普通だった少年の憑依&転移転生物語
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ゼロ魔編
003 修行? いや、魔改造
SIDE 平賀 才人
「95…96…97…98…99…100! はぁっ、はぁっ、はぁっ……後1セットか」
平賀 才人──俺の朝は早い。その理由は、来るべき日の為に身体を鍛えているからだ。……こなす数が少ない? ……案ずるな(?)“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”で体重に倍加を掛けて、身体に倍の負荷を掛けている。……まだ1回の倍加──2倍が良いところだが。
「ふぅ~、基礎訓練はこれで終了っと。……次は〝雷〟の力だな。……100V…200V…300V……1000V…1100V…1200V…1300V……10000V…11000V…12000V…13000V……10万V…11万V…12万V…13万V…14万V…15万V…16万V──くっ!」
――バチチチチチチチッ!!
自身で生み出す雷を抑え切れなくなって、周りに放電する。……因みに、現在俺が居る場所は〝人間が居なくて、人間が安全に存在出来る〟可能性の世界。……そんな世界だから〝人的〟な被害はとりあえず無い。
「……うん、昨日より増えているな。最大電圧。……最初のころは1000Vが良いところだったのに。……はぁ、何やってるんだろう、俺」
平賀 才人。10歳の冬。部活に入るでもなく、友達と遊ぶでもなく、異世界に飛ばされていきなり死ぬのは嫌なので、修行尽くしと云う青春を送っている。……勿論、両親達には内緒で。
<だったら、話相手になってやろうか?>
途端、俺の左手に緑色の宝玉が埋められた紅蓮の様に赤い籠手が現れる。そして、その赤い籠手から声が聞こえてくる。……“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”。
……因みに、俺に喋り掛けてきたのは“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”に封じられた二天龍の片割れ、≪赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)≫のドライグ。……今年の秋頃から意識が覚醒している。
「お前が話したいだけなんじゃ……」
<そうとも言うな。ははは>
……気になることがあるとすれば、何故かやたらとドライグがフレンドリーであると云うことか。
(ドライグがこんなフランクなった理由は、多分俺の所為なんだよなぁ……)
ドライグに精神世界に呼ばれた際、歴代所有者の怨念が『白龍皇が憎い』とか、『〝覇〟を求めろ』とかグチグチグチグチ鬱陶し過ぎたので、纏めて“ニフラム”で昇天させた。……恐らくそれが良くなかったのだろう。ついでにドライグも〝少々〟浄化されてしまった。
……勿論、そのまま昇天させるだけでは勿体無かったので、“弓矢に選ばれし経験者達”……他者の経験値を奪うスキルで歴代所有者たちから経験値を奪う事も忘れていない。
(……ま、いっか)
一応、ドライグには俺が転生者で、この世界がドライグが居た世界とは異なる世界であって、恐らくだがこの世界にアルビオンが居ないことも話してある。……まぁ、ドライグは少し寂しそうな声音で空元気を出していたのが気になったが。
「……悪いな、ドライグ」
<相棒、いきなりどうしたんだ?>
「何でもないさ」
<ははは、変な相棒だな>
ドライグの朗らかな笑い声で、少し──僅かばかり残っている良心が痛む。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「苦節3年。やっと〝アレ〟を倒せる様になった」
この3年の訓練で、漸く〝雷〟の力が1億Vの大台に乗ったのでかねてより欲していた、とある世界にチートアイテムを入手しに往く。
「往く世界の設定は〝誰も登ったことの無い、ジュデッカ──もとい、アギトの塔の頂上〟でいいか。……“腑罪証明”」
SIDE END
SIDE OTHER
「……でけぇ……」
才人は目の前に聳える緑色のナニかを見て、一言そうやって呟くことしか出来なかった。……それもそうだろう、その緑色のナニかは才人の視界の8割以上を占領しているのだから。
見上げても緑緑緑緑緑。緑一色。緑黄色野菜も真っ青な緑。その緑色のナニかは──スペースモルボルは、根元からおびただしい程の数の触手を生やしていて、その触手を時折ワシャワシャと動かしていて、見る者全てに嫌悪感を抱かせるような容貌をしている。
「まだバレて無いみたいだな。こんな事もあろうかと、“インビジ”を掛けておいてよかったな」
<……相棒は不思議な魔法を使えるよな>
「まぁな……さぁ、いくか」
<応っ!>
『Boost!』
――バチッ…バチッ…バチッ
才人の手に顕現する“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”。機械的な音声と共に才人の〝雷〟の力が倍加され、才人の身体からスパークが溢れ出す。
『Boost!』
『Boost!』
『Boost!』
「ドライグ、もう十分だ」
“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”の能力は10秒毎に自分の力を倍加させていく〝倍加〟の能力と、〝倍加〟した力を他者や他の物に渡すことが出来る〝譲渡〟の力がある。
才人が4回の倍加──16倍で止めたのは……
「1000万V……“トールハンマー”! ていっ」
――ズシャァァァァァァァァァアアアン!!!
<GISYAAAAAAAAAAAAA!!!>
……倍加を止めたのは、10000000×16=160000000──1億6000万Vもの雷を落とされれば大概の生物は息絶えるからだ。
……かくして、スペースモルボルは誰に殺されたかも判らぬまま、どこか抜けている掛け声と共に降り下ろされた雷神の槌がごとき降雷によってその生命を散らされ、それこそ文字通りに消し炭になるだけだった。
「あの宝箱に……」
スペースモルボルの死体が透ける様に消えると、1つの宝箱と塔の入り口に戻る為のものだろうワープサークルが現れた。
「おお……こんな感じになっていたんだ。……“アギトの証”」
才人は宝箱に入っていた神々しいオーラを放つブレスレットを〝倉庫〟──“王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”に突っ込みながら呟く。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE 平賀 才人
“アギトの証”を手にいれて2年──15歳になった俺には悩みが有った。
この2年の月日で手札を増やした。“弓矢に選ばれし経験者達”のスキルで、歴代所有者達の経験値から仙術や魔術、武術、氣を扱う方法なども修得したし、後は【ONE PIECE】の覇気や六式なんかも“答えを出す者”で効率の良い習得方法の〝答え〟をだして、どうにか修得した。
そして、神器面では“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”を始めとした“魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)”に“絶霧(ディメンション・ロスト)”などもある程度は使いこなせる様になった。……〝神器(セイクリッド・ギア)〟の極致である〝禁手〟には1つも至っていないが。
(参ったな。……出来る事が無くなった)
<相棒、そんな手持ちぶさたな顔をして一体どうしたんだ?>
ドライグの問いは俺の悩みの正鵠を射ている。
「お前は俺の心でも読めるのか? お前の言う通り、確かに手持ちぶさただよ」
<何年相棒を見てきたと思う? ……暇だったら、〝精神世界〟に来て俺と久しぶりに模擬戦でもするか?>
「……だな。……“腑罪証明”」
どうでも良いことだが、“腑罪証明”を使う時、毎回目を瞑ってしまう。
閑話休題。
「……それじゃあ、逝こうか。ドライグ、ついて来いよ? 俺を見失うなよ?」
<ククク、それは一体誰に物を言ってるんだ? 全盛期より力は落ちようが、俺はこれでも3勢力の戦争を引っ掻き回した天龍の片割れ。たまたま〝力〟を得ただけの15かそこらのガキが、俺に楯突こうなど片腹痛い。相棒程度の実力者なら、そこそこ居た事を思い知らせてやる!>
「哈ァァァァァァッ!」
俺は一気呵成にドライグへと突っ込んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ん……ここは?」
微睡みに沈んでいた意識を浮上させる。
「俺は確かドライグと模擬戦して──ドライグに負けたんだったな」
俺が目を覚まして一番最初に見た物は、平賀 才人として5年間暮らしていて、随分と見慣れた天井だった。
「ドライグ、俺はどれくらい寝ていた?」
<ふむ、大体3時間程度だな>
「そうか。……その内、また模擬戦頼んでいいか?」
(……俺が思い上がらないようにな……)
<ふっ、良いだろう。その内〝白いの〟と出会うかもしれないし、ドラゴンは〝力〟を引き寄せるしな>
「……了解」
(……確かにドラゴンは厄介事を引き寄せるだろうな。あと〝女〟も。……中学に上がって、女子からの告白が爆発的に増えて男子から嫉妬の視線がやたらと突き刺さるんだよな。……まぁ、そのお陰様で色々と良い思いはさせてもらっているが)
転生して精神年齢が30近くなったとしても、身体は15歳とバリバリの思春期。ツラい事もあるのだ。……勿論、性的な意味で。
SIDE END
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