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戦国異伝

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第百六十二話 ならず聖その十二

「幾ら何でも」
「うむ、まして戦うのならな」
「ここで逃げることもないな」
「そうじゃな」
 滝川も言う、彼等は彼等の中の考えから述べた。
「まずないな」
「そうじゃ、石川五右衛門がいたことは間違いないにしても」
「仕事を受けるまでは至らなかったか」
「若しくはじゃ」
 蜂須賀がまた言う。
「雇われておった刻限が来てじゃ」
「それで去ったかじゃな」
「どちらにしても本願寺が伊賀の力を借りるとなれば雇うしかない」
 銭、それでだ。
「他には考えられぬからのう」
「では殿にもな」
「うむ、もう敵陣にはいないことも話してな」
 そしてなのだった。
「このこともな」
「お話しようぞ」
 こう話してだ、そしてだった。
 滝川と蜂須賀はその話を全て信長に述べた、その話をしてだった。
 信長も話を聞いてだ、こう言うのだった。
「ふむ、少しの間雇われただけか」
「我等はそうではないかと思いますが」
「殿はどう思われますか」
 二人で信長にこう言う。
「石川はもう既に敵陣にはおりませぬ」
「そして他の伊賀者もおりませんでした」
 百地の者達の中で名のある者達はというのだ。
「楯岡も音羽も」
「無論百地も」
「その三人は最初からおらんかったのかもな」
 信長とて全てが見える訳ではない、それでこう考えるのだった。
「石川だけが雇われてな」
「ではですか」
「その石川もまた」
「去ったな」
 このことは間違いないというのだ、信長も。
「間違いなくな」
「では今の敵陣はですか」
「伊賀者は」
「おらぬな」
 そのことは間違いないというのだ。
「色々と訳のわからぬものを感じるが」
「では、ですな」
「今のあの者達は」
「只の門徒達じゃ」
 彼等しかいないというのだ。
「これまで通りのな」
「ではその者達と」
「これより」
「戦じゃ」
 それを行うというのだ。
「わかったな」
「はい、それではです」
「今から」
「では皆を呼ぶ」
 織田家の諸将達をだというのだ。
「今は紀伊のことを収めるぞ」
「では殿」
 蜂須賀がここで信長に問うた。
「石山のことは」
「まずは置いておく」
 そのことはというのだ。
「まずはな」
「左様ですか」
「先のことは今は考えぬ」
 そうするというのだ、それは何故かというと。
「考えては仕方がない」
「だからですか」
「そうじゃ」
 信長ははっきりと答えた。
「今は攻めるぞ」
「目の前の敵をですか」
「そして倒す」
 その目の前の敵達をだというのだ。 
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