メタトロン
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第二章
第二章
「その場合は滅ぼすのか」
「それが私への問いか」
「如何にも。どうするのだ」
メタトロンは彼を見据えながら言葉を投げ続ける。
「貴様は。どうするのだ」
「答えるべきなのだな」
「答えないことは許されない」
メタトロンは最初からそれはないとするのだった。
「そういうことだ」
「わかった。それではだ」
「うむ。どうするのだ」
「まず神が仰ったことは絶対だ」
これはだ。前提だというのである。
「それは言っておこう」
「そうか」
「そしてだ」
神父はさらに話す。
「神が真に神ならばだ」
「それで従うというのか」
「その通りだ。まずその神が私が仕える真の神ならば従う」
こう前提を置くのだった。
「まずはその前提が必要だ」
「ふむ、それでか」
「そしてだ」
神父の言葉は続く。
「私に罪があれば神はそう仰るだろう」
「死ねとか」
「そしてその者に罪があればか」
「殺すか」
「如何にも。まずはこの二つから答えよう」
この前置きが話された。
「そして」
「そしてか」
「神は仰った。自ら死を選んではならない」
このことを話す。神の教えではだ。自ら死を選ぶことは許されていないのだ。
「そしてだ」
「そしてか」
「そうだ。人を殺してもならない」
このことも言うのだった。
「人が人を裁くのか」
「神の言葉でもか」
「神は自ら言われたことを覆されることはない」
その信仰を話した。
「そうだからだ。私に死ねと仰る筈がない」
「そう考えるのだな」
「そして神は仰った。人が人を裁くのではなく」
「神だな」
「神が裁かれる。ならば私がすることではない」
「では世界を滅ぼすこともか」
「それだな」
三番目にして最後の問いにもだ。彼は答えるのだった。
「それについてだが」
「どう考えているのだ」
「これもまた神が私に命じられる筈のないこと。その時は神が自らそうされるだろう」
「神が御自身でだな」
「世界に罪があればだ。だが」
「だが、か」
「神が世界を滅ぼされることは有り得ない」
断言であった。
「それは絶対にない」
「ないか」
「そうだ、有り得ないことだ」
そうだというのである。
「何があろうともだ」
「何故ないと言える」
「神は人を作られたな」
「うむ」
「神は過ちを犯されない」
よく言われていることだ。彼は今それを天使に告げたのである。
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