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マンハッタン=レクイエム

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第三章


第三章

「だからな。やっぱり欲しいさ」
「左様か」
「しかしそれがどうしたんだい?」
 ギリアムは屈託のない笑顔になってだ。そのうえで老人に問い返した。話をしているその間にもだ。店の仕事はしっかりと続けている。
「若しかしてストアでもくれるってのかい?」
 これは冗談での言葉だった。
「爺さんの店でもな」
「そうだと言えば?」
 老人の今の言葉はこれだった。
「どうするのじゃ?」
「えっ!?」
「わしも歳じゃしな」
 そしてこう話してきたのだった。ギリアムに対してである。
「引退して店はもうやめておってな」
「おいおい、マジかよ」
「テナントは開けておる」
 老人の言葉が出され続ける。
「賃貸しじゃがどうじゃ?金があればな」
「その話本当かい?」
 ギリアムはまた真剣な、それもかなり問い詰めるものを中に含ませてだ。その顔で老人に対して問い返す。そうせざるを得なかった。
「冗談じゃないよな」
「金によるがな」
「多少はあるぜ」
 真剣な顔のまま言葉を返す。
「冗談抜きにな」
「そうか。それなら話をするぞ」
「ああ、それじゃあな」
 こうして老人の話を聞く。金のことは充分話が通じた。むしろその金のことはだ。ギリアムにとっては信じられないまでに安かった。
 それでだ。驚いた顔になって言うのだった。眉は顰められている。
「失礼なことを言うぜ」
「何じゃ?」
「詐欺とかじゃないよな」
 そう言ってしまう程のものだった。
「ニューヨークでその料金かよ」
「うむ、そうじゃ」
「じゃああれか?サウスブロンクスとかハーレムでも特に治安が悪いとかか?」
「最近どっちも治安がよくなってるじゃろ」
「まあな」
 ニューヨークも一時に比べて治安がかなりよくなっている。地下鉄も奇麗になりかつての犯罪都市という汚名はかなり払底されている。
「それはな」
「住所は行ったな」
「ああ、マンハッタンな」
「そこじゃよ。それでその料金じゃ」
「嘘みたいだな。何だ?店で殺人事件でもあったか幽霊でも出るのか?」
 今度はこんなことを言うギリアムだった。
「それで安いのか?」
「そうしたこともない」
 このことも否定された。
「安心するのじゃ」
「じゃあ本当にその料金か」
「マンハッタンでじゃ」
「こういうのを僥倖っていうのか?」
 ギリアムの顔も言葉もいぶかしむもののままだった。
「本当にな」
「そう思うなら思ってくれ」
「じゃあそう思わせてもらうぜ」
「では。それでいいな」
「願ったり叶ったりだ。じゃあそこに入らせてもらうぜ」
 真剣な顔で述べたギリアムだった。
「それじゃあな」
「そういうことでな。さて」
「ああ、詳しい話するか」
 これから老人と何度も話してだ。話を決めた。そうしてであった。
 ギリアムはテナントに入った。そこでホットドッグ屋を出した。彼の店はここでも公表だった。店の設備が充実した分売り上げはさらに伸びた。
 
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