万華鏡
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第七十四話 冬化粧その四
「それにお酒飲んでると出るから」
「小さい方がか」
「そう、そっちがね」
このことについては少し隠語で話した姉と弟だった。流石に飲みながら直接話に出すことははばかれた。
「どんどん出るから」
「だからそれだけ飲めるんだな」
「そうよ、一升でもね」
「そうか、お酒ってそうなんだな」
「あんたも高校に入ったら飲めるわよ」
八条町の決まりではそうなっている。
「だから楽しみにね」
「まあな、俺も酒は」
「飲みたいでしょ」
「絶対にな、煙草は興味ないけれど」
「そっちは二十歳になってからよ」
「煙草はどうでもいいよ」
弟は煙草についてはあっさり言った。
「別にさ」
「そうなのね」
「それ姉ちゃんもだろ」
「煙草は身体に悪いでしょ」
これが姉の弟への返事だった。
「それもかなり」
「早死するんだよな」
「そうなりやすいわよ、吸ってると」
「じゃあいいよ」
煙草は、というのだ。
「そっちは」
「お酒だけでいいのね」
「お父さんもお母さんも吸わないし」
このことは二人共だ、二人共実際に煙草は吸わない。
「俺もいいよ」
「お酒だけね」
「やっぱり飲みたいな」
「高校まで我慢してね」
「わかったよ、じゃあさ」
「そういうことでね。それにしても」
琴乃は飲みつつ弟のゲームの状況を観た、話をしている間に伝説の十一番は相手を三者凡退に抑えていた、そして阪神の攻撃はというと。
打って打って打ちまくっていた、それで言うのだ。
「打つわね、流石に」
「名選手ばかりだからな」
「バース、田渕、掛布って」
「兄貴もいてさ」
「打って当然ね」
「最強の打線だよ」
まさにだというのだ。
「史上最強の」
「巨人のあれじゃなくて?」
「あれただの自称だから」
まさに自称であった、ただホームランを打つだけでつながりもなければ機動力もなかった。もっと言えば守備も劣悪だった。あの様な打線を最強と称するなぞ笑止千万と言うべきであろうか。当時の巨人の監督も酷いものだったが。
「あんなの何でもないよ」
「敵じゃないのね」
「このダイナマイト打線は違うよ」
自信を持って言う弟だった。
「絶対優勝するよ」
「まあ頑張ってね」
「さて、日本シリーズは何処かな」
「確かその作品だとホークス強いわよね」
「大体ね、ここ数年はね」
「じゃあ鷹じゃないの?」
「いや、ロッテがなんだよ」
このチームが、というのだ。
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