女まどか☆マギカ ~If it were not for QB~
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零話
それは世界の終わりの日。瓦礫の敷き詰められた視界の中、漆黒の長髪に紫の瞳を細めた少女、暁美ほむらは巨大な悪と対峙していた。
何度も繰り返し敗北を重ねては時を戻しどうにか対策を練ってきた相手、最強の魔女ワルプルギスの夜。
鹿目まどかに固執して他の魔法少女の協力を仰がなかった反省から、今回は非情ながら三人の魔法少女を捨て駒に扱い体力を極限まで削って貰った。
しかし既に三人は倒れ瓦礫の中に死体を埋めている。
自分にも武器はもうほとんど残っていない、この魔女は不死身なのではないか。いや、まどかがこの魔女を滅ぼしたところを見ている。絶望的な末路が待っていたとはいえ、この魔女でも倒せることはわかっているのだ。
しかし、これだけの攻撃を加えて何故倒れようとしないのk……
「ほむらちゃんっ!!!!!」
無垢な声にほむらはびくっと猫のように振動する。鹿目まどか、桃色の髪と瞳をした、だれにでも優しいほむらの最高の友達……瓦礫のフィールドを乗り越えて、魔法少女でも何でもない彼女はやってきたのだ。
まどかがワルプルギスの夜に対して絡んだ世界はどれも絶望で終わっている。ほむらの顔は親友を失う恐怖でひきつった。
「私ね、決めたの……魔法少女になるって」
「まどか……どうして……」
「やっと決心してくれたんだね、鹿目まどか」
「キュゥべえ……っ!!!!!」
キュゥべえ、本名インキュベーター。全身が白い毛で覆われた、赤い瞳に大きな尻尾の小動物。第二次成長期にある少女達の願いを何でも叶える代わりに魔法少女として魔女と戦う使命を与える契約仲介者。
彼がどこから現れたか知らないが、この機会をずっと狙っていたのだろう。
「まどか……止めてぇ……」
「さあ、君の願いを聞かせてよ。どんな願いで、君はソウルジェムを輝かせるんだい?」
「……ほむらちゃん、前に言ったよね。ほむらちゃんの力で過去に戻ることが出来るって」
「え、ええ……」
「過去へのゲート、開いててくれるかな?」
契約の魔法陣がまどかの周囲に展開される。真剣な面もちのまどかに、ほむらは虚を突かれた様子で答え、過去へ戻るゲートを開いた。今ここで最も力無く弱いはずの彼女が最も落ち着いているこの状況にほむらは動揺を隠せないでいた。
「私の願い……それはキュゥべえ、いえこの地球に介入してきたインキュベーター全ての消滅」
「なっ……」
「そ、そんなこと出来るわけないだろう。しかもそれは君の偽善……」
「そうか……無駄よキュゥべえ、以前私が契約を止めるために貴方を殺した際、それでも契約が止まることはなかった……貴方が一旦契約を始めてしまえば貴方がどうなろうと契約は止まらない、契約至上の貴方の能力が仇になったわね」
「そんな、馬鹿な……何故だ、こんな願いが叶うわけが……これが鹿目まどかの潜在能力……」
白い悪魔は尻尾の先端、足の先から石化していく。今まで銃撃で蜂の巣にされても動じなかった彼が初めて狼狽した。恐らく殺されないと再生できないのだろう。キュゥべえ本体の生命が保たれたまま凍結すれば、彼とて抵抗は出来ない。
ほむらの姿が私服に戻る。周囲に倒れていた魔法少女達の服装も元に戻っていく。最初から契約を迫るインキュベーターが居なかったことにされたから、全てが無かったことにされているのだ。
「こんな事をして……言わなかったかい鹿目まどか、君達下等な人間に生きる術を与えてきたのは僕らインキュベーターだって事を。文明レベルを極限まで落として、裸で洞穴で暮らしながら生きるか死ぬかの狩りをしながら生きていきたいのかい??」
「人間はそんなに弱くないよ……貴方達なしでも、きっと強く生きていけるから」
「くっ、絶対に、そんな、事っ……」
時のゲートも次第に閉じていく。ほむらが開いたゲートはほむらの生死に関わらず開いていてくれるが、ほむらが魔法少女であった事実そのものも時の波に巻き込まれて消えかかっている為だった。
ワルプルギスの夜も消えていく。始元の魔女は魔法少女より生まれた。ならばその魔法少女の存在がかき消されれば魔女も生きてはいない。
「ほむらちゃん……幸せな世界で、待ってるからね」
「まどか……」
たった一人で、弱い未熟な少女はゲートをくぐる。
門の中でまどかは今まで繰り返してきた世界の記憶を脳に刻み込まれていた。最初の世界で自分が猫を助けるために魔法少女になったこと、ほむらが自分を救う為に魔法少女になったこと、他にも色々な世界が見える。
その奔流の中、まどかは光の注ぐ方へと吐き出されて……
魔法少女まどか☆マギカ
~If it were not for QB~
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