貴方がいなければ祖国もない
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第八章
「無慈悲なサボリ!」
「無慈悲な早退!」
「無慈悲な遅刻!」
「無慈悲な居眠り!」
「無慈悲な早弁!」
「全部やったら駄目だからな」
先生も僕達に合わせて言ってくれた。
「一つでもやったら無慈悲な生徒指導室だぞ」
「うわ、本当に無慈悲ですね」
「容赦しないですね」
「当たり前だ、先生も家に帰ったら無慈悲な奥さんが待っているんだぞ」
先生の話が一番無慈悲そうだった。
「生徒指導室も当然そうなる」
「何か理屈通らないですけれど」
「何となくわかります」
「とにかく俺達無慈悲になんですね」
「生徒指導室行きになるんですね」
「そうだ、そんなことをすればな」
僕達が無慈悲な何かをしたその時はだ。
「無慈悲には無慈悲だ」
「あの将軍様みたいに」
「そうなるんですね」
「そういうことだ、無慈悲にわかったな」
「はい、無慈悲に理解しました」
「無慈悲にしません」
とにかく無慈悲だった、このネタはかなり使えた。そして。
最近見ないがだ、あのニュースになるといつも叫んでいるあのおばさんのネタもしてみた、とりあえず寂しい。
そうしたこともしながらだ、僕達は楽しみ続けた、ネタとして。
「国家主席になるんだ、俺」
「私総主席よ」
「じゃあ僕第一書記」
「国防委員長にも」
とにかくネタには尽きなかった、今も。確かにとんでもない相手だけれど。
僕達は今度の将軍様もネタにしていっている、離れて見ていればギャグだ、本人達はそうは思っていないだろうけれど。
それでだ、僕は学校の皆にこうも言った。
「早く潰れて欲しい国なんだよ」
「悪事の限り尽くしてるからな、リアルで」
「拉致、麻薬、武器密造、偽札、核開発、弾圧、粛清ってね」
ヤクザ屋さんより遥かに悪質である。
「国民は餓えてて一人だけ丸々と太ってて」
「軍隊ばかりお金注ぎ込んで」
「軍隊と贅沢だけで国家予算のかなり使うとか」
「どんな悪なのか」
「もう極悪非道よね」
「信じられないレベルの」
皆もこう言ってくれる、僕も同意見だ。
だが、だ。それでもだった。
「こっちに危害を加えてこない限りはね」
「見ている分にはな」
「面白いのよね」
「ギャグだから」
「何から何まで」
「うん、あくまでこっちに何もしてこないっていう条件だけれど」
実際にはこのことも難しいけれど。
「潰れると寂しいかな」
「そうしたところのある国だよな」
「ネタとしてね」
「そうした国だよね、あの将軍様もね」
今度の将軍様もだった、とにかくだった。
僕はそうしたものを将軍様にもあの国にも見ていた、皆と一緒に。少なくとも笑いはしていた、ネタとしてであっても。
貴方がいなければ祖国もない 完
2014・6・1
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