戦国異伝
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第百六十五話 両雄の会同その十一
「それはならん」
「そうですな、しかし」
「あの目はそうしたことをする目ではない」
今も顕如の目を見て言うのだった。
「決してな」
「ではあの時のことは」
「わからぬ、だがあの者が命じたことではない」
「他の者達は」
その顕如の周りにいる高僧達はというと。
「どうやら」
「そうしたことはせぬな」
「ではあのことは」
「少し調べなおすか」
「誰がやったのかをですか」
「うむ、そうしようか」
こう言うのだった。
「そう思うがどうじゃ」
「確かに。怪し過ぎますな」
「本願寺がしたことではない様に思えてきました」
九鬼だけでもない、他の者達もこう言うのだった。
「ですからここは」
「それがよいですな」
「そうじゃな、それで何もわからぬかも知れぬが」
それでもだというのだ。
「飛騨者達に調べさせてみるか」
「あの者達にですか」
「そうさせますか」
「あの者達は普通の忍ではない」
果心居士に育てられその術を授けられた者達だ、忍といってもその使う術は尋常なものではないのである。
「それはな」
「それでしたら出来ればですが」
ここで平手が信長に己の考えを言ってきた。
「飛騨者達も何かと必要です」
「そこに送れぬか」
「はい、ですからあくまで出来ればですが」
「その師をか」
「今何処におるかさえわかりませぬが」
それでもだというのだ。
「果心居士殿に」
「ふむ。おればよいがのう」
「はい、あくまで出来ればですが」
平手にしても多く言わない、あくまで望みを言うのみだった。
「あの御仁に」
「仙人とも妖術使いとも言われておるな」
果心居士の素性は誰も知らない、その飛騨者達もだ。齢も幾つかわからず飛騨者達と別れた今その行方も知れないのだ。
だからだ、信長も言うのだった。
「あくまで会えればじゃな」
「はい、探しますか」
「そうじゃな、触れ書きを出すとしよう」
「都に堺、あとは奈良にも」
「岐阜等にもな」
織田家の領内の人の多い場には何処にもだ、触れ書きを出すというのだ。
「そうしようぞ」
「それでは」
「本人が見ていればよいがな」
「都にいるいう噂もありますな」
「あくまで噂じゃ」
その行方はあくまでわからないというのだ。
「おるかどうかはな」
「どうしても」
わからないとだ、平手も言う。
「確かなことは言えませぬ」
「しかし考れてみれば飛騨者は回しにくい」
彼等も必要だからだ、急がなくてもいいと思われることにはだった。
「その方がよいな」
「さすれば」
こう話してだった、顕如を見つつ色々と思う彼等だった。そして能も全て終わってからだった。信長は周りに言った。
「茶の席を用意せよ」
「茶をですか」
「そうじゃ、それをじゃ」
こう言うのだった。
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