デート・オア・アライブ
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プロローグ ライブ!ライブ!ライブ!
「宮永隆志、22歳、シャブリパーイ大学卒業」
「好きなスポーツは木登り、趣味はアダルトビデオのイクときのシーンだけをまとめること」
「持っている資格は臨床心理士と空気ソムリエ。取った動機は催眠術がつかえそうだから」
「……初めて会った時から思ってましたが、こりゃ紛う事なき変態ですね……」
「勝手に人の履歴書を読むな」
幼女はいつのまにか、散らかった俺の部屋から履歴書を見つけて読んでいた。
毎度毎度その履歴書を持ってバイトへ行っているんだが一向に受かる気配がない。いったい何がいけないのだろうか、と考えているうちにどうしても溜まってしまうのだ。
「それにしてもこの履歴書アルバイト用ですけれど、大学出たんですから就職すればいいじゃないですか」
「いやー、皆が就職活動しているの本当大変そうに見えたからなぁ。ついダラダラしちまってね」
「でも臨床心理士の資格持ってるじゃないですか。動機は不純ですけど精神科医とか目指そうとはしなかったんですか?」
「講習会とか講演会とか見たら、なんか自分が目指そうとしたのとえらいギャップを感じてな。だからまあ今は宝の持ち腐れにしてる感じだな」
それに5年毎の再任試験もあるしな。できれば何の懸念も抱かない所で働きたいものだ。
「じゃあこの好きなスポーツの木登りってなんですか木登りって」
「山登りがありなら木登りもありだろうと思って」
「住宅街ばっかじゃないですか。そもそも登る木も山もあんまりありませんよ」
「公園の木があるだろう!あそこに登るとマンションのベランダが良く見えるんだぞ!」
「…………」
ものっそいゴミを見るような目で見られた。毎日双眼鏡装備で行ってるのは内緒にしておこう。
「はぁ……でもどうやらもう大丈夫そうですね」
そう幼女は口火を切る。どうやら余談はここまでにしたいらしい。
「ああ、おかげさまでな」
「さっきから自分の体をズポズポさせてますがもう怖くないんですか?」
「なにいってやがる。アンタがそれを 奪った くせに」
そうこいつは俺から 恐怖心 を奪った。
時間は数分前にさかのぼる。
「がああああああああああああああああああああああああああああああああああっあああああああああああっああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
俺が死んだということに理解し、取り乱しているときにこいつは
「あ~……やっぱりこうなりましたか。はいはーい大丈夫ですよー」
まるで子供をあやすかのように、人を安心させるような笑みを浮かべ、そして……
俺の頭の中に右腕を突っ込んだ
肘ほどの長さまで中に入り、ぐちゃぐちゃにかき回していた。
感覚は全くなかったが逆にそれが恐ろしく、俺の中の人間的な意識、常識がガラガラと崩れていくのが分かった。
しばらくして腕を外し一言 「気分はどうですか」
「…………」
しばらく放心し一言 「ああ、問題ない」
今思えばそれは何よりの異常だった。取り乱し発狂していた男が数分間で平静を取り戻すなんてありえないの一言に尽きる。
なにより、この現象を引き起こしたであろう張本人と何の支障もなく会話をしている。
途轍もないほどの滅茶苦茶な事態。その渦中に今俺はいる。
そして挙句の果てに朝食の準備もしてしまった。
目玉焼きとご飯とみそ汁。簡素な物ばかりだがこういうのこそ最後の晩餐にちょうどいいだろう。
「それで、話を進めますがあなたは死んでしまったんですよ」
目玉焼きの黄身をプにプ二しながら幼女は言う。
「それでこれからあなたが死んだ後について――」
「まぁまて、まずは俺の死因について聞かせてもらおうか。そこんとこはっきりと思いだせなくてな」
「そんなこと聞きたいんですか?あんまりいいもんじゃありませんよ」
「一応だよ一応。俺自身どんな感じに死んだのかとても気になるのさ。でも、もしアンタの手違いで死んじまったんだとしたら一発以上の拳や蹴りは覚悟しろよ」
「私は優秀ですからそんなヘマはしませんよ」
そう言ってこの幼女は尊大にこちらを見上げる。
そもそも神に優秀、劣等なんてあるんだろうか。神話世界ならまだしもここは現実世界なんだよ。もうちょっと世界観とか俺のアイデンティティーを労りながら話してほしいね。
「ええと、そうですね……あなたの死因は猫を助けるために横断歩道を飛び出し、トラックに轢かれたことによる轢死――――」
「おお!流石日本の好漢代表である俺!死因すらも格好いい!」
「――ではなく、行きずりの女性と一晩だけの関係になるつもりが、後からヤクザの組長の娘だったことが判明して自宅に追い込みをかけられ、体中をバラバラにされた後、魚の餌にされてますね」
「落ちた―!上げて落ちた―!どん底へと叩きこまれたー!」
嗚呼俺よ、今頃は魚とランデブーしているのか。でもやっぱり俺は哺乳類の方がいい。
「まああなたの死因には同情……はしませんね。微塵もないです」
「辛辣だなあ。ねえ今から神の力で死因変えれない?できればホテルで美女2人と組んず解れつして腹上死したっていうのが一番いいんだけど」
「来世で試してくださいよ。そんな不健全性的人生は」
良いと思ったんだがな。どうせ死ぬなら前世の死因くらいちょちょいと……
…………来世!?
「ちょっと待て!来世があるのか俺には!?」
「さっきから話そうと思ってたんですがね。貴方が脱線ばかりしてるから全然進まないんですよ」
そう幼女はため息をつきながらご飯にバターと醤油をぶっこんだ。
「汚い喰い方してんな。お里が知れんぞ」
「焼肉のたれとタルタルソースを同時に入れる味覚障碍者には言われたくありませんね」
そう言い合い俺たちはそれに箸を突っ込み掻き混ぜる。
辺りに品のない音が響くが、そんなことは露程も気にせずご飯(?)を口に運ぶ。
「それで……はむ、はぐ俺はこれから ゴグっ…どうなるんだ?」
「……っずるるるるる んく、んく ぷはぁっ!……っとですね。本来ならここで、輪廻転生になるんですが、今回はちょっと事情が違いまして……」
「お願いだから地獄行きなんて言わないでくれよ。流石の俺も亡者や鬼と乳繰り合いたくはない」
「そのことに関しては本当に残念です。あなたを地獄送りにできなくて……まあ結論だけ言うと貴方には転生してもらいます」
「転生?でもさっき輪廻転生はダメって……」
「輪廻転生は動物を含めた生類に生まれ変わること。それを何回も繰り返すことを言います。
そして私が言った転生は今保持している記憶を継承し、そこから新たな生を歩むこと。生まれ変わることは共に同じですが、ステータスが違うのですよ」
「七面倒臭そうだなぁ。まさか生まれる世界も指定されてるとか言うんじゃあ……」
「そのまさかです」
「…………」
はぁ……とため息をつき箸を持ったまま項垂れる。
そのまま少しだけ幼女の顔を覗いてみた。
脇目も振らず、俺をジッと見ている。その目や顔からはふざけた感情等は一切なく、ただ真剣さだけがそこにあった。
「……なんで俺なんだ。俺以外にも人間はごまんといる。なのに……」
「神は人間を選ぶときに理由なんか持ちません。ただ選んだ。勝手気ままに適当に……それだけです」
「…………そりゃあさ、生き返らせてくれるのは素直にうれしい。でもさこんな形で生き返らせることは俺は望んでないんだよ。だから……」
「……ごめんなさい」
申し訳なさそうに頭を下げる幼女。
どうやら、俺が何を言おうともこの結果は変わらないようだ。
でも俺はまた人間として生きたい。自分が生きた世界で、また0から。
正直言って安全も何もかも保障できない世界に転生するなんて御免被りたい。
………………
だがこのままじゃ話はずっと平行線のままだ。
そもそも相手は俺にまた生きるチャンスを与えてくれたんだ。感謝こそすれ怨む筋合もない。
ならばここは……決断をするときなんだろう
「……あー!分かった分かったよ。俺も腹をくくる」
正直納得はしていないが、もう死んだんだ。例え転生先がおれが生きてた世界じゃなかろうとも何とかなるだろう。いや、何とかしてやる!させてやる!
「ほ……本当に、良いんですか?」
「納得はしていないがな。ただそっちがそこまで強要するんだ。少しくらいは優遇してくれよ」
「ええ、それはもちろんです!何から聞きましゅか!?」
「噛んでる噛んでる」
了承してからのこの反応、なんつー現金な。
まあ子供は総じて皆現金って言うし、幼女だし仕方ないか。
「そうだな……と言っても聞きたいことは一つなんだがな……俺がどんな世界へ行くか教えてくれ」
「そうですね、詳しくは言えませんが、あなたにピッタリと言ってもいいジャンル……ラブコメな世界へ行ってもらいます!」
「おおー!そいつは僥倖!そうか……ラブコメな世界か!」
「そうです!ラブコメな世界です!」
「ラブラブコメントなラブレターが手渡され!」
「今日からあなたはラブリーコメディアン!」
「ヒュ―!」
「イエ―!」
パァン!と景気のいい音を出すハイタッチ。
さっきまで険悪な雰囲気が流れていたのがウソのようだ。
「んじゃあまあ世界の内容もわかった。後は頼むわ……はぐ!」
そう言って最後に残しておいた目玉焼きにかぶりつく。
「ちょっと待ってください。あと一つ言うのを忘れてました、《特典》について」
「っほふっほふっほふ……はぐへん?」
「簡単に言いますとこれから行く世界に適応できるように私たちが用意した能力の断片というか、物騒な世界で生き残れる力というか」
「っ っ ゴク!ン! はぁ……つまりは世界へ行く際にどんな能力でも持って行けると?」
「はいそうです。漫画やアニメの能力でもいいですし自分で考えたスーパーでエキサイティン!なモノでも構いませんよ」
「そうかそうか。太っ腹だなあ神様は」
そう言いながら、俺は2杯目を御代わりしている幼女の腹を見つめていた。遠慮がねえな本当。
さて、特典か。だがまあ行くのはラブコメな世界っていうのは分かってるんだし、スーパーマンになる必要もなければ宇宙を支配できるような化けもんになる必要もない。
だがしかし!あの幼女の言うことの全てが真実だと分からないのも事実!もしかしたら嘘は言ってないまでもまだ言っていない事実があるやも知れん。
そしてそれを易々と教えるとも思えん。ここは一個くらいは特典を取っておくべきだろう。
だがだ。《どんな能力でも持って行ける》この言葉に甘えてはいけない。もしあの幼女の言葉を全て鵜呑みにするなら、俺はこれからラブコメな世界へ行く。その世界観をぶち壊さないためにも能力によるインフレーションは起こしちゃあいけない。過ぎたるは、なお及ばざるが如し とも言うしな。
「なあ……特典を取ったらペナルティとかは発生するのか?」
「ペナルティ……ですか?」
「例えば俺がここで何らかの超能力を得た場合、転生先で俺が戦闘をしなければならない事態に陥ったりする……とか」
「…………」
押し黙る幼女。図星か?図星なのか!?なんだか今の幼女、Vバックの水着を買おうか迷っていた時の俺に似ているぞ。
「……う~ん。やることも出来ますが、実際にやられても確認の仕様がありませんよね?」
「そりゃ、まあ」
「なら、ないと思っていた方が気が楽ですよ。あと別に特典は強制じゃありませんから」
そう言ってまた飯を掻っ込む作業に戻る。
言葉の端々から感じられる怪しさ。だが、それにかまけていてはいつまでたっても先には進めないだろう。
一度腹を決めたんだ。この決心が揺らがない様、早いとこ決めちまおう。
「……なぁ、スティール・ボール・ランって知ってるか?」
「ふぃってまふお。ほほななふのあれでほう」
「そう、それだ。その主人公のジョニィ・ジョースターが使っていた。「牙」をお願いする」
「んー!ングッ!っふう……オーケー分かりました。来世では爪弾の発射ができるよう設定しておきましょう。無論act1からact4まで」
「ああ……ただact4の場合は《馬の力を利用した黄金の回転》が必要になる!そりゃあ馬がいればこちらとしても嬉しいんだが、ラブコメに置いて馬が登場し、且つ、活躍する。そんな確率はほぼ無いといっていい!」
生まれがジョッキーか農家のどっちかしか駄目なんて事はやめてくれ!
出来ることなら馬より人間を騎乗したい!
「ですよねー。まあそこら辺もちゃんと調整しますよ。act4は普段は出せない扱いにしておきますのでほぼ無い物と思っておいてください」
「了解した」
そういって俺たちは箸を御椀の上に置いて
「「ご馳走様でした」」
生涯最後の飯を食べ終えた。
「じゃあ準備はいいですね」
「ああ、いつでもバッチ来い」
そう答え、彼は私の前に立つ。
「もう一度言います。これでいいんですね?」
「ああ、もう迷いはない。次の世界では絶対に誠実に生き切って見せる」
「……本音は?」
「ぐへへははー!真面目そうに見えて実は淫らな美少女が俺を待っている―!不純異性交遊ばんざーい!」
「大丈夫かなぁ」
すごく罪深いことをしている気になってきた。こんな人間を世に出して本当に大丈夫だろうか。
「それじゃ行きますよ~」
そう言い終わると同時に私は、転生を開始させる。徐々に下半身から消滅していく彼の体。あと数秒もすれば完全に消えるだろう
「ああ……っと最後に一つだけ」
「なんですか?」
「また、あんたとは会えるのか?」
「……さあ どうでしょうね?」
そう言って私は彼の言葉をはぐらかす。会えないほうが本当はいいんですけれどね。
「……そうか」
そして彼の口も顔も消え完全に消滅した。最後に彼はどこか笑っているような気がした。
「さて」
「中々に無欲な人でしたね。能力が1個だけとか」
「前の人間たちは自分に不相応な能力ばかりを要求していましたのに」
「まあそういう人間に限って自分の能力を制御しきれず転生先の世界と心中する愚か者ばかりでしたが」
「今回はどこまで持つでしょうかね」
そしてそこにいたはずの神もそこから消えた。
後に残ったのは宮永隆志の残滓である、薄汚れた部屋のみであった。
後書き
ようやくプロローグがおっわりましたー!
1話にまとめるつもりでしたが読みにくそうなので2話構成にすることにしました。
ここからは原作に沿って、精霊を攻略させていく所存であります。
どうかこれからも主人公のことを養豚場のブタをみるような目で見てくだされば幸いです。
それと世の臨床心理士及び空気ソムリエの皆様誠に申し訳ございませんです。
決して馬鹿にしているわけではございませんのでご容赦を。
また、バターしょうゆご飯及び焼き肉タルタルご飯を愛用の方誠に申し訳ございません。
あれは僕の大好物です。あれはカロリーが気になりますがめちゃうまです。
どうかこれからもよろしくお願いします。
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