美しき異形達
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第九話 風の力その十一
「おい、まずいだろ」
「桜さん動かないわね」
「今は」
「ああ、どうするつもりだよ」
こう言うのだった。
「一体」
「見ていましょう」
ここでだ、こう薊に言った菖蒲だった。
「今は」
「まだかよ」
「桜さんにも考えがある筈よ」
「だからか」
「そう、いざとなればでいいわ」
自分達の助太刀は、というのだ。
「まだ今はね」
「そうか、じゃあな」
「見せてもらいましょう」
「桜ちゃんの闘い方をか」
「そして力も」
それもだとだ、菖蒲は薊だけでなく菊にも言った。そしてだった。
今は桜の闘いを見た、見ると。
桜は上から来る怪人の攻撃を左右に動いてかわしていた、その動きはというと。
「テニスね」
「ああ、だよな」
薊は今度は菊の言葉に頷いた。
「あれは」
「テニス部だけはあるわね」
「テニスってフットワークだからな」
「そうそう、優雅でお洒落なイメージがあるけれど」
「実際は激しいスポーツだからな」
「カロリー消費は凄いわ」
「そうなんだよな、あたしも時々するけれどさ」
身体を動かすことが好きな薊ならではだ。
「いい運動になるよ」
「桜ちゃんの闘いにも生きてるわね」
「そうだな。けれどな」
「けれど?」
「テニスは闘うものじゃないだろ」
「スポーツよ」
純粋な、というのだ。
「貴族の間で生まれた」
「あっちのな」
「そうよ、だからね」
「闘いには向いてないよな」
「そう思うわ、私も」
この辺りは三人とは違う、三人友戦いに役立つ部に入っている。しかしこのことに疑念と不安を抱く二人にだ、菖蒲はこう言った。
「大丈夫よ、テニスでも」
「えっ、そうなのかよ」
「闘えるの?テニスでも」
「スポーツの起源を考えたらね」
それならというのだ。
「大丈夫よ」
「ああ、スポーツの起源ね」
菊の方が先にだった、菖蒲の今の言葉を理解して頷いて応えた。
「スパルタだったわね」
「そう、スポーツは身体を鍛えるものね」
「戦いに備えてね」
「それがはじまりだから」
「テニスもなのね」
「スポーツならね」
戦いの為に身体を鍛えるものになる、だからだというのだ。
「同じよ」
「そういうことね」
「言われてみればそうか」
薊もだ、ここで納得して言った。
「テニスも一緒だからな」
「そう、安心していいわ」
「だよな、じゃあ」
「ああ、戦えるわ」
怪人とも、というのだ。
「どういう戦い方かはまだわからないけれど」
「安心して見てていいか」
「さしあたってはね」
そうだと言ってだ、菖蒲はいつものクールな様子を崩してはいなかった。薊と菊もその菖蒲を見てそうだと確信して。
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