lineage もうひとつの物語
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オーレン戦役
炎の魔神
前書き
マイナーな原作にも拘わらず沢山の方に読んでいただいているようで感謝しています。
予想以上に長くなったオーレン編も次で終わる予定です。
なるべく近いうちに更新できるよう精進しますので応援よろしくお願いします。
突然現れたイフリートに対しイスマイルは各所へ散らばった少部隊へ攻撃指示を出した。
「各部隊は出現した魔物を攻撃せよ!アイスクイーンを守るのだ!」
友好的であったアイスクイーンが今は理性を無くし魔族として行動している等知る由もない部隊は忠実にそれを守り実行している。
寧ろアイスクイーンが頭を抱え苦しんでいる現状を見ると助けが必要に思えるのだ。
戦士が斬りつけウィザードがアイスランス、コーンオブコールド等の氷を繰り出し防御する。
エルフの援護が欲しいところだがフェニックスの対処に追われそれどころでは無いだろう。
歴戦の戦士、ウィザード達はその連携によりイフリートの動きを牽制しアイスクイーンへの攻撃を防いでいる。
この寒冷地ならば炎のモンスターは全力を出せない
ここで叩いておかなければ火山での戦いは壮絶なものになるだろう
ガンドと行動を共にしていたアレンはサミエルの援護のもとイフリートと闘っていた。
「くそっ!生身に見えるのに固い!」
ツーハンドソードに刃零れが見てとれる。
それでも仲間と共にツーハンドソードを振り回し攻撃を加えていくが炎の魔神はアイスクイーンへの攻撃は出来ないもののダメージを受けているようには思えない。
対峙するだけで肌が焼けアイアン製の防具が熱されていくのを感じるが気にする余裕もない。
炎の魔神から巨大な拳が繰り出され避けるが熱風により体力を奪われ呼吸も奪われる。
サミエルからヒールを受け体力を回復させ攻撃に転じるが固い皮膚に阻まれ手応えを感じない。
「サミエルさん!あの上空へのテレポートはできませんか!?」
ガンドと共に回復のため一旦離れたアレンは先程見たマヌエラのテレポートをサミエルにも出来ないか問う。
サミエルは首を横に振ると出来ないと答えた。
「あれは稀少アイテムのテレポートコントロールリングがあって出来るんだ。残念ながら僕は持っていない」
「テレポートコントロールリングがあれば誰でも出来るの?」
「誰でもってわけじゃない。しっかりと出現位置をイメージできる能力が必要だろう」
マヌエラが空中にテレポートできたのは魔法に長けイメージ力が強く正確だったからに他ならない。
あの場所に行きたいと思っても正確にイメージできなければ通常のテレポートと変わりはなくり何処に飛ぶかわからない。
マヌエラの魔法技術が高く目に見える範囲でりケレニスという距離を測る対象物があってのものだ。
「無理か・・・・」
悔しそうにイフリートを睨むアレンにサミエルは思考を凝らす。
「距離を測るだけならワシが斧を投げてやるのだがな」
話を聞いていたガンドはサミエルに向かってそう呟く。
サミエルは二人の戦士に応えたいと強く思った。
サポートする側としてなんとかできないだろうか
祝福されたテレポートスクロールの魔力を抽出しそれを使う?
抽出方法は学生時代の研究が役に立ちそうだ
次は魔石か
魔石に抽出した魔力を込めればいけるかも
それを媒体にしマステレポートでアレンを連れていく
誰も成功したことがないだろう魔石への注入
果たしてうまくいくのか
「アレンさん、少し時間をください」
アレンが頷くのを見て一度使って空になった魔石と祝福されたテレポートスクロールを取り出すサミエル。
周りに馬鹿にされながら研究したスクロールの魔力構築は知っている
ならば、順番に移していけばいいだけじゃないか
なぁに簡単なことだ
自分のやってきた事を信じよう
額に汗を浮かべ真剣な眼差しで魔力の移行を図るサミエル。
一度目は移行する前にスクロールが燃え尽き、二度目は移行途中で失敗した。
回数を重ねる毎に集中力が増しコツがわかり成功へと近づいていくのが感じられるた。
三度目は時間にして10秒ほど。
顔色の悪くなったサミエルはアレンに微笑みかけた。
「今まで出来るとは思わなかった。こんな土壇場で出来るとはね。」
何をやったのかはアレンにはわからない。
しかしサミエルが自分の願いを叶えるため何かをやってくれたのは痛いほど理解できた。
「サミエルさん、ありがとう。必ずヤツを倒す」
「タイミングは任せた。合図があればこれを投げてやろう」
ガンドは予備の斧を手に持ち笑う。
その笑みはよくやったとサミエルを認めたものだった。
この別の魔力を込めた魔石は常に制御しなくてはならずサミエルの魔力はどんどん失われていく。
こんなのじゃ普段は使えないだろうという確信がサミエルにはあった。
「急ごう、僕がいつまでもつかわからない。」
アレンはツーハンドソードを握り締めイフリートを睨み付ける。
サミエルはアレンの肩に手をのせ
「一度限りだ。次はないよ。いいね」
アレンは強く頷きサミエルがマステレポートの魔法を詠唱していく。
ガンドは詠唱が終わるタイミングを待つ。
ゆっくりと、力強く放たれた斧は綺麗な放物線を描きサミエルは睨むようにその軌跡を追う。
そしてイフリートの上空に差し掛かった。
「マステレポート!」
サミエルの声が聞こえアレンと共に姿が消えたと同時にイフリートの上空に出現した。
アイスクイーンが頭を抱え停止している姿を背景にアレンとサミエルがサムズアップで笑顔を浮かべているのが見える。
ガンドは愛用のグレートアックスを肩に担ぎイフリート目掛けて走った。
アレンはサミエルにお礼を言うと重力に引かれるままイフリートへ一直線に向かっていく。
サミエルは魔法石の砕け散ったソーサリースタッフを見ながら独り呟く。
「嗚呼、卒業記念に買って貰ったんだったな。父さん、母さん怒るかなぁ」
そしてひっそりとアレンの持つツーハンドソードにホーリーウェポンの魔力をかけると僅かに残された最後の魔力を使いテレポートしていった。
今まで何度となく振るい自分の手足のように感じたツーハンドソードに淡い光が浮かび上がった。
きっとサミエルだろう。
ありがとう
必ず・・・
そのツーハンドソードの柄を利き腕の右手で握り、左腕の籠手部分を刀身の中腹に当てイフリート目掛け突き進んでいった。
地上へ落とされギリギリのタイミングでホーリーウォークを発動させたケレニスはマヌエラと対峙していた。
「これはこれは。元宮廷魔導師長のマヌエラ様ではありませんか」
ケレニス!
マヌエラは予想以上の大物の出現に狼狽えた。
ラウヘルの側近中の側近であるケレニス自らが動いているとは思わなかったのだ。
メテオストライクを使った張本人。
自分一人では荷が重い。
アイスクイーンと戦い消耗しているケレニス相手でも勝てるとは思えない。
だがここで負ける訳にはいかない。
逆に消耗したケレニスはチャンスだと考えるのだ。
全身全霊をかけここでケレニスを倒す。
「まさかのケレニス様とはね。そんなに人材不足なのかな?」
「アイスクイーン様が邪魔でしてね。殺す予定でしたので私がお相手させていただいたのですよ」
成る程。
そっちがメインだったのか。
完全支配にはアイスクイーンは邪魔ということね。
「想定外のゾンビ出現でしたが貴女方が集まってきました。某姫君もいらっしゃるのかしら?できればご尊顔を拝見したいのですけども」
ゾンビ出現は想定外?
やけにタイミングが良すぎるが。
しかし今ここで殿下のことはバレるわけにはいかない。
「知るわけがない。噂には聞いているがお会いしたことはない」
「あら、そうですの。残念ですわね。まぁ、当初の目的は達成できそうですのでよしとしましょうか」
わざとらしく心底残念そうな表情で語るケレニスに苛つきながらナターシャの話題から逸らすべくその話にのる。
「目的達成?アイスクイーンはまだ死んではいない。それでも達成できたと?」
「貴女方の邪魔が入って殺すことは出来ませんでしたが魔族の姿で力を失わせることはできたようです」
「そのようだね。しかし時間がたてばアイスクイーンは元に戻るのでは?」
ケレニスは不敵な態度でそれに答える。
「ええ、そうでしょう。このまま時間がたてばですがね」
そして杖をトンッと地面に突くと戦場となっている広大な大地に巨大な魔方陣が浮かびアイスクイーン目掛けて光が飛び出した。
それはあまりにも大きく地上にいる者達には魔方陣とは思えないであろう。
しかしマヌエラは目の前の人物が魔法に長け魔力も大きいと知っている。
そのケレニスが行動したのだ。
何らかの攻撃魔法、或いは魔方陣、召喚の類いなのは間違いないと瞬時に悟る。
「させない!」
マヌエラはアイスクイーンを守るためケレニスの背後へテレポートしダイスダガーを繰り出す。
皮膚に直接当たれば非力なウィザードでも大ダメージを与えることのできるダガー。
布一枚でも挟まればダメージを与えることはできないが。
ダイスダガーがケレニスの背中、戦場においても普段と変わらぬ大きく開いている背中へ命中する。
マヌエラの手に衝撃が走ると同時にケレニスの体が大きく跳ねる。
口から血を流し倒れるのを辛うじて耐えている姿は先程までの余裕は全く感じられない。
止めとばかりにマヌエラはフォーススタッフで叩こうとするがダイスダガーの衝撃による痺れにより利き腕をうまく使えない。
それでも己の持つ全ての力を動員しケレニスを倒すため杖を振り回す。
よし!これで・・・!
フォーススタッフが当たる寸前、正しくは紙一重であろうタイミングでケレニスは消え残されたのは小さく燃え上がるスクロールだった。
ケレニスを仕留めそこなったが何らかの魔方陣の完全な発動を抑えたことに安堵するとアイスクイーンを心配するように見詰めていた。
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