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魔法超特急リリカルヒカリアン

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無印編
  第六話


なのはとユーノがのぞみ達と接触してから数日後、二人は海鳴市の郊外にある車両基地に来ていた。

「これより、ここを『ジュエルシード緊急対策本部』とする。」

車両基地の事務所でひかり隊長が集まっていたヒカリアンに宣言した。

「今回のジュエルシード回収任務は余計な混乱を回避する為に極秘で行う。ゆえに、新幹線のような目立つ車両のヒカリアンはここに常駐出来ないが、在来線特急のネックスとソニックそれにサンダーバードが常駐する事となった。もちろん、何かあれば東京のJHR基地のヒカリアンも出動する。それと、今回協力してくれる二人も紹介しよう。」

ひかり隊長がそう言うと、なのはとユーノが前に出た。

「高町なのはです。よろしくお願いします。」

「ユーノ・スクライアです。」

「ジュエルシードを封印出来るのは彼らの使う魔法だけだ。ゆえに、ジュエルシードを見つけたら下手に触らず、彼らに連絡するようにして欲しい。」

「「「了解!!!」」」

こうして、本格的にJHRとなのは達の共同戦線がスタートした。




あの後、ジュエルシードの回収について一通りの手順が決まり、なのはは家に帰る所だった。
帰りはネックスに海鳴駅まで送ってもらう事になっている。ゆえに、現在彼女とユーノはネックスとテツユキ君、それにのぞみとつばさと一緒にネックスの車両が置いてある所まで向かっている所だった。
そんな中、ネックスがなのはに話しかけた。

「なあ、なのはちゃん。さっきから悲しそうな顔してるみてえだが、何かあったのか?」

「確かにそうだね。」

「何か悩んでるの?」

のぞみとつばさも気付いているようだった。

「良かったら、俺達に言ってくんねえか?解決出来るかどうかはわかんねえが、楽になるとは思うぜ。」

「ありがとうございます。実はあの子、フェイトちゃんの事で・・・」

「フェイト?」

「ブラッチャーと手を組んでた子の事だね。」

つばさが?を浮かべていると、テツユキ君が説明した。

「レイジングハートに映像を見せてもらったけど、強かったね。」

「まあ、前は負けちまったみてえだが、次は頑張りゃいいってよ!」

のぞみとネックスがそう言ってなのはを励まそうとする。だが、彼女の反応は・・・

「そう言う事じゃ無いんです。」

「「「「へ?」」」」

「負けたのは確かに悔しいですけど、それ以上に気になるんです。フェイトちゃんの事が。」

「ええと、つまりどう言う事?」

なのはの言葉の意味が分からず、つばさが尋ねた。

「あの子、多分悪い子じゃ無いと思うです。だって、真っ直ぐな目をしていましたから。」

「真っ直ぐな、目?」

「はい。でも、同時にとても寂しそうな目をしていました。使い魔の人やブラッチャーの三人が一緒に居たから一人ぼっちなんて事は無いハズなのに・・・でも、だからこそ知りたいんです。どうして、フェイトちゃんがジュエルシードを集めるのか。どうして、あんな寂しそうな瞳をしているのかを。」

自分の想いを言葉にし、訴えかけるなのは。そんな彼女にのぞみ達はと言うと・・・

「ねえ、テツユキ君。なのはちゃんって、テツユキ君よりも年下だよね?」

「うん。そのハズだけど・・・」

「何か凄い難しい事言ってるよ。」

集まって小声で話し合っていた。
その時・・・

「なるほど。話は分かった。」

突然、ひかり隊長が現れた。

「ひかり隊長!?」

「何でここに!?」

「いや。ただなのはちゃんにJHR用の通信機を渡すのを忘れていてな。」

のぞみ達が驚いていると、ひかり隊長はなのはに通信機を渡した。以前、テツユキ君も使っていたバッジタイプである。

「何かあったら、これで連絡してくれたまえ。」

「はい。ありがとうございます。」

「それと、あのフェイトと言う少女の件だが、もしまた戦う事になればブラッチャーの件は私達が引き受ける。だから、君は存分にあの子と話をつけてくるといい。」

「はい!」

「そんじゃ、なのはちゃん。そろそろお家の人が心配するから帰るぜ。」

「分かりました。では、また。」

そして、なのははネックスの車両に乗り込み、帰って行った。

「ひかり隊長。あの子にはああ言ってましたけど、大丈夫なんですか?」

「あのフェイトって言う子、凄く強かったですよ。」

ネックスが発車した後、のぞみとテツユキ君がひかり隊長に言った。

「彼女の決意は本物だ。無下にする事は出来ないさ。それに、相手が強いのなら特訓すればいい。もちろん、彼女も自分で特訓を始めるとは思うが、一人でやるのでは少し限界がある。そもそも、彼女には少し危うさがあるからな。」

「危うさ?」

ひかり隊長の発言にのぞみとテツユキ君は?を浮かべる。

「何でも無い。それより、私たちも運行に戻るぞ。」

そう言って、ひかり隊長は去って行った。




翌朝。早速ひかり隊長によるなのはの特訓が始まった。

「ほら!ペースが乱れて来たぞ!!」

「ひぃひぃ・・・」

戦いの基本は持久力つまりスタミナ。と言う訳で、現在なのはは持久力を鍛える為に走り込みをさせられていた。

「もう、限界・・・」

そして、そのままなのはは地面に倒れこむ。

「なのは!大丈夫!!」

すかさず、スポーツドリンクの入ったペットボトルを背負ったユーノが駆け寄った。

「隊長さん。もうこれくらいにしておきましょう。」

「そうですね。しかし、ここまで体力が無いとは・・・」

隣に立つなのはの父親、士郎に言われひかり隊長は特訓を切り上げる事にした。
なぜ、士郎がここに居るのか?それは、なのはが正式にJHRの協力者となったので、その事を家族に説明したからだ。もちろん、魔法の件も込みである。
なのはの家族達はなのはがやり通したいのなら止めたりはしないとの事なので、無事承諾を得る事が出来た。
また、以前テツユキ君がJHRの任務にかかりきりになったせいで学校の成績が落ちてしまった事があり、その際ヒカリアン達が家庭教師をしたのだが、やり過ぎてテツユキ君が倒れてしまったため、特訓には道場の主である士郎に立ち会ってもらっている。

「この後、魔法の方の特訓をしようと考えていたが、これでは無理そうだな。」

困った様子のひかり隊長。そんな彼にユーノが言った。

「魔法の訓練の方は、マルチタスクを利用して、普段から仮想訓練を行っているので、大丈夫だと思います。」

マルチタスクとは思考を複数に分割する魔導師のスキルで、これにより複数の魔法を同時に使用する事が可能なのである。

「だが、実際にやらなければ完全に身につけることは出来ないからな・・・仕方ない。特訓のメニューを朝に体力、放課後に魔法に変更しよう。」

「お願いします・・・」

地面の上で垂れたまま、ひかり隊長に頼むなのはであった。




あの後、士郎によるマッサージやらで何とか回復したなのはは、朝食を採った後、登校した訳だが・・・

「大丈夫なの、なのは?」

「にゃははは。大丈夫・・・じゃない。」

まだ、少し疲労が残っているようで、机の上で垂れていた。

「もう。一体どうしたのよ。昨日夜更かしでもした訳?」

「う〜ん。そう言う訳じゃ無いんだけど・・・」

ジュエルシードの件は基本的に秘密なので、どう説明するか悩むなのは。その時、すずかがなのはが胸に着けているバッジに気付いた。

「あれ?なのはちゃん、そのバッジって・・・」

「JHRのバッジよね。どうしたのよ、それ。」

アリサも、JHRバッジに気付く。

「こ、これはね!親戚の人がおみやげにくれたの!!」

「おみやげ?」

「そう!他にもJHRタオルとか、JHR饅頭とかもらったんだよ!!」

必死に誤魔化そうとするなのは。そんな彼女をアリサはかなり怪しんでいたが、何とか信じてもらう事に成功した。





放課後、習い事のあるアリサとすずかと別れたなのははユーノと合流し、ジュエルシードの捜索を行っていた。

『こちらスナイパーソニック。ジュエルシードらしき物は見当たらない。』

『こちらファイヤーネックス。こっちにも無えな。』

『こちらサンダーバード。全然見つからないよ。』

バッジによる通信越しに別の場所で捜索を行っている仲間達が伝えて来る。

「中々見つからないね。」

「とりあえず、一旦合流してもう一度探索ルートを検討しよう。」

ため息をつくなのはにユーノがそう進言し、五人は一度集まる事になった。




海鳴市にあるとあるビルの上。ここにフェイトとアルフそれにブラッチャーの三人が居た。

「ジュエルシードはこの辺りにあるみたいだけど、詳しい場所は解らないや。」

眼下の街を見下ろしながらフェイトが言った。

「まあ、こんなゴミゴミした場所じゃしょうがないねえ。」

「降りて探すにしても、結構大変そうだよ。」

アルフがため息をつくと、ドジラスも弱音を吐く。すると、フェイトが言った。

「ちょっと乱暴だけど、辺りに魔力流を流し込んで、強制発動させるよ。」

「でも、それって危ないんじゃないの?」

「バカもの!モタモタしていたらヒカリアンが来てしまうだろうが!!」

心配そうに言うウッカリーをブラックエクスプレスが叱咤する。

「それじゃあ、行くよ。」

「待って、それあたしがやるよ。」

そして、フェイトが魔力流を流し込もうとするが、それをアルフが止めた。

「いいの?結構疲れるよ。」

「あたしを誰の使い魔だとお思いで?任せてよ。」

アルフは自信満々に言った。

「うん、じゃあお願い。」

そうフェイトが頼むと、アルフは魔力流を街に打ち込んだ。




その頃、なのは達は集合し、地図を広げて新しい探索ルートを決めている途中だった。だが、なのはユーノが町に魔力流が打ち込まれた事に気付く。

「こんな街中で強制発動!?くっ、広域結界!間に合え!」

ユーノが慌てて結界を張り、街に被害が出ないようにした。もちろん、ヒカリアン三人も結界の中に入れてある。

「てやんでぇ!なんつぅめちゃくちゃな事をしやがんでぃ!!」

「一歩間違えたら、街は大パニックだぞ!!」

「許せないよ!!」

ネックス、ソニック、サンダーバードの三人はブラッチャーとフェイト達の行為にかなり怒っているようだ。

「なのはちゃん!ジュエルシードの場所は!!」

「あの先です!急ぎましょう!!」

ソニックに聞かれたなのははレイジングハートをセットアップし魔法少女に変身すると、ユーノとヒカリアン三人を引き連れてジュエルシードの下へ向かった。




なのは達とフェイト達がジュエルシードのある場所に辿り着いたのはほぼ同時だった。

「リリカルマジカル!」

「ジュエルシード、シリアル19」

「封!」

「印!」

そして、なのはとフェイトは同時に封印魔法を発動させ、ジュエルシードを封印する。

「やった!なのは、早く確保を・・・」

「そうはさせるかい!!」

ユーノが封印したジュエルシードの確保を促すが、アルフが襲い掛かってきて阻もうとする。しかし、ユーノが障壁を張ってそれを防いだ。

「行くぞ!ドジラス、ウッカリー!!」

「「ブラッチャー!!」」

だが、そこへブラッチャーも加わってくる。

「おっと。お前達の相手は・・・」

「俺たちでい!!」

「なのはちゃんは、早くジュエルシードを!!」

しかし、ソニック、ネックスそしてサンダーバードの三人が前に出た。

「分かりました!!」

そして、なのははフェイトにジュエルシードを賭けた戦いを挑むのであった。

「ふん。のぞみやひかりが居ないとは、俺様達も舐められたものだな。」

「そっちこそ、俺らが新幹線じゃねえからって舐めてんじゃねえぜ!!」

ブラックエクスプレスの発言にネックスが反論する。

「面白い。ならばやってみろ!!」

すると、ブラックエクスプレスは暗黒鉄球投げた。三人は散会して回避する。

「「そーれっ!!」」

さらに、ドジラスとウッカリーが背中の煙突型キャノン砲を展開。暗黒石炭を発射した。

「こんにゃろ!」

「うわあ!?」

ネックスとソニックは避ける事に成功したが、この中で最年少であるサンダーバードだけは食らってしまった。

「大丈夫か!サンダーバード!!」

「ケホケホッ。な、何とか・・・」

撒き散らされた煙に咳き込みながらも、そう答えるサンダーバード。

「まだまだ行くぞ!!」

ブラックエクスプレスが再び暗黒鉄球を振りかぶった。だが、次の瞬間・・・

「フェイトちゃん!!!」

なのはの叫び声がこの場にこだました。それを聞いたヒカリアン達はもちろん、ブラッチャーまでもが視線をなのはの方へと移す。

「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど。だけど、話さないと、言葉にしないと伝わらない事もきっとあるよ!」

なのはの意思の篭った言葉に、フェイトは動揺していた。

「ぶつかり合ったり、競い合うことは仕方が無いのかもしれない。でも、何もわからないままにぶつかり合うのは、私、嫌だ!!」

なのはは必死に呼びかけ続ける。

「私がジュエルシードを集めるのは、それがユーノ君の探し物だから。ジュエルシードを見つけたのはユーノ君で、ユーノ君は、それを元通りに集めなおさないといけないから。私はそのお手伝いで・・・だけど、お手伝いをするようになったのは偶然だけど、今は自分の意思でジュエルシードを集めてる。自分の暮らしてる街や、自分の周りの人達に危険が降りかかったら嫌だから!・・・これが!私の理由!!!」

「なのはちゃん・・・」

「くぅ〜!泣かせるじゃねえか!!」

「凄い。僕も、あんな風に立派にならなきゃ。」

彼女のその言葉は、ヒカリアン達の心を動かす。

「親分・・・」

「どうやら、フェイトちゃんのライバルは並々ならぬ覚悟で戦っているいようだ。」

さらに、ブラッチャーの心も動かした。フェイトもその言葉に心を動かされたのか、一度目を伏せた。そして・・・

「私は・・・」

自分の戦う理由を答えようとした時だった。

「フェイト!答えなくていい!!」

アルフがそれを遮ったのは。

「優しくしてくれた人達のとこで、ぬくぬく甘ったれて暮らしてるガキンチョになんか、何も教えなくていい!!私達の最優先事項は、ジュエルシードの捕獲だよ!!!」

それを聞いたフェイトはフェイトは、戸惑いながらもジュエルシードの元へ向かう。

「待って!」

なのはもそれを追った。そして、二人は同時にジュエルシードに向かってデバイスを突き出す。すると、デバイス同士とジュエルシードがぶつかり、デバイスにヒビが入ったかと思えば、ジュエルシードが凄まじい光を放った。

「「きゃあっ!?」」

それにより、二人は、後ろの方へと飛ばされる。

「まずい!」

それを見たユーノが叫んだ。そんな彼にサンダーバードが尋ねる。

「ユーノ!これはいったいどうなってるの!?」

「二人の魔力がぶつかったせいで、ジュエルシードが暴走しているんです!」

「「「「「「何だって!?」」」」」」

それを聞いたヒカリアンはもちろん、ブラッチャーも驚愕した。

「待て、ジュエルシードはちゃんと二人が封印したはずだぞ。」

「おそらく、封印魔法をぶつけ合ったせいで、封印が完全じゃなかったんでしょう。」

ソニックの質問にユーノはそう答えた。すると、今度はネックスが尋ねる。

「一体、これからどうなっちまうんでい!!」

「分かりません。ですが、此れ程の魔力が一気に解放されれば、最悪この辺り一帯が吹き飛んでしまう可能性も・・・」

「そんな!!」

「止める事は出来ないのか!?」

「僕には、どうする事も出来ません・・・」

サンダーバードとソニックの言葉に、ユーノはなのはとフェイトのデバイスを見ながら答えた。
両方とも、至近距離でジュエルシードの魔力を受けたせいか、あちこちがひび割れてしまっている。

「デバイスがあの状態じゃ、再び封印するのは・・・」

そう、ユーノが言った時だった。

「バルディッシュ。戻って。」

フェイトがバルディッシュを待機状態に戻し、発光するジュエルシードに向かって行ったのは。

「あの子、何をする積りだ!?」

ソニックが驚愕する中、なんとフェイトはジュエルシードをデバイス無しで無理矢理手で押さえ込もうとし始めたのだ。

「フェイト!ダメだ、危ない!」

アルフが止めるが、フェイトは構わずに続けた。

「止まれ…」

フェイトは魔法陣を展開し、必死に止めようとする。

「止まれ…止まれ…」

だが、ジュエルシードの放つ魔力は膨大で、それによりフェイトの手の皮膚が裂け血が吹き出る。その時…

「ぬおおおおおおおおお!!!」

ブラックエクスプレスがフェイトの手を自分の手で上から包み込んだ。

「ブラック!!」

「早くしろ、フェイトちゃん・・・」

「うん・・・!!!」

フェイトは必死にジュエルシードを抑え込む。そして、ついに光が収まった。

「やっと、終わったか・・・」

「うん。もう、大丈夫・・・」

そうブラックエクスプレスとフェイトが互いに言うと、二人は倒れてしまった。

「フェイト!!」

「「親分!!!」」

直様、アルフとドジラスとウッカリーが駆け寄った。

「だ、大丈夫なの!?」

サンダーバードが心配そうに声をかける。だが・・・

キッ!

「あ・・・」

アルフに睨まれて、それ以上言えなくなってしまった。

「ブラックの方は頼むよ。」

「「ブラッチャー!!」」

そして、アルフはフェイトを。ドジラスとウッカリーはブラックエクスプレスを抱えて飛び去って行き、なのは達はその様子をただ眺める事しか出来なかった。



続く
 
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