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美しき異形達

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第九話 風の力その五

「だからあたし西って言ってるんだけれど」
「そういうことですか」
「広島のお好み焼きも美味いんだよな」
「はい、ただ」
「ただ?」
「関西では広島のお好み焼きはお好み焼きと呼ばないので」
 だからだとだ、桜は薊に穏やかな口調で話した。
「広島焼きと呼びますので」
「だから関西って言ったのかよ、あんた」
「そうです。広島焼きも美味しいですよね」
 桜はこちらにも偏見はなかった、にこりとしての言葉だった。
「このお店は広島焼きもありますので」
「じゃあそっちもか」
「はい、後で召し上がりましょう」
「そうしような、さて後は」
「後は?」
「お好み焼きならサイダーだろ」
 この組み合わせを出すのだった、ここで。
「それだろ」
「あっ、それですね」
「やっぱりお好み焼きならそれだろ」
「サイダーですよね」
「コーラもいいけれどさ」
「第一はやはりサイダーでしょうか、今は」
 お好み焼きなら、というのだ。
「私にしましても」
「だよな、じゃあ」
 ここで四人を見回してだ、薊は言った。
「皆も頼むよな、サイダー」
「ええ、私もビールがいいわ」
「私もよ」
「私もそれにするわ」
 菖蒲と菊、それに裕香が答えた。勿論桜もそれだ。こうして桜を入れて五人になった一同はサイダーも頼んだのだった。
 そしてだ、薊はお好み焼きを食べてからサイダーを飲んでだ、そのうえで満面の笑顔になってこう言うのだった。
「いやあ、何でこう合うかね」
「粉系とビールって最高に合うわよね」
 裕香もこう言う。
「たこ焼きでもいか焼きでも焼きそばでもね」
「だよな、やっぱりこれだよな」
「ええ、ただね」
 ここでこう言った裕香だった。
「麦と麦よね」
「ああ、小麦と大麦だからな」
「ビールは飲むパンって言われるから」
「炭水化物ばっかりか」
「そこがちょっと気になるわね」
「そういえばそうだよな」
 薊は大ジョッキでサイダーを豪快に飲みつつ応えた。
「この組み合わせは」
「考えてみればね」
「美味しいけれどな」
 それでもだとだ、また言った薊だった。
 しかしサイダーは飲み続ける、それでだった。
 桜にだ、あらためて声をかけたのだった。
「それで桜ちゃんのバイクだけれど」
「あのバイクですね」
「いいバイクだよな」
「はい、愛車です」
「お家のバイクかい?」
「そうです、姉さんから譲られまして」
「へえ、お姉さんいるんだな」
 このことも知った薊だった、他の面々も。
「というかお姉さんもバイク乗るんだな」
「そうなんです、もう就職していまして。就職先は八条オートバイです」
「バイク好きだからそこに就職したのね」
 菖蒲はこう考えて述べた。
「そうなのね」
「そうです、とにかくバイクが好きでして」
「それで貴女もなのね」
「はい、オートバイが好きです」
 穏やかな笑顔でだ、桜は菖蒲に話した。
「見ることも乗ることも」
「そのキャラでバイク、しかもああいうのは」
 ここでこう言ったのは菊だった。 
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