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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos23聖夜に生まれし遥かなる夜天の王~Meister des Nachthimmels~

 
前書き
Meister des Nachthimmels/マイスター・デス・ナハトヒンメル/夜天の主 

 

†††Sideフェイト†††

なのはに当たりそうだった炎の槍の爆炎をまともに受けた私は気を失っていたみたいで、気が付いてみれば私は「アルフ・・・?」に背負われていて空を飛んでいた。アルフの肩越しからクロノと、アリサを抱っこしたすずかが前を飛んでいるのが見える。

「なに、これ・・・?」

大好きな海鳴の街が見るも無残な姿に変わり果てていた。龍のような岩の柱や火柱が色んなところから突き出していて、ビルなどの建物には植物の蔦が絡みついていた。

「フェイト、目を覚ましたのかい!?」

「フェイトちゃん! よかったぁ、治すことは出来たけど目を覚まさなかったから・・・」

「心配したわよ、ホント」

「フェイト。まだ戦えるか?」

そう確認してきたクロノに「もちろんだよ」そう答えて、アルフの背から離れる。と、ここでようやく「なのは・・・?」が居ないことに気付いた。誰かが答えて知るよりも早く、遠く離れた海上でなのはの魔力光である桜色と、アウグスタ――というよりシュリエルの魔力光である深紫色の魔力爆発が連続で起きているのを視界に捉えた。

「まさか・・・!」

「ああ、だから僕たちは急いで向かっている。なのは1人で叶うような相手じゃない。はや――」

――冥府の螺旋槍(ヴルフシュペーア・デア・ウンターヴェルト)――

空にドリルのような杭、もしくは槍のようなものが創り出された。目を凝らして見ると、その先端の先に在るもの――ううん、居る「なのは!!」を視界に捉えた。しかも蒼いワイヤーのような物で拘束されていて動けずにいる。

「ちょっ、あんなものを人間相手に使うって、アイツ馬鹿じゃないの!」

「なのはちゃん! どうしよう、どうしよう・・・!」

「フェイト! 先に行け!」

クロノの大声に真っ白になりそうだった頭の中がスッと晴れて、「うんっ!」ソニックフォームのままだった私はすぐさま連続ソニックムーブで先行。そして「バルディッシュ、ザンバーフォーム、そしてブレイズフォーム!」を起動させる。
カートリッジをロードしてザンバーへ。空になったカートリッジをシリンダーから排莢させて、スピードローダーで一気に装弾。バリアジャケットはソニックからブレイズへ。防御の大半を捨て機動力を確保するソニックとは違って、ブレイズはニュートラルのライトニングに防御力を追加したフォームだ。

「なのは!」

≪Jet Zamber≫

特大斬撃魔法、ジェットザンバーを発動。伸長した魔力刃を槍に向かって縦一閃。なのはに届く前に真っ二つに切断することで、私はなのはを助けることが出来た。遅れてアルフ達も私たちに合流。そんな時、私たちの足元に広がる海面が大きく爆ぜた。その原因は、大きく開かれた3つの口が飛び出して来たことによるもの。

(避け――無理! 私ひとりならギリギリだけど、他のみんな・・・特にアリサが逃げられない!)

それほどまでに巨大で、そして近かった。終わった、って本気で思った。でも空から真紅の魔力斬撃が3つ降って来て、私たちを呑み込もうとしていた3つの口が裂かれて無数の羽根となって消滅した。

「まったく。七美徳の慈悲(パティエンティア)を奪われているなんて。ルシルのドジっぷりも相変わらずここに極まれりね」

攻撃を行った主、シャルが遥か頭上に居た。しかも魔力で出来ている真紅の翼を背負って。確かシャルは飛行魔法の一切を使えないはず。そんなシャルから『ほら、ボサっとしてないで、さっさとはやて達を助けるよ』念話が来た。私たちが行動を起こすより早く「ブルーティガードルヒ」アウグスタが動いた。血色の短剣を20基、シャルに向かって一斉発射した。

――ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク――

シャルは翼を羽ばたかせて高速落下。短剣を“キルシュブリューテ”で斬り裂きながらアウグスタへ向かって、

炎牙月閃刃(フランメ・モーントズィッヒェル)・・・!」

火炎を纏う“キルシュブリューテ”の一撃を振るった。アウグスタは私たちの時みたく防御に回ろうとしないで回避を選んだ。でもシャルは回避先を予想していたみたいで、剣閃の軌道を変えて「そこぉぉぉーーーッ!!」アウグスタの脇腹に直撃させた。
アウグスタの防御力を知る私たちからすれば、また通用しないんだろうな、ってある種の諦観めいた思いがあったけど、「ぅぐ!?」アウグスタはその一撃を防ぐことが出来ずに薙ぎ払われるままに海面へと墜落、沈んで行った。そのあまりの呆気なさに私は開いた口が閉じない。

「・・・って、いっったぁぁ~~い! なにあれ、堅い・・・! ま、それはともかくとして・・・~~~~~~っ、なのはぁぁぁぁぁ!!」

「ふえ!? なに、どうし――にゃぁぁぁ!?」

シャルは何を思ったのかいきなりなのはに抱きついて、頬にキスし始めた。顔を真っ赤にしてるなのはの次に、「フェイト!!」私に抱きついてきて、なのはのように頬にキスをしてきた。そしてアリサにすずかと同じように抱きついて頬にキス。私たちがボーっとしちゃっている中、「なにを考えているんだ、イリス!」クロノが止めに入った。

「クロノも! チュー❤」

「うひっ!!??」

「アルフにも~❤」

「っ! シャル、あんた、どうしたんだい!? キャラが変わってるような・・うんや、変わってないような?」

うん、なんて言うんだろう。今のシャルはシャルだけど、何かが変。特に「シャルちゃん、その翼・・・」なのはの指摘通りシャルの背には一対の翼。シャルは飛べないはずだ。それに「あんたの魔法ってベルカ語だったっけ?」アリサの言う通りでもある。

「あ、あー・・っと、ううん、なんでもないよ、うん。ささ、そんなことよりも闇の書の闇――ナハトヴァールのことだよ」

シャルは無理やり話題を変えるようにアウグスタの沈んでいった海面へと“キルシュブリューテ”の剣先を向けた。そっちに目を向けた瞬間、私たちを中心にして時計の文字盤の数字と同じ個所から20mほどもある岩の柱が突き出してきた。そのうちの1本にアウグスタが立っていた。

「あなた、一体何者・・・?」

「私は・・・時空管理局および聖王教会所属、シャ――イリス・ド・シャルロッテ・フライハイト! そして相棒のトロイメ――コホン、キルシュブリューテ!」

なんだろう、シャルがさっきから言葉を詰まらせているんだけど。そんな私のちょっとした疑問を余所に、「聖王家の番犬、フライハイトの騎士・・・!」アウグスタとシャルの会話は続く。

「ヤー。悪いけど、さっさと片を付けさせてもらうよ。私たちの友達を・・・返せ! みんな、行くよ!」

シャルの号令一下、私たちは一斉に攻勢に転じた。なのはは砲撃、私とアリサ、そしてシャルは斬撃、アウグスタへの足止めとして、アルフやすずかにクロノが射撃魔法の弾幕を張る。
アウグスタはそんな私たちの攻撃を紙一重で回避しつつ、「闇に沈め。デアボリック・エミッション!」魔法を発動。球体状に爆ぜる空間攻撃。回避に間に合わない距離もあって、私はすぐにシールドを張ろうとした。

「飛刃・翔舞四閃!」

それよりも早くシャルが放った真紅に輝く魔力斬撃がアウグスタの魔法を斬り裂いて、私たちが効果圏内に入る前に無効化してくれた。驚愕に目を見開いて隙だらけなアウグスタへ向けて「ジェットザンバァァァァッ!!」すぐに“バルディッシュ”を振るった。
それなのにアウグスタは余裕とでも言うようにナハトヴァールで受け止めた。そんなアウグスタの背後から「せぇぇぇいッ!」アリサの“フレイムアイズ”のクレイモアフォームによる斬撃ヴォルカニックスカッシャーが襲った。

「挟撃ばかりしか能が無いの、あなた達?」

“バルディッシュ”を捌かれてしまって、“フレイムアイズ”の刃と衝突させられてしまった。強大な雷と炎が反応して大爆発を起こした。視界を覆い隠す煙幕。この中で奇襲されるのはまずい。そう判断して煙幕外に出ようとした時、視界の端の煙が僅かに動いたのを見た。
“バルディッシュ”を振るって、「っ!」すぐさま止めた。そこに居たのは、「フェイトちゃん!」なのはだったからだ。なのはもほぼ槍と化してる“レイジングハート”の先端を私の胸元に突き付けようとして止めた。

≪Code Puciel≫

そんな時に私となのはに襲い掛かってきたのは、煙幕を消し飛ばすほどに蒼く燃える蛇。なのはと左右に分かれて噛み付き攻撃を回避して、間髪入れずに“バルディッシュ”を振るって首を落とす。そしてなのはが「エクセリオンバスターッ!!」アウグスタに向けて砲撃を発射。

「せい!」

そんななのはの砲撃を裏拳で弾き逸らして、放射体勢のままで居るなのはへ向かって突進。私が助けるよりも早く「どっっせぇぇーーーい!」アルフが急降下して来て、「あぐっ!?」アウグスタの頭を両足で思いっきり踏みつけた。
アウグスタは空に留まることが出来ずに海に落下、派手に水飛沫を上げた。でもすぐに「獣風情がぁぁぁぁッ! 王の頭を足蹴にするとは何事かぁぁぁぁーーーーッッ!!」海から水柱を上げながら飛び出して来たアウグスタ。

「そっくりそのまま返すわ。妄執・執念の塊風情が・・・はやて達から笑顔を奪うな!!」

――光牙裂境刃(ツェアライセン)――

真紅の魔力を纏う“キルシュブリューテ”をアウグスタへ向けて横薙ぎに一閃したシャル。その一撃もまたアウグスタの防御を貫いて、「うぐふっ!?」お腹に直撃させた。体を折るアウグスタにさらに打ち上げの一撃を当てた後、私たちに向かって「トドメ! もちろん、全力全開で!!」って叫んだ。

「フェイトちゃん!」

「なのは!」

私となのはのコンビネーション魔法をスタンバイ。横に並んで、私たち2人の魔法陣が重なり合った大きな魔法陣を足元に展開。私たちの魔法に巻き込まれないように、そしてシャルの邪魔にならないようにアルフ達が避難するのを確認。

「N&F中距離殲滅魔法!」

「ブラストカラミティ!!」

なのはの魔力スフィアと私のプラズマスフィアを周囲に計20基展開。その間にもシャルが単独でアウグスタを“キルシュブリューテ”でタコ殴りにしていた。シャルの攻撃は面白いほどにアウグスタの絶対って思われていた防御を突破していて、「なんなのよ、あなたは!!」アウグスタをとうとう本気で焦り始めさせていた。

「「ファイアァァァァーーーーーーーッッッ!!!」」

私はザンバーフォームでの砲撃魔法プラズマザンバー、あとプラズマバレットを、なのははストライクスターズを同時発射。交わり合う私たちの砲撃が、シャルにボコボコにされていたアウグスタを捉え着弾、間髪入れずに魔力弾が殺到していく。ギリギリで避けたシャルが私となのはの元に飛んで来た。

「うわお♪ すっごぉ~いっ♪」

そう言って私たちの間に入って肩に腕を回した。そこにアルフ達も合流。さっきまでアウグスタの居た空を見上げる。今の魔法の直撃を受けたアウグスタの姿は見えない。心配なのは、アウグスタの体ははやてのものだということだ。もしかしてやり過ぎてはやてごと?って思ってしまう。みんなもそのようで不安げに空や海と視線を移す。

「ルシル君の話だと、魔力ダメージを与えてアウグスタさん――ナハトヴァールがはやてちゃんとシュリエルさんを抑え込む力を弱めることが、2人を助ける方法だって」

「でも問題のアウグスタがどこに行ったのか判らないじゃない」

「ひょっとしてなのはちゃんとフェイトちゃんの魔法で・・・?」

すずかから向けられた視線に「ふえ!?」なのははビクッと肩を竦ませて、私は頭を横に振った。どれだけ威力があっても非殺傷設定だから、消し飛ばすなんてことは絶対にない。

「そもそもルシリオンは何をやっている? まだ自分の使い魔と戦っているのか? エイミィ」

『こちらアースラのエイミィ! ルシル君ならたった今、怪獣大決戦を終わらせて、ちょっと休憩中みたい』

私たちの前にモニターが展開されて、道路の真ん中で大の字になって横になっているルシルが映し出された。それを見たシャルが「お疲れ様、ルシル」見ていてドキッとするくらいに可愛い笑顔を浮かべてそう労った。でもその表情はすぐに険しくなって、「こっちももうちょっと頑張ろうっか」そう言って海面を見下ろした。

「まさか・・・!」

私も海面を見る。と、派手に水柱を上げて飛び出して来たのはやっぱりアウグスタだった。でもこれまでと違ってバリアジャケット――騎士甲冑は見るも無残にボロボロで、息を絶え絶えと言った様子。当然とも言える。さっきまでと違ってシャルに防御を全部抜かれた状態で、私となのはのコンビネーション魔法を受けたんだから。それでもなお存在しているアウグスタの執念や妄執にはもう、脱帽するしかない。

「すぅぅぅ・・・・はやてぇぇぇぇーーーーーッ!」

突然シャルがはやての名前を叫んだ。呆気にとられる私たちを余所に「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、シュリエル! しっかりしろ! いつまで寝てる!? とっとと起きろ!」叱咤した。
シャルの目が、私たちも、って言っているようだったから、「はやて!」私も、「ヴィータちゃん!」なのはも、「シグナム!」アリサも、「シャマルさん!」すずかも、「ザフィーラ!」アルフも、「シュリエルリート!」クロノも、みんなが八神家の名前を何度も叫ぶ。

「??・・・一体なにをし、て・・・え?・・・な・・・」

アウグスタの動きが急にぎこちなくなった。いま自分の身に起きていることが信じられないといった風に目を見開いて、「馬鹿な・・・!」左腕のナハトヴァールを押さえて苦しみだした。

「なのはとフェイトの魔法は確かに届いていたんだよ。はやて達が目覚めるきっかけとしては十分だって言うほどに」

≪カートリッジを全弾ロード≫

“キルシュブリューテ”のカートリッジをロードして刀身に魔力を付加したシャルが「遅刻した償いとして、私がアウグスタをブッ倒す!」そう言って“キルシュブリューテ”を頭上に掲げた。

「キツイの一発! 光牙(リッター)・・・烈閃刃(ネーメズィス)!!」

振り下ろされた“キルシュブリューテ”から放たれた砲撃は、苦しみからか何も行動を起こせなかったアウグスタを呑み込んだ。

†††Sideフェイト⇒はやて†††

『・・て・・』

なにか聞こえる・・・?

『・・やて・・・』

誰や?

『・・はや・・・』

わたしの名前を呼んでるんは・・・?

『・・・は・・て・・・』

なんで呼ぶん? 誰が呼ぶん?

『はやて!』

真っ暗闇の中、わたしの名前が何度も呼ばれる。閉じてるのか開けてるのかも判らん目に力をなんとか入れると、闇の奥、とても綺麗な蒼い光が見えた。声はそこからしてて、その声の主は・・・ルシル君やった。その声に応じようにもこちらからは返答できひんかった。考えることは出来ても声にも出せへんし思念通話も送れへん。

『なのは達が頑張ってくれているから、きっと俺の声も届いてくれていると信じている。目を覚ませ、はやて』

目を覚ませ。そう言われてもわたしは・・・シグナム達の居らん世界になんて戻りたない。ルシル君が居る、すずかちゃん達が居る世界、そこは良い世界やってことくらいは解る。解るんよ。そやけど好きな人や友達が居っても、そこに家族が居らんのは嫌や。

『はやて。頼むよ、帰って来てくれ。シグナム達を喪った現実を見た君が抱いている絶望、言葉にし難いモノだってことは、認めたくないモノだってことは理解できる。俺だって、かつて・・・』

ルシル君・・・?

『・・・でもな、はやて。君はまだ間に合うんだ。シグナム達はまだ生きている。彼女たちは闇の書の一部。だから、君が主として守護騎士の復活を願えば――』

「・・・・・・っ、シグナム達が戻って来る・・・!」

蒼い光が出口やと言うようにパァッと晴れ広がっていって、真っ暗闇がひび割れて崩れてく。そんでわたしは、わたしとシュリエル、アウグスタさんの心が混じり合った真っ赤な世界へと戻って来ることが出来た。

「っ!? 八神はやて!? 馬鹿な、あれだけ精神に損傷を負って、どうして戻って来られた!?」

戻って来てすぐに聞こえたんはそんな驚愕の声。見ればアウグスタさんは蹲るようにして座ってて、目の前に展開されとるモニターを睨み付けてた。モニターにはシャルちゃんがドアップで映って、真紅に輝く刀を一閃。アウグスタさんに呻き声を出させるほどに殴ってた。

「おのれ、私と闇の書の防衛機構を悉く破って来る・・・!」

アウグスタさんが苦しんでる理由はどうやらシャルちゃんのおかげみたいや。それだけやない。わたしを捕まえてる茨が少しずつ絶ち切れ始めてる。それに「シュリエル・・・!」唯一残ってくれてるたしの家族、シュリエルを捕まえてる茨もまた切れ始めてた。

「まずい、まずい、まずい、このままでは・・・!」

本格的に焦り出したアウグスタさんを一度見た後、わたしは「シュリエル、目を覚まして!!」必死に名前を呼ぶ。すると、「止しなさい!」アウグスタさんが目に見えて焦り出したんが判った。やっぱりルシル君の言う通り、まだ間に合うんや。

「シュリエル! シュリエル! シュリエル!」

「やめろ、というのが・・・聞こえな――」

『N&F中距離殲滅魔法!』

『ブラストカラミティ!!』

モニターから聞こえてきたなのはちゃんとフェイトちゃんの掛け声。アウグスタさんが「この状況であの砲撃は・・・!」わたしからモニターに勢いよく振り返った。激しく揺れる動く視界を表すモニター画像の端に映るんはシャルちゃんで、シャルちゃんの身長ほどある桜色の刀を振り回して外のアウグスタさんを滅多打ち。

『『ファイアァァァァーーーーーーーッッッ!!!』』

そんな中で撃たれたんがなのはちゃんとフェイトちゃんの同時砲撃やった。モニターから溢れ出る桜色と黄金の魔力の光が、この赤い心の世界を満たした。するとわたしを捕まえてる茨が一気に絶ち切れ始めて、あと3本にまでなった。見ればシュリエルの茨もほとんどが解けてて、「ん・・う・・ん・・」呻き声を上げ始めた。

『はやてぇぇぇぇーーーーーッ! シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、シュリエル! しっかりしろ! いつまで寝てる!? とっとと起きろ!』

そんな中でシャルちゃんの叱咤の声が響いてきた。

『シグナム!』

『シャマルさん!』

『ヴィータちゃん!』

『ザフィーラ!』

『シュリエルリート!』

シャルちゃんだけやない、すずかちゃん達みんなも家族の名前も一緒に呼んでくれた。うん、何度でも呼んでくれてる。

「おのれ、おのれ、おのれ・・!」

辛そうにフラフラと立ち上るアウグスタさんがシュリエルのところへよろけながらも歩き始めた。脳裏に過ぎるシグナム達が消えてしもうたアノ瞬間。やめさせようと「やめて!」声を出す。

「シュリ、エル・・シュリエル・・・、お願いや、目を・・・覚まして!」

「このままでは、私の夢が、あの御方への御恩が・・・果たせない・・・!」

シュリエルから今度はわたしへと向かって突進してきたアウグスタさん。右手を真っ直ぐわたしに伸ばしてきて、「力づくで・・・堕とす!」頭を絞めつけようとしてきた。

「・・・お願い・・・シュリエルぅぅぅーーーーーーッッ!」

「二度と立ち直れない程に直接精神に絶望を叩き込んでくれる!」

目の前にまで迫って来たアウグスタさんの右手から一切目を逸らさんと見据える。あと少しってところで、「ぐふっ!?」アウグスタさんが大きく横に吹っ飛ばされた。

「っ・・・おはようや、シュリエル・・・!」

「はい。主はやて。遅ればせながらおはようございます。寝坊してしまい、申し訳ありませんでした」

「ええよ。わたしも今日はお寝坊さんやったからな」

アウグスタさんを吹っ飛ばしたんはシュリエルやった。お互いの寝坊っぷりに苦笑しとると、「おわっ?」全部の茨が絶ち切れたことでわたしは落下したけど、そっと優しくシュリエルに抱き止められた。

「おおきにな、シュリエル」

「はい。・・・さて、アウグスタ。お前の無様な旅路もこれにて終焉だ。主はやては目醒め、私を抑え込むだけの力をついに失った。そろそろ私たちの心から退場を願おうか、アウグスタ。いいや、ナハトヴァール!」

シュリエルの言葉にわたしは強く頷いて同意を示した。すると「道具風情が・・・、道具風情がぁぁぁぁぁーーーーッ!」アウグスタさんが怒号を上げて、右手にシグナムの“レヴァンティン”を、左手にヴィータの“グラーフアイゼン”を携えた。

「主はやて。今しばらくお待ちを」

わたしをそっと地面に降ろしたシュリエルが「私たちの家族の武装だ。返してもらおう」そう言うと、アウグスタの手からシュリエルの手へと2人のデバイスが転移してきた。悔しそうに顔を歪めるアウグスタさんへと「終わりだ!」シュリエルが突進。

「おのれぇぇぇーーーーッ!」

「まずは・・・ザフィーラの分!」

――守護の拳――

両手のデバイスを頭上に放り投げたシュリエルは右拳にザフィーラの魔力を纏わせたうえで「ごふっ!」アウグスタさんのお腹にパンチ。

「そしてシャマルの分!」

――風の足枷――

シャマルの魔力光に輝く竜巻がアウグスタさんを空高く吹き飛ばす。シュリエルが遅れてジャンプ。空中で“レヴァンティン”と“グラーフアイゼン”をキャッチした。

「これはヴィータの分!」

――テートリヒ・シュラーク――

「っぐ!?」

思いっきりアウグスタさんの頭を殴りつけたシュリエルは“グラーフアイゼン”を降り抜いて、アウグスタさんを地面へと墜落させた。シュリエルはそれよりも早く降下して、「そして・・・シグナムの分だ!」“レヴァンティン”に炎を纏わせた。

「紫電・・・!」『光牙(リッター)・・・』

モニターに映るシャルちゃんの刀に真紅の光が噴き上がった。対するアウグスタさんは「コード・アブディエル!」ルシル君の魔法の特徴である、コード、ってゆうワードの入った魔力の剣を両手に携えて急上昇。

「一閃!」『烈閃刃(ネーメズィス)!!』

シュリエルの一撃はアウグスタさんの2本の剣を、そんで右肩から左腰にかけて一瞬で斬り裂いた。モニターはシャルちゃんの一撃をまともに受けたことで真紅の光でいっぱい。

「っ、このような・・・」

これで内と外のアウグスタさんが同時に攻撃を受けたことになる。斬られた個所に炎を燻らせながら地面に叩き付けられたアウグスタさん。それと同時に血みたく真っ赤やった地獄のようなこの世界全体が一斉にひび割れて砕け散った。新しい世界は一言で言えばとても綺麗な「夜空・・・!」やった。まるで星の海を漂ってるようや。

「主はやて。防衛プログラム・ナハトヴァールの支配が弱まりました」

「うん!・・・シュリエル。こっちに来てくれるか?」

「え?・・・はい」

アウグスタさんがフッと吹けば砂のお城のように脆く崩れ去ってしまいそうなほどに弱ってる今なら。そやからここで、そしてこれからわたしがすべきことを想う。そのためにアウグスタさんを警戒してるシュリエルにこっちに来てくれるようお願いした。

「まだよ・・・まだ、まだ終わりじゃ――」

自分の体が崩れてもなお立ち上ったアウグスタさん。

「止まって!」

「っ!?・・ぁ、ぐ、あ・・・か、体が・・・?」

思うた通りや。アウグスタさんはもう、主のわたしより下の存在になってしもうてた。両脚が崩れて倒れ伏したアウグスタさんはただ、「うぅ・・ぅ・・」呻き声を上げるだけになった。

「主はやて・・・?」

「あんな、ずっと考えてたことがあるんよ」

わたしはシュリエルの顔へと両手を伸ばす。と、シュリエルはスッと片膝立ちしてわたしの手が届くまでにしてくれた。わたしはそっとシュリエルの両頬に手を添えて、とっても綺麗な深紅の瞳を覗き込む。

◦―◦―◦回想や◦―◦―◦

「なぁなぁ、ルシル君。クリスマスの日な。すずかちゃんが、みんなをお家に招待してクリスマスパーティをやるんやって♪ わたしらみんなもお呼ばれすることになったんよ」

シグナム達と暮らし始めてから随分と久しぶりにルシル君と2人きりになれた。シグナムとヴィータとザフィーラは蒐集活動で、シャマルとシュリエルは買い物や。以前と同じように2人してソファに腰掛けてのんびり過ごす。

「へぇ。じゃあ、イブは俺たち家族だけでパーティでもしようか?」

「うんっ、そうやな、それがええな!」

イブは家族だけで、本番は友達みんなで。今年は最高のクリスマスになりそうや。去年は石田先生と2人きりやった。別につまらんかったとか、そんな後ろ向きな気持ちやなかった。けど、どこか寂しかった。でも今年はちゃう。みんなが居る。期待に胸膨らませてると「・・・はやて」ルシル君がわたしを呼んだ。

「ん?・・・っと!」

左隣に座るルシル君に振り向く。と、ルシル君がジッとわたしの顔を見てたから心臓がドキッと跳ねた。なんとか顔を逸らすようなあからさま反応をせんように出来たけど、ちょう怪しいよなぁ~今のは。

「えっと、どないしたん?」

「・・・闇の書の主は今、君だ」

「へ?・・まぁ、そうやなぁ」

「で、だ。闇の書の管制人格であるシュリエルリート。その名を与えたのはかつての主であるオーディンだ」

「う、うん。それで・・・?」

「もし、君が彼女に名を与えるとしたら・・・どうする?」

「・・・・はい?」

突拍子もないことを言われた。わたしがシュリエルに名前を与えるとしたらどうする?って。正直「そんな今さらな」や。すでにシュリエルリートで定着しとるし、シュリエルもオーディンさんから貰った名前を大切にしとるし。それを変えるなんて。わたしなんかに出来るわけが・・・。

「シュリエルリートはあくまで管制人格である彼女に付けられた名称なんだ。闇の書。この忌まわしい名前はあれから変わっていないんだ」

「あ・・・!」

言われて初めて気が付いた。確かにそうや。わたしらはシュリエルリートと“闇の書”を別個として考えてる。うん、シュリエルリート自体は“闇の書”の名前やない。ルシル君は「闇の書。呪われた名前。かつては別の名前が有ったらしいが」って続ける。

「シュリエル達がアレを闇の書と呼んでいる時点で、かつての名前は失われているんだろう。だから・・・今の主である君が、闇の書に新しい名前を与えてやってくれ。きっとそれが救いになる。なに。はやての考えた名前なら、きっと彼女たちも喜んで受け取ってくれるはずだ」

「わたしが・・・新しい名前を・・・」

「そう。君が」

ルシル君と向かい合ってるんが恥ずかしい・照れる、なんてことを考えられへん程にわたしの頭の中はそれいっぱいになった。

◦―◦―◦回想終わりや◦―◦―◦

「なぁ、シュリエル。もし、もしやけどな。わたしが新しい名前をあげる、って言うたら・・・どうする?」

おずおずと訊いてみる。目を点にしてるシュリエルを見てわたしは「あ、あんな、もう闇の書とか呪われた魔導書とか呼ばれさせたくないんよ!」焦る、焦る。ずっと前から思うてたことを今、伝える。

「シュリエルリート。うん、めっちゃ綺麗な名前や。・・・綺麗すぎて、わたしなんかが考えた名前なんかよりずっとええ。そやから断ってもええんよ?」

「・・・主はやて」

「う、うん」

見惚れてしまうほどに綺麗な微笑みを見せてくれたシュリエルがわたしの両手に手を添えてきた。

「シュリエルリート。この名を頂いたとき、私はとても嬉しく、幸せでした。この名を主であったオーディンやシグナムら騎士たち、当時共に過ごしていた友たちに呼ばれることが、どれほど嬉しかったか」

「うん・・・」

あぁ、これはアカンな。当時を思い返してるシュリエルは優しい表情を浮かべてる。

「ですが、その名を返上する時が来たようです。災厄撥ねし魂・導き果てぬ絆・希望の守り手、シュリエルリート。実は、この名は時限付きの名前なのです。オーディンと同じ意思を持って私たち闇の書を家族として導いてくれる主が現れるまでの。そう。主はやて。あなたと出逢えるまでの・・・」

シュリエルは笑みを浮かべて、「私に新たな名を頂けますか。主はやて」そう言ってくれた。そやから「うん!」強く頷き返した。

「災厄撥ねし魂・導き果てぬ絆・希望の守り手、シュリエルリート。
これまで多くの災厄を撥ね退けてきてくれたその気高い魂にありがとう。わたしらとの出逢いまで果てること無く導いてくれたこの絆にありがとう。わたしらの未来に光を灯してくれる希望を守ってきてくれたその手にありがとう。
かつての主、オーディンさんから与えられたその名を今ここに空へと返上する。そして、新たな夜天の主の名において、汝と魔導書に新たな名を贈る」

オーディンさんはきっと、わたしの父さんや母さんのようにお空からシュリエル達のことを見守ってくれとるはずや。そやからオーディンさんの居るところへ還すんがええやろ。

「強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール・・・、リインフォース」

「っ!」

シュリエル――ううん、リインフォースの目から涙が零れた。それに名付けたと同時、わたしらから発せられた光によってこの世界からアウグスタさんが完全に消滅した。それを見たリインフォースは涙を拭うことなく、「これが、私たちの救いだったのですね・・・オーディン」この心の世界での夜空を見上げた。

「我が主はやて。新名称リインフォースを認識いたしました。オーディンによって名を付けられた時とは違い、魔導書の完成後かつ管制プログラムであり融合騎である私との融合状態、そして暴走状態が緩和である今、管理者権限の全てが使用可能となりました」

「それってつまり・・・!」

「はい。帰ってきますよ、あなたの騎士、そして家族が・・・!」

「そうか・・・!」

堪らずリインフォースに抱きつくと、リインフォースもわたしの背中に手を回して抱きしめ返してくれた。シグナム達が帰って来てくれる。それに、全ての権限が使えるゆうことは、リインフォースを暴走させんように出来るとゆうことや。やっと、終わらせられるんやな、リインフォース達の辛い旅路を。

「リインフォース。さっそくみんなを戻そか」

「はい。どうぞ願ってください、主はやて」

“夜天の書リインフォース”を手元に呼び出してページを開いて、「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。みんな・・・戻っておいで! 一緒に帰ろう、わたしらの家へ!」そっとページを指でなぞる。

「リンカーコアを回帰、守護騎士システムの破損を修復・・・完了。再起動します」

トクンと心臓が跳ねる。シグナム達との繋がりを取り戻した感じや。うん、4人の鼓動を感じることが出来る。

「主はやて。あとは・・・」

「アウグスタさん・・とゆうよりはナハトヴァール、やね」

「ナハトヴァールを切り離すことは出来ました。ですが、そのあまりにも膨大な力をそのまま外に出してしまった状態です。今ここで確実に討たなければいけません」

「それは大丈夫やろ。わたしとリインフォース、ルシル君、シグナム達。それにすずかちゃん達も居ってくれるからな。・・・さぁ、行こか、リインフォース」

「はい、我が主はやて。あなたや家族たちと共に、どこまでも」

そうや、もう恐れることはなんも無い。そやから現実に帰ろう。みんなが待ってくれてる、あの世界に。

†††Sideはやて⇒ルシリオン†††

「ブラストカラミティ、か。またとんでもないコンビネーション魔法をぶっ放したなぁ」

モニターに映し出されていたなのは達とアウグスタの戦闘を見終えた。なのは達が束になっても決定打を与えることが出来なかったアウグスタだったが、それもようやく終わりを迎えた。「シャル」の参戦と共に。
対する俺はなのは達の邪魔にならないように注意しながら、アウグスタの召喚した希望スペスと信仰フィデスを撃破することに成功。いくつか記憶を失ったようだが、今はこうして五体満足で存在できている。それに十分すぎるほどに休憩を得ることも出来た。アウグスタがゴキ○リのごときしぶとさを見せてくれたおかげだ。

『ルシリオン君。もう動いても大丈夫なのかしら? だとしたら申し訳ないのだけど・・・』

「ええ、判っています、ハラオウン提督。あの子たちと合流します。と言っても、今さら俺ひとり加わっても問題ないように見えますが」

アースラとの通信が繋がり、今まで俺の為に展開してくれていたモニターが消え、新たにリンディさんの映るモニターが現れた。

『今は少しでも手札が欲しいのです。あなたの常識に縛られない魔法はきっと、あの子たちの役に立つはずです』

シャルが加わってからというもの、ワンサイドゲームと成り果てていた対アウグスタ戦の戦況がガラリと変わった。シャルが居れば問題ないと言えるような。しかし気になるのは、シャルが絶対切断能力を使い、そして紅翼ルビーン・フリューゲルを使っていることだ。
絶対切断能力についてはまぁ、疑問は抱くことはない。オリジナルの“キルシュブリューテ”は前世のシャルの魂と共に転生した。その能力を現世のシャルが引き継いでいたとしてもなんら不思議じゃない。

「・・・まぁ、このまま観戦するつもりはないですけど」

だが、紅翼は少し疑問だ。俺との戦いでは律儀に魔法陣を足場として戦っていた。その時はまだ飛べなかった。それから3日と経たずにあれほど完璧な飛行能力を得ることが出来るのか、とな。なのはやすずかのような天才なら出来るだろうが、シャルとなると・・・。あともう1つ。術式名の変化。レーベンヴェルト語を使うのは前世のシャルだ。ここまでかつての彼女との共通点が表に出ているとなると、もしかすると今の彼女は・・・。

(とにかく。今ははやて達の元へ行こうか)

――瞬神の飛翔(コード・ヘルモーズ)――

剣翼12枚・蒼翼10枚を背に展開し、空へと上がる。目指すは白い魔力の柱がある海上。あれは先の“闇の書”事件でも見た、はやて達の復活の証明だ。飛行速度を上げて一直線に海上を目指し、肉眼で魔力の柱とその周りにたむろしているなのは達を捉えるところまで来た。
真っ先に俺に気付いたのは「ルシル!」シャルだった。ドキッとした。完全に俺の知っているシャルの笑顔だったからだ。いきなり抱きついて来ようとしたためヒラリと躱し、「んもう!」それでもなお諦めないため、顔面を右手でガシッと掴む。

「なのは、フェイト、アリサ、すずか、アルフ、クロノ、あとシャル。本当にありがとう。心より礼を言うよ」

深々と頭を下げて感謝する。するとなのは達は笑顔で強く頷き返してくれた。だと言うのに「ルシル~❤」この馬鹿は。掴んでいる右手を放してすかさずシャルの広い額にチョップを繰り出す。

「みゃ゛っ!?」

『いい加減にしろ。君は、前世のシャルだな・・・?』

念話でシャルに確認を取ってみる。するとシャルは攻めを中断して『久しぶり、私の初恋(ルシル)』そう返事をした。確定だ。今のシャルはイリスではなく、正真正銘のシャルなんだ。見詰め合う俺とシャルを訝しみながら見ているなのは達の視線は心地がちょっと悪いため、「まぁ、なんだ・・・」コホンと咳払いをひとつ。

「ま、戯れもここまでにしないとね」

シャルが俺から離れて行き、魔力の柱へと視線を移したことで俺たちもそっちへ振り向く。柱の途中にははやての居る球体状の魔力塊、その周りにはシグナム達の居る4つの魔力塊がある。それらが一際強く光を発した。さぁ、目覚めの時だ。

「我ら、夜天の主のもとに集いし騎士」

「主在る限り、我らの魂尽きることなし」

「この身に命ある限り、我らは御身のもとに在り」

「我らが主、夜天の王、八神はやての名のもとに」

最初に姿を見せたのはシグナムたち守護騎士だ。足場としてそれぞれの魔力光に輝くベルカ魔法陣の上に立っている。なのは達がそれぞれ名前を呼びつつ喜び合っている姿を見ていると、「頑張ったね、ルシルもさ」そっと俺に耳打ちしてきたシャル。俺はそれに「そうでもないさ」と微苦笑を返すだけ。
アウグスタという邪魔者の存在さえなければ、と思ってもいたが・・・この結末でも十分あの子たちとの絆を確かなものに出来た。そう、これは先と同じだ。下手に歴史を改変させようとせずともこういう流れになるのだとしたら・・・。俺は空回りしていただけなのかもな。

「「はやてちゃん!」」「「はやて!」」

っと。我ら八神家の主、はやての目覚めだ。騎士甲冑のインナー姿で、右手には剣十字の杖・“シュベルトクロイツ”が握られている。そして“シュベルトクロイツ”を掲げたはやてが「夜天の光に祝福を! リインフォース、ユニゾン・イン!」と告げた。はやての側に寄り添うように飛んでいたリインフォースのリンカーコアが彼女の胸へと入り込んだ。

「リインフォース、か。やはりその名前になるんだな」

「何か言ったか、ルシリオン?」

「いいや。なんでも」

クロノにそう答えた俺は、岩の柱の上に降り立ったリインフォースとのユニゾンを終えたはやてや、それを見守っていたシグナム達、なのは達を離れたところから見守る。


 
 

 
後書き
フーテ・モールヘン。フーテ・ミッタ-フ。フーテ・ナーフオント。
ちくしょう、今話でも終わらなかった! 決戦に入ってもう5話目だというのに! これが一人称視点での弊害か! どうして無駄に描写を入れてしまうのが問題だと判ってはいるのですが、どうしても削減できない!
まぁ、とにかく。次回で本当に、本当の最終決戦です。長かったなぁ。

 
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