久遠の神話
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第百三話 幻術の終わりその五
「貴方の幻に囚われ」
「それに心を奪われれば」
「その時はです」
まさにというのだ。
「彼女達が力を失い」
「そしてだな」
「海に落ち」
そして、というのだ。
「彼女達が死にます」
「そうなるな」
「そうした勝負になります」
「私の思った通りだ、それならな」
「それならですね」
「この幻なら」
それなら、というのだった。
「セイレーン達にも勝てる」
「そう言える根拠は」
何しろ相手はオルフェウスとも争った相手だ、普通の怪物とは違い戦うことはない。しかしその力の強さはというと。
「手強いですが」
「神に匹敵する歌声は」
「オルフェウスでなければ対せませんでした」
まさにだ、ギリシア神話における最大の音楽の天才でなければというのだ。
「その相手に貴方の幻がどう勝つのか」
「見るか」
「そうさせてもらいます」
声の言葉は真剣なものだった。
「貴方が勝てば」
「その時はだな」
「貴方は戦いを降りられます」
「だからこそ勝つ」
絶対に、と言ったマガバーンだった。
「是非な」
「左様ですか」
「ではだ」
「それではですか」
「この力でだ」
まさにというのだった。
「私は彼女達に勝とう」
「エリュシオンの幻で」
「これだけではない」
ただだ、エリシュオンを見せているだけではないというのだ。
「さらにだ」
「?これは」
「見るのだ」
こう言ってだ、そしてだった。
剣を一閃させた、すると。
花、様々な色の花達の花びら達が宙に舞いそれに加えて。
音楽も聴こえてきた、その音楽に乗り。
ニンフ達も出て来た、彼女達もだった。
舞い歌い場をさらに華やかにさせている。それがだった。
セイレーン達を包み込み魅了せんとする、だが。
彼女達も負けていない、その歌が。
これまで以上に美しくなりだ、誘う様になってきた。それはまさにこの世には存在し得ない歌であった。その歌を聴いて。
声もだ、こう言ってきた。
「この歌はです」
「とてもか」
「はい、私でも」
どうしてもだというのだ。
「この歌には」
「負けてしまいそうか」
「神である私がそうなのですから」
だからだというのだ。
「貴方は」
「恐ろしい歌だ」
セイレーンの歌が入ってくる、それも。
耳からだけではない、頭の中に直接だ。その歌声を聴いているうちに。
囚われそうになる、それで言うのだった。
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