ハイスクールD×D~小さな赤龍帝~
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第0章 転生世界のチャイルドドラゴン
第5話 入学! 駒王学園
前書き
9ヶ月も放置することになってしまい、真に申し訳ございませんでした。
カンピオーネと並行してこちらの方もこれまでの分進めていこうと思っています。
よければ、これからもお読みになって頂けるとありがたいです。
それでは、どうぞ。
注)以前頂いた意見から少し書き方を変更しようと思いますのでご留意を。
Side:龍夜
時が経つというのは、ゆっくりなようでいて早いものだ……と、そんなことを思ってしまう俺であった。
桜が舞い、花弁が道を染める季節。俺こと兵藤龍夜は受験を終え、この春駒王学園に入学したのだった。あれから6年。色々あったなぁと俺は過ぎた日々を思い返していた。
ドライグの覚醒。
リンドブルム師父との出会い。
シロとクロのこと。
イリナの引っ越し。
本当に色々あった。リンドブルム師父は中二の時にもう俺に教えることはない。あとは自分で煌龍真闘技を磨いていけと言い残し修業の旅に出た。師父との別れは寂しいものだったが、きっといつかまた会えることを信じて見送った。
俺は師父と別れた後も師父の言葉に従ってドライグの助けも借りながら、煌龍真闘技を磨いていった。
イリナは突然海外に引っ越すことが決まり両親に連れられて海を渡った。いきなりのことに俺も驚いたが、別れの挨拶が出来たことは幸運だったと思う。
立て続けに親しい相手二人と離別することになってしまい。当時は柄にもなく落ち込んだりもしたが、イリナとは偶に連絡を取っているし、師父もきっと元気でやっているはずだと分かっているのでいつまでもクヨクヨするのはやめにしたのだ。なんてたってあのヒトドラゴンだし(笑)。
…ただ、どうしても今でも俺の心にしこりの様に残っていることがある。……それは、
『あの猫たちのこと…か?』
「……ああ」
ドライグの問い掛けに頷く俺。そう俺の心に残り続けているのは、俺が拾った二匹の猫シロとクロのことだった。
あんなに俺に懐いていたあの二匹はある日突然俺の前からいなくなってしまった。俺は必死で町中を探し回ったけどどこにも見当たらなかった。二匹がどうして突然家出をしてしまったのかはわからない。
「せめて…元気でいてくれると良いんだだけどな」
誰にも聞こえないような声で俺は空を見上げながらそう呟いた。
『…相棒』
俺を心配するかのようなドライグの声。それに俺は苦笑混じりに笑いかける。
「大丈夫だよ相棒。生きてりゃまたきっと会える。そん時は二匹ともきっちり説教してやるさ。六年分たっぷりとな」
『……そうか』
「ああ」
さて、湿っぽい話はこのぐらいにしてそろそろクラス発表見に行こうと思い踵を返して掲示が張られている場所に向かう。
…
……
………
うん。結構キツイな。これは。
何がといわれると。
「ねぇねぇ、見て。あの子」
「きゃ~、ちっちゃい~。可愛い~。ねぇもしかしてあの子ってさ」
「そうそう。あの兵藤君よ」
「わ~、ホントに可愛い。髪も長くて綺麗でサラサラだし、あれで男の子だなんて信じられないよ」
「ていうか、私たちより可愛いんじゃない」
「あたし、なんか自信失くしてきたかも」
「い、いたずらしたい」
これである。つか最後のやつ誰だよ!?
歩く俺の周りの新入生のほとんどが俺に目を向けてはヒソヒソ話をする。しかもその9割方が女子。その原因は簡潔に言うと俺の容姿にある。
箇条書きにするとこんな感じだ。
112・3歳ぐらいにしか見えない背丈。
2腰の辺りまで伸びた髪。
3十人中九人は性別を間違える美貌(自分で言うのも何だが)。
以上が俺に注目が集まる原因になっている理由である。そう。今の俺の容姿は16歳の高校生であるにも関わらず誰がどう見ても小学6年生の少女にしか見えないといったものなのだ(少年と言えないのが悲しいが)。
一体どういうわけなのか、俺の背丈は小学6年の時からピタリと成長を止めてしまった。それはまだいい。少々特殊な例ではあるが、個人差だと思えば諦めもつく。顔の方も同じくだ。
問題は髪である。俺の髪は我が母刀自殿――母さんによって完全に管理されているのだ。母さんの許可なく俺は髪を切らせてはもらえない。しかもこの長さをキープするのが絶対条件とのお達しだ。それはいくらなんでもと反論したところ。
『龍ちゃんにはこの髪型が一番合ってるの』
『この髪型じゃなきゃ駄目なの』
『ママのお願い聞いてくれないの?』
とまあ、こんな感じに+威圧感満点の笑顔で迫られては首を縦に振らざるを得ないというもので。勝手に切ったら後が怖いし。
『あの迫力には思わずオレまで首を縦に振ってしまったほどだからな』
ポツリと呟くドライグ。天龍まで怯ませる程の迫力って……。何者だよ我が家の母刀自殿?
「くそう。相変わらず女子の視線を独占しやがってぇ」
「うらやましい。うらやましいぞぉ。せめて一割でもいいからこっちにも分けてくれぇ」
そんなことを考えていたら、後ろから嫉妬と羨望の混じった声が聞こえてきた。
この声の主たちが誰なのかは振り返らずともわかる。長い付き合いの腐れ縁なのだから。
俺はため息を一つ吐いてから振り返る。そこには見知った連中がいた。頭をスポーツ刈りにしているいかにもスポーツ青少年といった風の男とメガネをかけたどこかオタクっぽい感じのする奴。
「何だよ?松田。元浜」
頭をスポーツ刈りにしている男が松田。もう一人のメガネをかけたオタクっぽい感じの奴が元浜。どちらも中学からの俺の悪友たちだ。
「何だよじゃねぇよ!お前は中学の時からそうだ!いつもいつも女子たちの注目の的。中学時代学年問わずお前のファンがいったい何人いたと思ってやがる!!」
知らんわそんなもん。
「しかも成績も文句なしでスポーツも得意。おまけに世話好きで面倒見もよくて見た目に反して男気もあって、しょっちゅういろんな奴から相談を受けてたなお前は!ちなみにその八割が女子だった!」
ああ、あれか。よく分からないんだが、確かに色んな奴から相談されてたな。元浜の言うように女子の比率が多かったのかは知らんが。
「んで、それがどうしたんだよ?」
俺としてはごく普通に学校生活を送っていただけなんだが。
「くうっ!それを鼻にかけないもんだからさらに人気が上がっていたという事に気付いてないのかこの男は!」
「おかげで俺たちはお前に悪影響を与えるという理由で女子連中からはまるで虫でも見るかのような目で見られ続けて……!」
いやそれに関してはお前らの日頃の行いだと思うんだが。俺に苦情を言われてもな。
「だがしかぁしっ、そんな日々とも今日でさよならだ松田氏よ!」
「おうよ元浜。今日から俺たちのバラ色の学園生活が始まるんだ!」
いきなり打って変わって溌剌とした様子でアームクロスする松田と元浜。そんな二人の大声と奇行に周囲の新入生たちが何だ何だと目を向けてくる。こいつらこそ自分たちが大いに目立っていることを自覚するべきだよな。しかし、そんな周りの状況にも気づかず馬鹿二人はさらに奇行を続ける。
「そうだ。これまでの灰色の人生におさらばして、この学園で作り上げるんだ」
「俺たちの理想郷。俺たちの楽園」
「「…そう。俺たちだけの……ハーレムを!!」」
うおおおおおおっ――と雄叫びを上げながら拳を天高く突き上げる二人の馬鹿。
そう。この二人はこんな理由でこの駒王学園に入学したのだ。
何とも驚くほどに煩悩に塗れた理由である。
今時こんな滑稽を通り越していっそ憐れですらある野望を持つ者などそうそういないだろう。こいつらは中学時代からこんな聞けば開いた口が塞がらないような悲願を未だに持ち続けているのである。
ところで何故この二人がそんな理由でこの学園を選んだのかというと、それは偏にこの駒王学園が元々は女子高であったからだ。少子化等の理由から共学化したもののその名残としてこの学園は学年全体を通しても女子生徒の人数の方が比率が高いのだ。
学力のレベルもそれなりに高く、普通に難関校ではある。こいつら程度のおつむでは合格は無理だろうと思っていたのだが、このエロバカ共はその煩悩と執念で合格をもぎ取ったのだ。
凄まじいと言えば凄まじいのだが、正直俺に言わせてもらえば幻想以下の妄想だとしか言いようがないというのが本音だ。
ちなみに俺がこの学校を選んだ理由は、単に家から通えるというのが一つ。もう一つはこの学園から感じる気配…というか『匂い』だ。
龍通力の扱いが上達するに連れて俺はあらゆる種族が持つ独特の気配を匂いという形で感じ取れるようになった。人間には人間の。悪魔には悪魔の。天使には天使の。堕天使には堕天使のといった具合に。
そして学園から感じられる匂いは悪魔のものだった。この学園に悪魔がいるのは間違いない。それもただの悪魔じゃない。匂いの強さから察するに恐らくかなり力の強い悪魔だ。さらに厄介なのは匂いが一つではないことだ。他にも強い匂いを感じる。今この学園にいる悪魔はひとりじゃない。
もしその悪魔たちが好からぬことを企んでいたとしたら、何としてでもそれを阻むというのがこの学園に入学したもう一つの理由だ。
まあ何もないならそれに越したことはない。悪魔だからと言って必ずしも悪事を働いているとは限らない。それは偏見であり早計というものだ。
ま、しばらくは様子見になるだろう。
それはそれとして………。
「「ハーレム!ハーレム!ハーレム!」」
未だに拳を空に突き上げながら耳を塞ぎたくなるような単語を連呼しているこの猿公どもをいい加減黙らせるとしよう。そろそろ人が集まりだしてきたことだし。
俺はさり気なく二人の間に入り込んだ。そして―――
「オグッ!!」
「ゴヘッ!!」
内臓を突き刺すような肘鉄をエロ猿二匹の鳩尾に見舞ってやった。
ほんの少しばかり龍通力で強化した俺の肘鉄を受けて松田と元浜は腹を押さえたまま糸の切れた操り人形のように地に伏した。体は小さく震えており俺の肘鉄の威力を物語っている。
「そこで一生妄想見てろ。猿公ども」
ようやく静かになった猿二匹をその場に残して俺はクラス発表を見るべく歩くのを再開した。
――――〇●○――――
あの後クラス発表を確認した俺は教室での担任の話を聞き終えて今は学園の地理を把握しておこうと思い散策中だった。
ちなみにクラス発表を見たとき松田と元浜も同じクラスだった。つくづく腐れ縁というのは切れにくいものだ。
「にしてもあいつらは、口を開けばハーレムハーレムと。そんなに良いもんかねぇ」
普通にしてりゃあそれなりにいい奴らなんだけどなぁ。
『オレとしては雄が雌を求めるのは自然な本能だと思うがな』
「別に俺だってハーレムを否定する気はねぇよ。世の中には一夫多妻制ってのもあるわけだしな」
ただあいつらはハーレムを男の夢みたいに語っちゃいるけど、俺はとてもそんな風には思えないってだけだ。
「大体ハーレムってのはな、作るのはもちろん維持するのだって大変だ。よっぽどの甲斐性持ちでもない限りな。そもそもハーレムの絶対的な前提条件は相手の女たちにそれを納得させることだ」
誰にだって好きな相手を独り占めしたいという独占欲はあるものだ。それを上手く抑えてなおかつ不平不満のないように接しなければならない。あの二人にそんな器用な真似ができるとはとても思えない。
「それに極論すると下手したら後ろから刃物で刺される可能性だってある。そんなものを自分から進んで作る気にはなれないね俺は」
以前ドライグに聞いた話では歴代の所有者の中には毎晩違う女と寝ていたという先輩もいたらしいが、よく刺されなかったもんだと思う。
「よくマンガなんかじゃ天然な発言で女を落としたりするやつがいるけど、そんなのは物語の中だからこその展開だ」
そんな簡単に女が落とせるんなら誰も苦労はしてないだろう。
『相棒なら案外やれそうな気がするがな』
は?俺が?無理無理。俺にそんな甲斐性があるわけねぇだろ。そもそもこんな女みたいなチンチクリン男として見てくれるかどうかも怪しいもんだ。
「ま、現実的な回答としては、一人の相手と恋愛するのが一番だってことだな」
そんな風にドライグと雑談を交わしている内に俺はいつの間にかある建物の前まで来ていたことに気づき足を止めてその建物を見上げた。
「これは……」
それは木造の建築物であった。年代ものなのかかなり古びているように見える。周りは木々で囲まれており、夕暮れに照らされているその全様はどこか不気味だった。
「それは旧校舎だよ」
「ッ!?」
後ろから聞こえてきた声に俺は首を回してそちらを向いた。
「あ、ごめんごめん。驚かせちゃったかな?」
そこには金髪に左目の下に泣き黒子のある駒王学園の制服を着た男子生徒が優しげな微笑を浮かべて立っていた。
「いや、驚きはしたけど大丈夫だ」
「そっか。よかった」
ホッとしたように胸を抑える男子生徒は笑ったまま俺の方に近づいてきた。…ん?この匂い。こいつ、まさか……。
「こんなところで何をしてたんだい?」
「暇潰しの散策だよ。ぶらぶらしてたらいつの間にかここに来ちまってな」
「そうだったんだ」
「ところで、どちらさんかな?」
「ああ、ごめん。自己紹介がまだだったね。僕は木場祐斗。君と同じ新入生だよ兵藤龍夜君」
「ん?俺を知ってるのか?」
「君は有名だからね」
「どんなふうにかは聞かないでおくよ」
そう言って俺は肩を竦める。木場祐斗…か。話してみた感じ悪い奴には見えないが……。
「ところで、よくこの建物が旧校舎だってしってたな」
「ああ、うん。僕の知人がこの学校に通っててね。その人に教えてもらったんだよ」
「ふ~ん。そうなのか。……っと、もうこんな時間か。悪いな木場。俺はそろそろ帰るわ」
「ああそうだね。僕もそろそろ帰ることにするよ。いきなり呼びかけちゃってごめんね」
「いいって。それじゃあな」
「うん。それじゃ」
俺たちは互いに背を向けて来た道を戻ろうとするが、俺はふと立ち止まった。
「ああそうだ。木場」
「ん?なんだい?」
俺の呼びかけに木場も立ち止まって振り向く。
「クラスは違うけど、これからよろしくな」
そう言って笑いかけると木場も優しげに笑ってくれた。
「うん。こちらこそ、よろしく」
これが俺兵藤龍夜と木場祐斗の出会いだった。
後書き
いかがでしたか?
次回はいよいよ原作突入です。
お楽しみに。
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