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久遠の神話

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第百四話 最後の戦いの前にその十

「今あの方と言いましたよね」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ、スフィンクスの方でも認めた。
「テューポーンのことをね」
「それはやっぱり」
「私の祖父にあたるからよ」
 オリジナルのスフィンクスのだというのだ。
「だからよ」
「それで、ですか」
「私はテューポーンとエキドナの間に生まれたオルトロスの娘よ」
 そのオルトロスとエキドナの間に生まれた娘である。近親婚になるがこうしたことはギリシア神話では神々の間でもあることだ。もっと言えばテューポーンとエキドナは異形の姿をした荒ぶる神々と言うべき存在だ。
「だからよ」
「それで、ですね」
「ええ、エキドナは私の祖母であり母であるわ」 
 この辺りの血縁が複雑である。
「そうなるわ」
「だからですね」
「そう、あの方と呼んだのよ」
 敬意を祓って、というのだ。
「そうしたのよ」
「そうなのですね」
「それであの方のお力はあまりにも強くて」
 それ故にというのだ。
「明日までかかるのよ」
「だからですか」
「明日の正午」
「日曜のですね」
「場所は山よ」
「六甲山ですか」
「そこで闘ってもらうわ」
 場所もだ、スフィンクスは上城に話した。
「明日の正午ね」
「わかりました、ではそこで」
「勝つことを願っているわ」
 確かな声で言ったスフィンクスだった、このこともまた。
「貴方がね」
「前から思っていましたけれど」
 樹里が怪訝な顔でだ、スフィンクスに言ってきた。
「あの、貴方は上城君に」
「残って欲しいわ」
 最後の一人にだとだ、スフィンクスは樹里のその言葉に答えた。
「そしてこの戦いを終わらせて欲しいわ」
「そう思われているんですか」
「そうよ、ただそれだけの力をつける為にも」
「その為にもですね」
「彼には明日、最後の怪物と闘ってもらうわ」
 テューポーンにだというのだ。
「そのうえで最後の戦いにも、剣士の」
「加藤さんとの」
「そう、だからね」
 それ故にというのだ。
「明日もね」
「わかりました、じゃあ」
「はっきりと言わせてもらうわ」
 スフィンクスの言葉は真剣なものだった。
「あの方は強いわ」
「荒ぶる神の中でも」
「最強よ」
 まさにというのだ。
「私よりも遥かにね」
「それこそゼウス神に匹敵しますね」
「殆どの神々が適わなかったわ」
 テューポーンが出て来た時オリンポスの神々は丁度宴を楽しんでいた。しかし彼が出て来て誰もが逃げたのだ。
「動物に姿を変えてまでしてね」
「川を泳いだりして、でしたね」
「そう、そうまでしてね」
「オリンポスの神々でさえも」
「逃げた程の方だから」
 ゼウスは天空の、オリンポスの主として残って戦ったのである。彼にしても意地がありそうしたのである。 
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