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久遠の神話

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第百四話 最後の戦いの前にその三

「それは言っておく」
「水の剣士については」
「戦えばそれでいい」
 あくまでだ、そうした相手に過ぎないというのだ。上城にしても。
「憎くとも何ともない」
「そうなのね」
「そうだ、俺はあの少年は嫌いではない」
「かといってもなのね」
「好きでもない」
 つまりだ、そうした感情の対象ではないというのだ。
「戦いたい相手だ」
「それだけの相手なのね」
「だからだ、この戦いもだ」
「あくまで楽しむものなのね」
「それ以外のものではない」
 またこう答えた加藤だった、女神達に。
「それは言っておく」
「わかったわ。では」
「また俺の前に出て来るのだな」
「必要があればね。それは嫌かしら」
「構わない」
 特にいいという口調だった。
「好きにしろ。拒まない」
「そうなのね」
「ではな」
「ええ、ではね」
 こう話してだ、そしてだった。
 女神達は加藤と別れた、加藤はそのまま夜の街に消えて飲みに行った。そうしてだった。
 智子はだ、豊香に顔を向けてこう言った。彼の姿を見送ってから。
「彼の考えはわかったわ」
「あくまで、ですね」
「ええ、戦うつもりよ」
「やはり魔の剣士は」
「戦うことが生きがいよ」
 そうした男だというのだ、加藤は。
「純粋にね」
「そうですね、では」
「私達はね」
「戦いの成り行きを見守り」
「そしてお姉様を」 
 セレネー、彼女をだというのだ。
「お止めすることよ」
「若しも水の剣士が戦いを終わらせることを願えば」
 上城が生き残りその願いを言った時はというのだ。
「その時お姉様は」
「お姉様は心を囚われているわ」
 エンディミオンと共に永遠に生きたい、その想いにというのだ。
「だから」
「戦いが終わることは」
「若し力が集まっていればいいわ」
 その時はというのだ。
「お姉様に戦いを続ける理由はないわ」
「ですからその時はですね」
「お姉様は戦いを終えることに同意されるわ」
「けれど若しそうでなければ」
「終わらせられないわ」
 上城の願い、それを認めないというのだ。
「何としてもね」
「そうですか、では」
「その時は。わかるわね」
「はい」
 確かな顔でだ、豊香は姉のその言葉に頷いて答えた。
「私達がお姉様を」
「止めるしかありませんね」
「私達でね」
 自分と豊香、そして今はこの場にいないが聡美も含めて三人でだとだ。智子は真摯な顔で豊香に答えた。
「そうするしかないわ」
「その為に私達はこの国に来ましたし」
「尚更ね」
「是非その時はお姉様をお止めしましょう」
「強いわ、あの方は」
 声の主であるセレネーはというのだ。
「私達三人が戦っても」
「勝てるでしょうか」
「勝つしかないわ、いえ」
「お止めするしかですね」
「さもないとあの方はさらに罪を続けるわ」
 だからこそ、というのだ。 
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