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「メ」から始まる異世界日記

作者:夢兆歌
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君の名前

 
前書き
粘土質の深い闇だった。もがいてももがいても浮き上がる気配はなく、そのうちに自分はどこにいるのかわからなくなった。右も左も。上も下も。前も後ろも。自分自身も。
深く、深く埋もれてゆく。まるで底なし沼にはまったかのように。 

 
学校も終わり、みんな話したりしている横を俺とハルキは走る。俺のギルド、ダイヤモンドハーバーへ向かって。


「お~? コウ! 昨日は大変だっ…た…ね?」
「さっさと奥にいってしましましたね」
一方、ハルキはというと
「おっす! ミドリちゃん今日もカワイいね! おやっ! そこにいるのはティラミスさんでは! 相変わらず美しい!!」
「あ…ありがとー…あはは…」
「あら? コウとご一緒じゃないのですか?」
「おいっ! ハルキ!! くるのか!? こないのか!?」
いちいち挨拶してやがる…こっちは余裕がないんでねっ!! 悪いけど急いでもらうよ!
「待てよコウ! そんなに焦らなくてもさぁ~? あ…この女の子?」
「…」
「おぉ…たしかに…美人さんだ… あ、おれはハルキっつんだ! 少しだけお話ししてくれるか…」
「だれ?」
ギルドの奥にある個室の1つが彼女にあてがわれた。ベッドに座ってこちらを見てくれた。
昨日はだいぶパニクってたからよくは見てないけどなんだか感情の欠落したような、なんか不思議な目だ。あれ? これは俺たちを見てるのかな? なんか視線があわない気がするんだけど… 奥のほうでも見てるのかな? ちょっとトラウマだな…
「だれ?」
「また、だれ? って言ってるぞコウ?」
「言われなくてもわかってる」
そこで少し深呼吸して、
「お…おれはコウって言うんだ。よろしくな?」
「だれ?」
「いや…だからコウって言うん…」
「だれ?」
「え? いや…だかぁあ!?」
思いっきりハルキに個室のそとに引っ張り出され、
「あの女の子…大丈夫か?」
「はぁ? ケガとかしてな…」
「ばか! 記憶とかだよ…精神面っつーの?」
「あ…たしかに…」
とそのときチャラい着信音が鳴り響き、
「お!? や…やべぇ!? うちの大将がブチ切れてる!? わ…わりぃ、コウ! ギルドいかねぇと! んじゃな!! あ、ミドリちゃんとティラミスさんもまたな!」
まぁ~いちいち丁寧な奴だなぁ…しかもバタバタうるさいし…てか…
「やっぱりサボってやがったか…にしても精神面か…考えてなかったな…」
よく考えてみると俺もトラウマなのに彼女に衝撃がきてないわけないよな。悔しいがハルキにはあとでなんか奢ってやろう。とか思ってると、
「だれ?」
「あ…えっと…誰に向かって言ってるのか…指さしてもらえるかな?」
彼女が指した方向は…俺…の…うしろ!?
「お、かわいいじゃん? なに? コウが連れ込んだの?」
「なんだお前かよ!!」
「なんだとはなんだヘタレ!!」
グサッと心に刺さるお言葉。
こいつはギルドNo.1の遊び人のロミオ。世間一般で言うイケメンなんだろうけどいちいちキザでムカつく。こいつの魔法は銃精。おれの魔法の銃バージョンだ。こいつの能力は感知。こいつの感知の場合は主に人間とか生きてる奴らの場所を感知できる。他の奴には水のある場所を感知したりすることもできる。 
「女の子はなぁ…」
「あ・と・で! ご教授いただきます! あ・と・で!!」
「はぁ…つまんねぇの…」
と、あの野太い声が
「おい! ロミオ!! てめぇまたお偉方の娘さんに手ぇだしただろ! 俺が怒られんだよ!!」
かわいそうにマスター。同情するよ今だけは。
「おらさっさとそのうわっつらだけで良いから謝って来いよ…てか何回目だよ…」
「はぁ…仕方ねぇ…ちょっくら行ってくるわ…あ、その女の子」
「断る!!」
「へいへい…ごゆっくり~」
やっと人払いできたよまったく!! それより本題だよ本題。
「えっと…名前、聞いて良いかな?」
「だれ?」
「指さして?」
指をさしたのは自分自身だった。
「Oh…マジですか… ん~…あ、なんで昨日はあそこにいたのかな?」
「どこ?」
疑問詞ばっかじゃねぇか…whなんとかの英語やってるわけじゃないだろうな…まったく…
「昨日の暗い洞窟のことだよ? どうしていたのかな?」
「わからない」
「そ…そっか…あ、お父さんとかお母さんは?」
「あなた、泣いてる?」
「はぁ!?」
「心が泣いてる。そう感じる」
そりゃ泣きますよ! コミュニケーションとれないんですもん!!
え!? なんでわかった!?
「あなたは優しい。そう感じる」
「んなっ!?」
たぶん、顔真っ赤だよ今の俺!?
「名前。」
「え? な…なに?」
「探して?」
「は???」
「名前、探して?」
「…き…君の?」
コクン
な…名前を…探す…とは?? い…意味わかんねぇ…
「…?」
かわいく小首傾げられましてもねぇ!?
名前をつけろって意味なのか??
「す…すこしまっててね?」
コクン
それからしばらくの静寂。そして、俺のネーミングセンスがひかる!
「そうだ! 月子はどう?」
ほんとに月みたいな雰囲気だし
「…」
反応がない。だめみたいだ。くそう、チワさんなら良い名前をつけてくれそうな気がする。すると、
「あかり、は? あかりちゃんはどう?」
この声は! チワさんナイスタイミング!!
コクン
チワさんまじスゲーーーー!!!
「あ…ありがとうございますチワさん! ナイスタイミングです!」
「は? コウが呼んだんでしょ?」
「は? 呼んでない…ですよ? たしかに心の中でチワさんがいてくれたら、と思いましたけど…」
「コウ、困ってた。だから呼んだ」
「あかりちゃんが? でもコウの声だったよ?」
え!? てことは…あの時の悲鳴は…?
「あかりちゃん? きみは…人の声を誰かに届けることができるのか!?」
「わかんない」
たぶん…いや、絶対そうだ。あの洞窟から聞こえたと俺が思った声はあかりちゃんが届けたんだ。
いや…まてよ…? だとすると…でもあの洞窟にはあの男と…男が化けてたとおぼしきおばさんだけしかいなかったような…まさか…もう1人いたのか!?
悩む俺をあかりちゃんがのぞき込んだ。
「コウ…?」
「ん? あぁ、なんでもない。それより、あかりって呼んで良いかな?」
コクン
「ありがとう。これからよろしくな? あかり」
「よろしく」
これでひとまずは大丈夫だ。名前も決まったし、でもなんであそこにいたのかがわからない以上またあのメン洞窟にいくことになりそうだ。いや、なる。
とりあえず、今日の晩飯は幾分かおいしく食べられそうだ。 
 

 
後書き
ご指摘が多いですね。大変ありがたいやら恥ずかしいやら。とにかく、どうだったでしょうか? また感想やご指摘よろしくお願いします。
本編も登場人物を増やしていってる最中です。かくのって楽しいですね~!(藪から棒に)
みなさんの声をじかに聞けるっていうのが大きいです。これからもよりよくしていこうと思っておりますので、末永くお付き合い頂けるとありがたいです!
ではでは! 
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