美しき異形達
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第九話 風の力その十三
「オーソドックスな風の使い方だな」
「そうですね、今の使い方は」
桜もにこりと笑ってそうだと返した。
「鎌ィ足は」
「やってくれるものだな」
「これで飛ぶことは出来ませんね」
「回復には一時間程かかる」
断ち切られた翼が再び生えるには、というのだ。
「俺達は灰にならない限り身体が二つになっても回復出来る」
「そりゃまた面倒な話だな」
薊は怪人の回復能力のことを聞いてこう呟いた。
「そんなプラナリアみたいな能力があるのかよ」
「いい力だな」
「だから面倒だって言ってるだろ」
薊は怪人自身にも言った。
「それじゃあその場でぶっ倒すしかねえじゃねえか」
「そうなるな」
「まあこれまでそうしてたけれどな」
薊はこれまでの彼女達の戦いのことにも言及した。
「そうしていくか、これからも」
「その方がいいですね」
今闘っている桜もこう薊に応える。
「実際にこの方とは前にもお手合せをして左腕を斬ったのですが」
「今左腕あるな」
「はい、ですから」
「俺達はそうそう死なないんだよ」
また言う怪人だった。
「本当に倒したければ灰にするんだな」
「わかりました、では倒させてもらいます」
桜は怪人に対してにこりと笑って告げた、そしてだった。
穏やかな笑みのままだ、レイピアを再び怪人に向けて構え。
そのうえで今度は剣を右から左に一閃させた、すると。
竜巻が生じた、大きさは桜の身体程がある。その竜巻がだった。
凄まじい唸り声をあげて怪人に襲い掛かる、怪人はその竜巻に対して。
身体を左右に動かしてかわそうとする、だがその怪人に対して。
桜は竜巻を続けて出した、竜巻達は左右に蛇の動きの様に進んで怪人を襲う。そしてそこに加えてさらにだった。
桜は鎌ィ足も放った、間合いを取っての竜巻と鎌ィ足を幾つも出す複合攻撃を仕掛ける。しかも。
自身も突っ込んでだ、攻撃をかわすことに集中している怪人にレイピアを突き出した、竜巻と鎌ィ足をかわすことに気を取られている怪人に。
これには怪人もかわしきれなかった、それで。
胸にレイピアを受けた、そのダメージはかなりのもので怪人は動きを止めた。そこに。
桜はさらに攻撃を浴びせた、今度の攻撃はというと。
レイピアを突き刺したままで真上に跳躍した、そしてそこで。
身体を丸め前転した、その前転と共に。
背を怪人、胸を貫いた怪人に向ける形に振り向いてだ、上から右足に風を宿らせて一気に蹴った。その蹴りで怪人を斬った。
そのうえで怪人の身体を台にして弾かれる様にして戻りその中で身体を怪人の方に向き直ってだ、そうして膝を屈して衝撃を殺す形で着地してだった。
怪人を見る、怪人の身体の後ろに。
大きく、ピンクの文字が出ていた。それは紋章だった。
「あれは北斗七星の紋章ね」
「北斗七星ってあの」
「ええ、大熊座のね」
ギリシア神話からだった、菖蒲は菊に答えた。
「あの七つの星よ」
「そうよね、その星の一つの」
その星はというと。
「メグレズよ」
「その星の紋章なの」
「ええ、あれはね」
まさにそれだというのだ。
「それが出るなんて」
「力を使って怪人を倒したけれど」
裕香はこのことから言った。
「それに関係しているのかしら」
「そうかも知れないわね」
こう話すのだった。
「その辺りもわからないわね」
「また謎が出て来たな」
薊はこう考えて少し顔を顰めさせて述べた。
「今度は紋章かよ」
「それに北斗七星ね」
「何だろうな、これって」
新たな謎が出て来たことにいぶかしむ少女達だった、だが今の桜の蹴りでだった。
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