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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十三章
  到着×再会

「一真様!良くぞお越し下さいましたな!」

「幽、久しぶり。元気そうで何よりだ」

「三好衆の動きを、自ら偵察しに行くぐらいは、そこそこ元気でしたな」

「おいおい。危険な事を余りしない方がいいぞ。お前は幕府の柱石なのだから」

「それがしぐらいしか、大物見が出来るものがおりませんからなー。致し方無し」

「まあ、無事で良かった」

「無事といえば、良い時機でのお越し。よくぞ無事に来られましたな」

「仲間が増えたからな」

「ふむふむ。着実に力を付けているようで。さすがは神様で在らせられる一真様、と申し上げておきましょう」

「褒め言葉として受け取っておく。一葉は?」

「ただいま寝所に在らせられますが、いつもと同じであるならば、まだご就寝されてはいないでしょうな」

「もしかして眠れてないのか?」

「はい。三好衆の動きが活発になり、楽観してもいられなくなりましたからな」

「城内の守備兵は?」

「およそ二百、と言ったところでしょうな。・・・・最近は、まるで沈没する船から逃げ出す鼠のように、兵も侍も逃げ出す始末でして」

「そうか。・・・・じゃあ二条館を守るのは、俺達が連れて来た兵と合せて三百で、黒鮫隊は全隊員三百だから合計で六百だな」

黒鮫隊無しだったら正直辛いが、黒鮫隊有りだとかなり有利となる。三好衆は三千と言っていたが、大丈夫だろう。俺達が死守してる時に久遠達本隊が来てくれると有り難い。が、俺が最も心配してるのはドウターゲートが、一体いつ開くのかが問題だ。ドウターを殲滅できるのは黒鮫隊のみ。MSも持ってきてるし、毎日整備させているから問題はない、総合整備士はイアンだ。完璧にやっているだろう。

「ひよ、ころ、梅!」

「はいっ!」

「ただいま!」

「どうしましたのハニー?」

「三人には、二条館防衛の布陣を任せる。敵が来るとしたら・・・・」

「南。桂川を越えて二条館に至る道が王道でしょうな」

「なら南からの侵攻に備えておけ。俺は一葉に会いに行ってくる」

「分かりましたわハニー。行ってらっしゃいませ」

「ううー、緊張しますねー・・・・」

「何を言ってますのひよさん。こういう逆境こそ、武士の名聞を稼ぐ格好の機会ではありませんか」

「武士の名聞!?うー!ひよ頑張っちゃいます!」

「それでこそ一真隊の隊員第一号ですわ!共に頑張りますわよ!」

「おーっ!」

「よし。その前にと、聞こえるか!黒鮫隊諸君」

俺は通信機を左耳に付けて言った。全隊員の代表として劉零が返事をした。

『こちらはいつでも準備完了です』

「では野郎共、MS隊はいつでも出れるように準備。確か10~20機あったよな?」

『はい。ジンクスⅣが10機、ブレイヴが5機、サバーニャ1機、ハルート3機、インフィニットジャスティス1機と隊長専用機のストライクフリーダムです。全機イアンさんと整備兵が、毎日のように整備をしております』

「では、MS隊の男性隊員20名はパイロットスーツに着替えて一応待機してろ。残った男性隊員はこちらへ来い。IS部隊である女性隊員はトレミーで待機。敵である鬼が来たら俺が合図を送る。それまでは待機していろと」

「了解しました。すぐに指示を出します」

と言った後に、80名の男性隊員の準備が出来たとの事で、空間に歪んで全員到着。目の前に出てきた事に、幽と梅は少し驚いていた。

「ひよと梅、それにころは一真隊の実働部隊の指揮を頼む。黒鮫隊諸君は、指示があるまで待機。狙撃者は、この館の屋根に上がり待機。その他は実働部隊と一緒にいろ。俺と詩乃、エーリカと鞠。あれ鞠は?」

「スーッ・・・・スーッ・・・・」

「まだ眠っておりますが、起こしましょうか?」

「いやいい。俺が起こす。鞠ー。二条館に着いたから起きろー」

「ん、ん~・・・・・ふぁぁぁぁぁぁぁ~・・・・・あふぅ」

「おはよう鞠。良く眠れた?」

「んとー・・・・あれぇ?一真、ここどこぉ?」

「二条館だ。今から一葉に会いに行くから、鞠も一緒に来るだろう?」

「一葉ちゃんっ!?鞠も行くの!」

眠っていた荷駄からピョンッと飛び降り、鞠は俺にしがみついた。

「さてと、改めて黒鮫隊は指示があるまで待機。敵が来たら知らせろ。では、ひよ。行ってくるよ」

「はいっ!行ってらっしゃいませ!」

ひよと黒鮫隊の者達に見送られた後、幽の先導の元、二条館の奥に進む。館の中には気配が感じない。気配がないのか寒気が感じる。

「一真様が来られたという事は、織田殿も近くまで来ているのですか?」

「観音寺城を落とした後、少々予想外な事が起きてな。今は瀬田の大橋に陣を敷いて、軍勢の再編成をしているはず」

「ほお。もうそのような所まで・・・・。予想外というのは気になりますが、お味方は目と鼻の先に来てくれたのはとても有り難い事ですな」

「その予想外の所為で先行して来たんだけどね。後続を待っているから態勢を整えるのに時間が掛かる。なので俺達だけ先行して来た訳」

「二条館防衛のため、ですか」

「そういう事だ。寡兵だが、いないよりマシだろ?」

「マシも大マシでございますよ。・・・・恥ずかしながら、今の幕府は碌に兵も雇えず、幕臣でさえ逃げ出す始末。どのようにして三好の攻撃を防ぐか、そればかりを考えておりましたからな。ですが、一真様の入城を偵知されていれば、それがきっかけとなり三好・松永の衆が押し寄せるやもしれません」

「ん?もしかしてまだ知らんのか?」

「・・・・と申されますと?」

「さっき言った予想外の事は、松永弾正少弼が久遠に降伏を申し出てきた事だ」

「ひょ・・・・・・・・っ!?」

奇声を上げた幽は、俺の顔を見ながら固まってしまう。

「それは・・・・初耳ですな」

「さっきの奇声で充分驚いたようだな。一葉に会ってこの事を言った後に、その後の対応策を考えた方がいいな」

「そうですね。今はとにかく一葉様と打ち合わせをするのが第一かと」

「ザビエルの事も確認しないとな」

「はい。ザビエルが絡んでるとなれば、此度の二条館防衛、一筋縄ではいかない気がします」

しばらくして歩くと、幽が止まった。この部屋にいるのかと。

「夜分に失礼致します。織田より先駆けとして一真様が来てくれました。お通ししても宜しいですか?」

「許す」

「はっ」

「一真か。久しいな」

そう言った一葉の声には少し張りがなかった。特徴のある威厳を感じさせない声音でもないし。

「久しぶりだな。余り元気そうでは無さそうだ」

「壮健であった。・・・・と言いたい事でもあるのだが。中々そうも言えんのが現状であろうよ。じゃが、まぁそれなりに安全には過ごしておったぞ」

「それは何よりで」

そう言いながら、俺は一葉の前に腰を下ろす。通信機は付けたまま。

「お久しぶりでございます、一真様」

「久しぶりだな双葉。無事で良かった」

「うふふ、お陰様で」

「双葉には、何だか優しい声音じゃな。余にもそのような声で言ってほしいのじゃ」

「そこは雰囲気だ。双葉は姫さんだけど一葉はだな・・・・」

「悪童ですな」

「そうそうそれそれ。まあ俺も立ち位置的には神何だが、一葉は将軍というよりそっちの方だ。公方と言うのを忘れる」

「むぅ・・・・一真に言われると心外じゃな。立ち位置は同じか余より上のはずじゃのに」

「そんな事よりまずは情報交換した方がいいぞ。まずはそっちから話してくれ」

「分かっておる。幽、報告してやれ」

「承知。では不肖それがしよりご報告致しましょう」

軽く頭を下げた幽が、ゆっくりと口を開いた。まず俺達が京を去ってからしばらくは、平穏な日常が続いたと。だが、その平穏が破れて、緊張感が漂うようになったのは最近の事。久遠と密約を交わした一葉は、将来に備えて二条館の塀や堀、門の改修を命じた。それがどうやら三好・松永の徒を不用意に刺激してしまったようだった。一葉曰く元より覚悟はあったと。ゆっくりとだけど、確実に緊張感が溢れる中、京に届いた織田上洛の噂だ。噂を確認と同時だったが、織田勢が観音寺城を落としてしまって、三好・松永の徒の狼狽は、極減まで張り付いてしまった。 
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