絶対の正義
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第十八章
第十八章
「今までの告白を。聞かれましたね!」
「はい、とても!」
「とんでもない奴だ!」
「貴様は屑だ!」
「この暴力教師!」
「地獄に落ちろ!」
同志達が一斉に吠えた。
「人間の屑!」
「成敗されろ!」
そしてネットにおいてもだ。書き込みが一気に白熱した。
『死ね!』
『くたばれ!』
『こんな屑見たことねえ!』
『もう住所も学校もわかってるからな!明日は俺が言ってやる!』
『目にもの見せてやるからな!』
宮崎への嫌悪、殺意、憎悪が爆発した。今の告白はまさに致命傷であった。
『おい、容赦する必要はないよな!』
『全くねえ!』
『抹殺してやる!』
所謂祭になった。まさに岩清水の思うがままであった。宮崎の運命はこれで決まった。
そしてここで古館が出て来た。といよりは学校側から無理矢理行かされたのだ。言うならば彼はこの時学校側から切り捨てられたのである。
「あの、何がどうなってるんですか?」
「皆さん!」
ここでまた騒いでみせた岩清水だった。
「今いじめっ子が来ました!」
「来たか、人間の屑!」
「ダニ、ゴミ!ガン!」
「社会の敵が!出て来たな!」
「教頭先生が一体何を」
最早呆然となり動かない宮崎を一瞥したうえで岩清水に問う。
「あの、そもそもですね」
約束が違うのではないかと言おうとした。しかし岩清水も同志達もそれを言わせなかった。
「さあ、自殺した彼に何をした!」
「何をした!」
「答えなさい!」
「言いなさい!」
忽ちのうちに全員で彼を取り囲んで問い詰める。ただし誰も暴力は振るわない。取り囲んでそのうえで問い詰めるだけであった。
「何をしました!」
「言いなさい!」
「言いなさい!」
「言えってそれは」
古館も抗議しようとする。しかしだった。
「言いなさい!」
「正直に言いなさい!」
「隠したら許さないぞ!」
「許さないぞ!」
他の教師達は一切出て来ない。生徒達はそれぞれの教室の窓から見ている。彼もまた誰が見ても明らかな劣勢の中に置かれてしまった。
そうしてだった。三十人はいるデモ隊に囲まれて。延々糾弾される。それで遂に言った。
「はい、やりました」
今の状況から少しでも早く逃げたかった。だからこそ彼は告白する道を選んだ。最早それしかなかったからである。
「私が彼をいじめていました」
「どうやってですか?」
「靴の中に画鋲を入れました。下駄箱にゴミを一杯入れました。教科書を落書きだらけにしてそれでゴミ箱に捨てたり机や椅子に接着剤を塗ってやったりもしました」
「まだあるか!」
「あるのか!」
デモ隊はさらに彼を問い詰めていく。
「どうなのだ!」
「答えなさい!」
「答えろ!」
「他にもやったのか!」
「は、はい。やりました」
真っ青になった顔でまた言うのだった。
「茶室の側の庭園で皆で箒やバットで殴ったり。鞄の中に鼠の死骸入れたり頭に火を点けたり」
「まだあるのか!」
「答えろ!」
「隠すな!」
「あれば言え!」
「隠すことは許されない!」
デモ隊はまだ許さない。糾弾をまだ続ける。
「あります」
今にも死にそうな顔でその糾弾に応える古館だった。
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