妖精の義兄妹の絆
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レーサーの魔法
ワース樹海の中
タクヤたちは無事ウェンディとハッピーの救出に成功した。
本来ならハッピーとシャルル、エマの翼で空からエルザのもとへ行くハズだったが、
レーサーの攻撃により3人共気絶してしまった。仕方なく樹海を通るはめになったのだ。
「ジェラール…、あの野郎…何でこんな所にいやがるんだ。」
「あいつ、そんなに悪い奴なのか?」
タクヤはジェラールがどういう男なのか知らない。
「あー!!!!今思い出しただけでもムカつく~!!!!」
〈ナツくん、タクヤくん。〉
「「!」」
突然頭のなかで声が聞こえた。
〈聞こえるかい?〉
「その声は…。」
「誰だっけ?」
〈僕だ…、青い天馬のヒビキだ。よかった…誰もつながらないからあせっていたんだ。〉
声は聞こえるが姿は見えないのにナツとタクヤは不思議に思った。
「どこだ!?」
ナツは辺りを見渡すがそれらしい人影はない。
〈静かに!!敵の中にはおそろしく耳のいい奴がいる。僕たちの会話はつつぬけている可能性もある。
だから、君たちの頭に直接語りかけているんだ。〉
ヒビキの魔法、古文書“アーカイブ”でナツとタクヤの頭に語りかけていた。
「どおりで辺りに誰もいないわけだ。」
〈ウェンディちゃんは?〉
「ここにいる。気を失ってるが。」
〈よかった!!さすがだよ。これからこの場所までの地図を君たちの頭にアップロードする。急いで戻ってきてくれ。〉
「なに言って、」
ジー… ピコーン
ナツとタクヤの頭にエルザたちがいる場所までの地図がアップロードされた。
「おぉっ!!?何だ何だ!!?エルザの場所がわかる!!!つーか、元から知ってたみてーだ。」
「これなら早く着きそうだぞ!!!」
〈急いでナツくん、タクヤくん。〉
ナツとタクヤは速度をあげてエルザたちの所へ向かった。
「どうやったの?」
ルーシィがヒビキに質問する。
「僕の魔法、古文書は情報圧縮の魔法なんだ。情報を圧縮することで人から人へと口より早く情報を伝えられる。」
「聞いたこともない魔法…。」
「情報を魔力でデータ化するっていう発想自体が最近のものだからね。」
ヒビキは自身の魔法についての説明を終える。
「でもよかった!ウェンディも無事で。 もう少しだからね、エルザ。」
ルーシィは毒で苦しむエルザを見てそう言う。
「ナツたちが戻ってくるまではあたしが守るから、絶対!!!」
ルーシィは我が身を犠牲にする覚悟でそう誓った。
「てめぇは2回もこのオレを止めた。このままじゃオレの名がすたる。」
ここは廃村近くの崖の上、グレイとレーサーの戦闘が行われていた。
シュン
レーサーが目の前から消える。
「その気になればあんな小僧どもに追いつく事くれぇ造作もねぇが、てめぇは殺さねぇと気がすまねぇ。」
「!!」
一瞬のうちにグレイの背後をとったレーサー、その早さはさっきまでの比じゃない。
(「いつの間に…!!!」)
シュン
「その後でも十分に追いつける。」
「!」
グレイが振り向くとまた姿を消し、今度は正面へ移動していた。
「させるかよ!!!」
ばっ
「デッドGP、開幕!!!!」
レーサーが空へつきだした腕を振り落としながら言った。
「!!」
ブォォン ブォォォン オオオオン オオン オォオォォン
どこからかエンジン音が無数に聞こえてくる。
ブオオオオ
そしてグレイの目の前から大量のバイクが飛び出してきた。
「うわっ。」
バイクには人は乗っておらず無造作に駆け抜けていく。
「がっ。」
グレイはそのバイクを避けきれずひかれていた。
「魔導二輪が大量に…!!!」
「地獄のモーターショー。踊れ!!!!」
ガッ
「がはっ。」
レーサーは魔導二輪に乗り、グレイに攻撃を仕掛ける。
「それ、乗れんのかよ。」
ばっ
グレイは1つの魔導二輪に跨ぎ乗る。
「!!」
「SEプラグまでついてやがる。」
グレイは魔導二輪についてあるSEプラグを装着する。
「行くぞオラァ!!!!」
「面白い…。オレとレースで勝負しようと?」
「ルールはねぇから覚悟しとけや。」
そう言ってグレイとレーサーはエンジンをふかせ、樹海を駆ける。
「アイスメイク槍騎兵“ランス”!!!!」
ズガガガガ
グレイは氷の槍でレーサーに攻撃するがレーサーは巧みなライディングで華麗に避けて見せる。
ばっ
今度はレーサーが大量のタイヤを出現させ攻撃する。
「タイヤ!!?うお。」
グレイもこれをかわすが、
「!!」
いつの間にか横で並走しているレーサーがいた。
ガッ ガゴォ ガコッ
レーサーはグレイに足で何度も蹴りつける。次第に二人は木のトンネルへと入っていった。
ギュゴォォォォォ
二つのエンジン音がトンネル内に響く。
ガコッ
レーサーの魔導二輪からなにかが開く音がした。考える間もなくレーサーの魔導二輪からミサイルが発射された。
バラララララ
「ぐあっ。」
ズギャギャ
「くそっ。」
グレイは攻撃を受けるも何とか体勢を整え、最悪の事態を免れた。
「どうした、色男。」
レーサーがグレイを挑発する。
ヴォオン
グレイは再びアクセルを踏み、レーサーを追いかけた。
(「エルザの為に負けられねぇんだヨ!!!!」)
しばらくしてトンネルから出た二人はレースを続ける。
そのとき、グレイは遠くにいる人影を見つけた。
「リオン!!!」
その人影は西の廃村へ向かっていたリオンとシェリーだった。
「グレイ!!?」
「それに六魔将軍も!!!」
シェリーがレーサーの存在を確認する。
「いい所にいたぜ!!!乗れ!!!」
「何だと!?」
「いいから乗れよ!!!」
リオンはグレイの魔導二輪に乗り込む。
「何をやってるんだ、おまえは。」
「リオン様!!!」
グレイとリオンはシェリーを残してレーサーを追う。
「ウェンディは!?」
「安心しろ!!ナツが助けた!!それよりアイツやってくんねーかな。運転しながらじゃうまく魔法を使えねぇ。」
たしかに、運転しながらでは両手を使って魔法を出すグレイにとってはやりづらいのも無理はない。
「フン。」
レーサーがニヤリと笑う。
「ほう、そういう事ならよく見ておけ。オレが造形魔法の手本を見せてやろう。」
「一言余計だ。」
「アイスメイク…、」
「!」
グレイはリオンの魔法を繰り出す仕草に驚いた。
〈「話にならん。造形魔法に両手を使うのも相変わらずだ。」〉
グレイは昔のリオンの言葉を思い出していた。
「おまえ…両手で魔法を…。」
グレイがリオンに尋ねるとリオンは静かに笑う。
「師匠“ウル”の教えだろ。」
グレイは昔のリオンではないことを改めて確認した。
「大鷲“イーグル”!!!!」
ズガガガガ
「何。」
リオンから無数の氷の大鷲がレーサーを襲う。それはレーサーの魔導二輪に直撃した。
だが、レーサーは素早く魔導二輪を捨てグレイとリオンに迫ってきた。
「遊びは終わりだ。」
ドゴォン
グレイとリオンが乗っていた魔導二輪に突っ込んできたレーサー。危機一髪の所で攻撃を回避し、すかさず攻撃に移る。
「アイスメイク大猿“エイプ”!!!!」
ブォン
キィン
「大槌兵“ハンマー”!!!!」
ドン
キィン
しかし、レーサーの速さの前ではこの攻撃は無意味となる。
「当たらねェ!!!」
「落ち着け!!!4時の方向だ!!!」
バッバッバッ
尚もレーサーはスピードを緩めない。
「集中すればとらえられん相手ではない!!!」
「集中か…よし!!!」
ばっ
「行くぞリオン!!!!」
「オレの合図で撃て!!!!全力でな。」
グレイとリオンは上半身裸になり集中する。
(「なぜ服を脱ぐ…!!?」)
(「なぜ服をお脱ぎに…。」)
レーサーとシェリーはまったく同じことを思っていた。
「今だ!!!正面50m先!!!!」
「見切ったァ!!!!」
「氷欠泉“アイスゲイザー”!!!!」
「白竜“スノードラゴン”!!!!」
二人は大技を繰り出した。が、しかし、
ギョアアア キィィィィン
「な!!!」
「さらにスピードを上げた!!!」
レーサーはさらに加速して二人の攻撃を避けた。そのとき、リオンはあるものを見た。
「こっちだ。」
バキッ ガッ
「くっ。」
「がっ。」
二人の背後をとったレーサーは攻撃する。そして、すかさず前へ移動する。
ザシュッ
(「強い…、これが六魔将軍。」)
シェリーは六魔将軍の恐ろしいまでの強さを再確認した。
「てめぇらの攻撃なんざ一生かかっても当たらんよ。オレの速さには誰も追いつけん。
さて、そろそろとどめをさして女をつれ戻しに行くか。」
グレイはレーサーの攻略法が思いつかないでいた。しかし、
「耳をかせ、グレイ。」
「!?」
「奴の弱点を見つけた。」
リオンがレーサーの弱点を見つけたようだ。
ごにょごにょごにょ
「ん?」
レーサーが二人の様子を伺う。
「何だと!?」
「そういう事だ。」
ピキピキ
「!!」
リオンは耳打ちを終えるとグレイを氷付けにした。
「おまえは必要ない!!!」
「リオン様!!!」
シェリーはリオンのやっていることに意味を理解できずにいた。
「リオン!!!!てめ…。」
パキ ピキキ
さらに氷は勢いを落とさず巨大な氷の塔となった。
「そこで見ていろ。」
「仲間割れだと?」
「勘違いしないでほしいな、こいつとは仲間ではない。たまたま同じ師の下にいた、それだけだ。」
「しかし、リオン様…。」
仲間でなかろうと六魔将軍相手にそんなこと言っている場合ではないことをリオンに言おうとするが、
「つべこべ言うな!!!今回の手がらは蛇姫の鱗が頂く。行くぞ、シェリー。」
「は、はいっ!!!」
「やれやれ。」
レーサーはほとほと呆れてしまった。
「そういう思い上がりが勝機を逃すのだ!!!!まぁ、元々てめぇらに勝機なんざねぇがなっ!!!!」
レーサーがリオンとシェリーに突っ込んでくる。
「木人形“ウッドドール”!!!!」
ギギギギ
シェリーは自身の魔法、人形撃により木を操り応戦する。
「遅いわ!!!!」
ギュン ガッ
「あっ。」
シェリーはレーサーを捉えることが出来ず攻撃を食らってしまった。
「こっちだ!!!」
リオンはレーサーを誘導する。
「遅い遅い!!!!」
ギァオオオオ
レーサーがリオンに迫り来る。
「貴様の弱点はその攻撃力の無さ。どんなにスピードがあろうが決め手にかける。
アイスメイク針鼠“ヘッジホッグ”!!!!」
シャキィン
リオンは自身の背中に針鼠のような無数の氷の針を出現させた。
キキキキ
「何!!?」
そのせいでレーサーは攻撃を仕掛け損なった。
「どうした?自慢のスピードでここまで来てみろ。」
「…。」
レーサーはしばらく黙りこむがすぐに笑みを浮かべる。
「甘いなァ。」
ドン
レーサーがさらにスピードを上げる。
「!!!」
ドゴオッ
「ぐはァ。」
リオンの背中の氷が粉々に砕け散りダメージを受ける。レーサーはスピードを上げたことで突進力を倍加させたのだ。
「格下相手に最初から本気でやると思ったか?」
吹っ飛ばされたリオンは受け身をとり素早く態勢をたてなおす。
「どこへ行く気だ!!!」
リオンはレーサーに背を向けただひたすら走る。
ガッ
「ぐはっ。」
ズザザ
さらに追撃を受けるリオン、それでも走る事をやめない。
「リオン様…。」
シェリーはリオンの考えが読めないでいた。
「おいおい、最初の威勢はどうしたァ。」
レーサーはさらにリオンに攻撃を仕掛ける。
バキ
「がっ。」
ガコォ
「ぎいっ。」
それでも足を止めずリオンは走る。
「ど、どこまで行くんですの…!?」
シェリーは小さな人影となったリオンに問うがその答えは返ってくるはずもない。
ギュン
「くっ。」
ギュン
「あ。」
ズガガガガ
「ぐあああぁっ。」
リオンはレーサーの連続攻撃をもろに食らってしまった。
ズザァーッ ガン
「がは。」
ついにリオンはダメージに耐えきれずその場に倒れた。
シャキ
「!!!」
気づけばレーサーはリオンに馬乗りで首もとにナイフを突きつける。
「てめェはオレに決め手にかけると言ったな。だか、そんなものは小型のナイフが一本あればいい。
オレのスピードがあればてめェが何かの魔法を使うより先にその喉をかっ切れる。
若ぇうちは増長するのも悪くねぇが相手がよくなかった。
オレは六魔将軍だ。」
「ハー ハーハー。」
リオンはただそれを静かに聞くことしかできなかった。今動けば完璧に喉を切られてしまう。
それがわかっているからレーサーはだらだらと喋っていられるのだ。
「六つの魔、六つの祈り“オラシオン”。決して崩れねぇ六つの柱だ。その柱を揺らす者には、死あるのみ。」
「やは、り…。」
リオンがブツリと呟く。
「?」
「遠くの鳥がものすごい速さで飛んでいるのを見て…貴様の魔法の正体が…わかった気がした。」
「!?」
「貴様の魔法は自分自身の速度を上げる魔法じゃない。相手の…いや、正確には一定範囲内の体感速度を下げる魔法。」
リオンはレーサーの魔法の正体を推理した。レーサーは顔に冷や汗をかいている。どうやら図星のようだ。
「つまりはオレが遅くされていただけ。
そして、この魔法が一定範囲内にしか効果がない以上その範囲外から貴様を見た時、」
パリィィィン
遠くで氷が砕け散る音が聞こえた。
「貴様のスピードは奪われる。」
氷の塔の上ではグレイが攻撃態勢に入っている。
「な…。こ、この為に奴からオレを遠ざけて…。」
「なるほど、よーく見えるぜ。」
「しかし、あれほどの距離!!!当たるハズがない!!!」
「当てる。」
リオンは断言した。
「何かをなしえようと…強い想いを持っている時の妖精の尻尾は、
最強なんだ。」
「おおおおお。」
ズドン
グレイは氷の矢をレーサーめがけて放った。
(「オレの祈り…それは…誰よりも速く…、」)
ドゴォ
「ぐあぁあああぁっ!!!!!」
氷の矢はレーサーを射抜き、氷が弾けとんだ。レーサーはそのまま立てなかった。
「やったな、リオン。」
リオンたちと合流したグレイがリオンに言う。
「こんなのがまだ5人もいるのか…。」
リオンはダメージが酷いらしく立てずにいた。
「もォ、本当に仲間割れしたかと思いましたわ。」
「さすがオレの兄弟子だ。」
グレイは素直にリオンを誉める。
「フン。」
「立てるか。」
「バカにするな。」
グレイがリオンに手を差し伸べたとき、
「まだだー!!!!」
深手を負いながらもレーサーは叫び声をあげ立ち上がった。その光景に3人は驚く。
「六魔将軍の名にかけて!!!!ただの敗北は許されねぇ!!!!」
ジャラ
「爆弾のラクリマ!!!?」
レーサーが体に巻いていたのは大量の爆弾のラクリマだった。
「まさか…。」
レーサーはグレイに突っ込んでいく。グレイは避けようとするが、
がくっ
「しまっ…。」
グレイは膝を落としかわすタイミングを逃す。
「一人一殺!!!!」
ドン
グレイは死を覚悟した時、リオンがレーサーにタックルを仕掛けた。
「リオン!!!!」
「リオン様!!!!」
リオンはそのままレーサーと一緒に崖へと飛んだ。
「全く世話のかかるおと、」
ドゴォン
「リオーン!!!!」
リオンはレーサーと共に爆発の中へと姿を消した。
ゴゴゴゴゴォン
エルザの所に向かっていたタクヤたちにもその爆発音はきこえていた。
ズキィッ…
「くっ。」
突然ブレインの頭に激しい痛みが走る。それと同時に頭の模様がひとつ消えた。
「レーサーが…死んだ…。六魔の一角が崩れたというのか…。」
激しい頭痛と一緒にあり得ないと自分のなかで言い聞かせるがすぐにやめる。
「おお…、私は敵を侮っていた…。」
ブレインの体が震える。予想外の事態に困惑しているからだ。
「こいつを起こすハメになるとは…ミッドナイト!!!」
ブレインはミッドナイトを起こす。
ぱち
「奴等を一人残さず消せ!!!!」
その場にミッドナイトは静かに立ち上がる。
「はい、父上。」
六魔将軍最後の一人がついに目覚めたのだった。
後書き
11話かんりょー!今回は1日かけてやったんで速く仕上がりました。不定期の連載ということはものすごく早いときもあらば遅いときもあるんですよ!まぁ、1週間以内に1話とはきめてはいるんですが、何分先週からテストが始まってしまいまして
なかなかうまくいかないんですよ。でも、頑張りますよー!ふぁいとー!オレー!
ということで感想等まってまーす!
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