鎮守府にガンダム(擬き)が配備されました。
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第1部
第2話 我、入国ス
前書き
今回は短めです。
それでもよければどうぞm(_ _)m
艦これの扶桑か山城で言ったら、両方取りますね。
まぁ比叡とか五十鈴とか加賀さんとかも大好きですけどね。
あと飛龍、彼女は外せない。今だに加賀さんと並んで艦隊の一翼を担ってます。
ヘイズルシリーズの新作HGUCで出ないかなぁ…無理だよなぁ…。
ウーンドウォートとかジムスナイパーⅢとか欲しいけど、スクラッチする程の技術無いし…。
グスタフ・カールも欲しいなぁ…
8月10日 太平洋 鎮守府正面海域
戦艦扶桑 艦内
医務室
懐かしい匂いがする。
とても懐かしい、暖かい温もりに包まれながら、そんな事をぼんやりと考える。
目の前は真っ暗で、まるで宇宙に放り出された様に感じられる。
それでも、言いようの無い安心感に身を任せ、深く、深く、沈んでいく。
(この感じ…は……)
そして完全に意識を手放し…
「…ぅぶおッ⁉︎」
…掛けて意識が覚醒した。
息が出来ずにもがき苦しむが、〝何か柔らかいモノ〟にがっちり固定されて身動き出来ない。
…というか顔に当たってる2つの柔らかいモノの所為で息がヤバい。
「やっと起きたのね一葉ちゃんッ‼︎ ずっと呼んでたのにッ‼︎」
「えっ、ちょ、ちょま…」
「一葉ちゃんったら、あのロボットから降りてくるなり「眠いから医務室借りる」、って先に行っちゃうから、他のお仲間さん達が困ってたのよ?
でも、一葉ちゃん達のおかげで私は轟沈せずに済んだから、其処には凄く感謝してるのよ。
でもね一葉ちゃん、一葉ちゃんが死んでからこの1年間、すっごく淋しかったのよ?
駆逐艦の子達なんて何日も何日も泣いてて、出撃どころの状態じゃなかったのよ? わかる?」
「ちょ………ま”……………」
「ああッ、でも許してあげるッ‼︎ ちゃんと私達…いえ、私の処に帰って来たんだからッ‼︎
私を護る為に敵艦隊を次々撃破して行く一葉ちゃんはとってもかっこよかったわッ‼︎」
「…………っ………………」
ボロボロに破れたあられもない服で抱きついている扶桑に、必死に生命の危機を伝えようともがき苦しむが、相手は腐っても戦艦。
艦霊の筋力も見た目とは裏腹に超弩級だった。
それからかれこれやっとの思いで意思が通じたのか、拘束から解除されたのは、それから1時間後だった。
◉◉◉
日本帝国 鹿島 PM20:12
第1024鎮守府埠頭
一葉が生きていた。
大破しながらも奇跡的に帰還の途に就いた扶桑からの無線通信に、鎮守府内が一気に混乱した。
何故扶桑は単艦にもかかわらず、敵艦隊をやり過ごせたのか?
何故今になって一葉が現れたのか?
扶桑を救ったという艦隊の正体は? その目的は?
艦娘の中には、深海棲艦の罠ではないか、という疑惑の声も上がってきた。
提督である俺は悩みに悩んだ末、扶桑と、扶桑を救ったという艦隊に、鎮守府への入港を許可した。
とはいえ、鎮守府内の艦艇を含めたあらゆる砲が向けられている状態ではあるが…。
「提督、本当に大丈夫なのか?」
「20隻の艦隊で見張ってるんだ。
深海棲艦だったとしても、これだけの艦艇を相手に3隻で何が出来る?
それに加えて、加賀の率いる空母艦隊の艦載機が待機してる」
「…そうだが……しかし………」
「心配するな、わざわざ休養中の〝殿下〟に無理を言って、直筆の誓約書を用意して頂いたし、先程書類も賜った。
もし扶桑の言う通り外国の艦隊だった時の為に、会談と歓迎の用意を〝間宮〟と鳳翔が進めてる」
心配性な我が鎮守府の総旗艦、戦艦長門が不安そうに鎮守府の内港から外洋へ通づる入口を見据えていた。
そんな旗艦をなだめながら、扶桑の艦体の入渠準備の為に其処彼処を走り回る小さな妖精達を眺めた。
誘導妖精や工廠妖精、更には装備妖精など、鎮守府で手の空いている妖精達がどんどん集まって来て、資材を用意したり手順を確認したりと忙しそうに走り回っている。
「提督ッ‼︎ 扶桑さんが到着しましたッ‼︎
件の艦隊に曳航されている模様ッ‼︎」
哨戒機を出していた軽空母の飛鷹が走って来て報告してくれた。
それと同時に、鎮守府のすぐ近くにある小島の影から、鎮守府内港を照らし出す扶桑の探照灯の強い光と、空を飛行する巨大な艦艇が3隻、衝突回避用の照明と思しき赤や緑のライトを点滅させながらやって来た。
「長門、全艦艇に通達しろッ‼︎
予定通り〝客人〟を出迎える、とな‼︎
発砲は攻撃を受けた時のみ許可するッ‼︎
それまでは待機だ、迂闊な行動は取るなと厳命しろッ‼︎」
「了解したッ‼︎」
「飛鷹は引き続き哨戒を続けろッ‼︎」
「了解ッ‼︎」
走り去る2人を見据えながら、迫り来る謎の艦艇を見上げる。
何時もの様にポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
その火をつけたタバコに、ポッ…と水滴が1粒。
「雨…か……」
ポツポツと降り始めた小雨に、鎮守府が濡らされて行く。
「…さて、鬼が出るか仏が出るか……」
鎮守府全体の緊張感が、一層張り詰めた。
◉◉◉
戦艦扶桑 艦首甲板
『リンドヴルム、戦艦扶桑、港へ接岸しました。
リンドヴルム、ユグドラシル、ヴィドフニル、各艦は水上航行態勢を維持』
「先方に艦の整備の為、機材と修復資材の搬出と、人員上陸の許可を打診しろ。
許可が降りたらプチモビとマリーンズのMS、扶桑の工作隊を優先で上陸させてくれ。
俺は扶桑の艦霊と共に先に上陸する」
『了解、お気をつけて』
「…はぁ」
ヘイズルに常備してあった無線機を切って、溜息を吐いた。
「どうしたの、一葉ちゃん?」
「いや、いざ親父達と会うとなると…その……緊張して来た」
「ふふ、大丈夫よ。
自信を持って、一葉ちゃんのありのままを見せれば、きっと信じてくれるわ」
「だといいけど……」
俺の連邦軍の将官制服の上着を羽織った扶桑が、コロコロと笑いながら励ましてくれた。
ビリビリに破けた服ではあんまりなので、制服の上着を羽織って貰ったが、それでも酷く扇情的で美しいとまで思ってしまうその四肢に、内心ドキリとしてしまう。
そんな気持ちを振り払う様に扶桑の手を取ってヘイズルの手に乗った。
最初は警戒…と言うよりおっかなびっくりヘイズルの手に乗った扶桑だが、ヘイズルの手が動き出した途端にバランスを崩してしまった。
それを咄嗟に庇うも、間近に迫った扶桑の顔と視線、それと柔らかい感触に脳幹が痺れる様な感覚を味わった。
「…ぁ、ご、ごめん」
「い、いいのよ、ありがとう」
いそいそと2人で乗り込み、ヘイズルを動かした。
甲板からゆっくり飛翔し、埠頭へ着地。
「さて、吉と出るか凶と出るか…」
「きっと上手く行くわ」
「ありがとう」
降り続く雨の中、俺はハッチを開け広げた。
◉◉◉
1時間後 第1024鎮守府
提督執務室
「…で、諸君等はその地球連邦軍の艦隊である、と…?」
「はい、地球連邦宇宙軍第8艦隊麾下、特殊即応艦隊エインヘリアル。
任務は危険度の高いテロリストや宙賊の排除です」
「ここへ来た目的は? 何故扶桑の手助けを?」
「前者については、我々の意思で来たわけではありません、地球への降下中に何らかのトラブルがあったのではないか、と考えています。
後者は……その………姉を助けるのに理由が入りますか?」
「…いや、要るか要らないかの問答繰り返したら終わんねぇし……。
…ってか本当に一葉なのか?」
「DNA鑑定でもするか? 俺は構わないぜ?
それとも親父の机の左側の上から3段目の引き出しに隠してある卑猥な本の話でも…」
「それ以上はやめてくれ一葉ッ‼︎」
シトシトと降り続く雨が、親父の執務室の窓を叩く。
俺と親父の2人きりの執務室に響く雨音が、ひどく懐かしかった。
感動の再会…とは上手く行かなかったが、皆元気そうで何よりだ。
「で、俺達の処遇は?」
「一応事故で止む無く寄港したことにする。
殿下にお前達の上陸と滞在の許可を戴いた。
ただし、常に監視が付くと思ってくれ、それが条件だ」
「お安い御用だ、条件を呑むよ」
「…感謝する。
ああ、それと大本営からお前達の検分をするために、調査団が来るそうだ。
とりあえず、国家機密に抵触しない程度に紹介して欲しい」
「いや、まぁいいけど…そうなると準備が必要だな……いつ来る?」
「1ヶ月後だ、……無理を言って済まないな」
「大丈夫、それだけあれば充分だよ」
親父が徐に立ち上がって手招きした。
話は終わりらしい。
「腹減ったな……、 久し振りに〝母さん〟の飯にありつく気は?」
「喜んで」
来て早々〝母さん〟の飯にありつけるとは幸先が良い。
〝母さん〟の飯は絶品だ。
特に近頃はリンドヴルムの宇宙食やら合成品やらしか食べてなかったから楽しみだ。
「さて、今日はパァーッと行くかパァー…」
「「「「「「「うわッ‼︎」」」」」」」
「……ッと…な……」
親父がドアを開けた瞬間、雷や電達駆逐艦娘や、妙高や利根達巡洋艦娘、更には金剛や伊勢達戦艦娘がわらわらと部屋の中へ崩れて来た。
どうやらずっとドアの外から聞き耳を立てていたようだ。
「はわわわ…バレちゃったのです……」
「お、おい足柄…重いからどいてくれないか……」
「酷いわ那智姉さん、私姉さんとあまり変わらないわよ」
「せ、接近を許すとは……無念なのじゃ…」
「利根姉さん、大丈夫?」
「むむ…伊勢、ここは一時撤退を……」
「そ、その前に日向、どいてくれないと動けないわ」
「Oh…油断したのデース…」
「ひ、ひえ〜……」
「……お前等………」
我先にと逃げ出す皆を怒鳴りながら追い掛ける親父は、酷く滑稽だったとだけ言っておこう。
◉◉◉
同時刻 太平洋
漆黒の闇に浮かぶ満月が、広大な大海原を淡く照らし出す。
波間に煌めく月光は、まるで宝石を散りばめたように輝き、波の音が響く海上を幻想的に彩った。
その漆黒の海の上に、巨大な影があった。
「………」
《〝姫〟、如何サレマシタカ?》
「……何デモナイワ。
…其レヨリ、偵察結果ハ?」
《追撃ノ艦隊ハ見受ラレマセン、逃ゲ切レタ様デス》
「……違ウ…」
《…ハイ?》
「……ヲ級ニ偵察ヲ続ケル様伝エナサイ」
《了解シマシタ、艦隊旗艦》
闇に浮かぶ3隻の軍艦。
軍艦にしては異様に巨大、そして有機的なデザインが目立つ。
人類が深海棲艦と呼び恐れる存在だ。
その先頭を進む艦、〝戦艦棲姫〟は、腹心である戦艦ル級に要件を伝えると、気だるさそうに艦橋の上に座り直し、長く艶のある黒髪を掻き揚げ、溜息を吐いた。
「……何故?」
何故…と戦艦棲姫は呟き、繰り返した。
戦艦棲姫は元々、深海棲艦ではなかった。
深海棲艦は艦娘達と同じ、本質的には艦霊だ。
そして戦艦棲姫自身も、艦娘として戦っていた記憶がある。
だが、いつの間にか深海棲艦になっていた。
理由は定かでは無い。
然し戦艦棲姫には艦娘として戦っていた記憶はあるものの、自身がどんな艦娘だったか、何処の鎮守府所属だったか、何故深海棲艦になったのかも思い出せなかった。
「……何故アノ時…」
戦艦棲姫は、昼間の戦闘に想いを馳せていた。
戦艦棲姫はわけもわからず、近くに居た戦艦ル級、空母ヲ級と一緒に太平洋を何ヶ月も彷徨っていた。
そんな時、偶然出会ったもう一隻の戦艦棲姫に連れられ、深海棲艦達が集まっているという鉄底海峡を目指す事になったのだった。
だがその航海中、もう一隻の戦艦棲姫が艦娘達の艦隊を見つけ、いきなり進路を変えて攻撃を始めたのだが……。
「〝彼〟ハ撃タナカッタノ……?」
あの白い巨人…ロボットは主砲砲塔を潰し、機銃の死角を取ったにも関わらず、あっさりと見逃した。
引鉄を引き絞り、撃鉄を打ち下ろせば、簡単に轟沈出来たと言うのに…。
黒い薄手のワンピースを風に靡かせながら、戦艦棲姫は物想いに耽った。
〈去れ、俺の気が変わらないうちに〉
あのロボットの操縦者の声が、頭の中で鳴り響く。
何故逃がしたのか……彼等にとって自分達は、等しく障害にしかならないと言うのに……。
「何故……」
満月の浮かぶ満天の星空の下、戦艦棲姫は1人、朝日が地平から顔を覗かせるまで、〝彼〟の事を考え続けたのだった。
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